【2018年5月18日】

出だし公開『僕とるー先輩の放課後調教日誌』

出だし公開です!

○プロローグ
ドッグマスターと呼ばれる少年がいる。
彼はまるで会話しているかのように犬たちと意思の疎通をしている――。
そんな話を聞いた瑠美は趣味である散歩がてら、噂の少年がよく目撃されるという公園へと寄り道をしてみた。
(いい天気だねー。ちょっとだけもやもやが晴れたかも。……あっ)
春風に心地よさげに細めた目が、件の少年と思しき人影を捉えた。大型犬を二匹、小型犬一匹を連れて公園内を歩いている。
(あの子だ、きっと!)
犬を連れて散歩をしている少年など特に珍しくない。だが、瑠美は彼が噂のドッグマスターなのだと半ば確信していた。理由は、少年に対する三匹の犬たちの様子だ。
(うわぁ、なにあれ、可愛いっ)
もの凄い勢いで振られてる尻尾の愛くるしさに、瑠美は思わず微笑んでしまう。
飼い主が好きすぎてテンションが上がりまくってる犬はたまに見かけるが、それをバージョンアップさせたような様子だった。そのくせ暴走したりはせず、きっちり少年に合わせて歩いてるところが瑠美の興味を惹く。
(あの子のことがすっごく好きなのに、我慢して行儀よくしてる感じがめちゃくちゃいい……いじらしい! 可愛い!)
仮にあの犬たちの心情を勝手に想像してアテレコするならば、
「ご主人様好き好き大好き、でもご命令だから、行儀よくお散歩しますわん!」
みたいな感じだろうか。
(でも、あの一番ちっこい子、今にも飛びかかりそうな感じ)
美しい毛並みのヨークシャーテリアが少年にかまってもらいたくてうずうずしてるのが、離れてる瑠美にもわかった。
(あっ!)
大丈夫かな、と心配した直後、小型犬が突然、少年に飛びついた。我慢できなくなったらしい。それを見た大型犬二匹もばうばうと吠え始める。「お前だけずるいぞ!」と言っているようだった。
こうなるともう、それまでかろうじて保たれていた均衡は崩れ、かまってもらおうと三匹の犬がいっせいに少年に群がる。
二頭の大型犬に同時にじゃれつかれた少年がバランスを崩してその場に尻餅をつく。それを見た犬たちはさらにテンションを上げて少年に群がろうとしたが、突然、その動きが止まった。
「おすわり!」
犬たちの暴走を一瞬にして止めたのは、この一言だった。それほど大きくもないし、本気で怒ってるようでもない声だったのに、三匹はあっと言う間に少年から離れ、「きゅうん」と申し訳なさそうに彼の周りに座る。
(えっ、あれ? 私、なんで?)
そして、少年と犬たちから少し離れた場所にいた瑠美もまた、なぜかその場にしゃがんでいた。ランニング中の女性が、訝しげに瑠美を横目で見ながら擦れ違っていく。
(なんだか今、あの子に命令されたような気がして、勝手に座っちゃってた)
初めて経験する、不思議な感覚だった。けれど、決していやでもない。むしろ、妙な安心感があった。
心臓がどきどきするのを感じつつ、しゃがんだまま少年たちの様子を凝視する。
「るーちゃんはまだ小さいからわかるけど、きみたちはもう大人なんだからねっ」
(る、るーちゃん!?)
親や友達からは「るー」あるいは「るーちゃん」と呼ばれる瑠美が、びくんと肩を震わせた。どうやらあの小型犬の名前らしいが、まるで少年が自分に話しかけているような錯覚に陥る。
「行儀よく、みんなでお散歩できたら、あとでちゃんとみんなといっぱい遊んであげるからね。まずはお散歩だよ」
諭すような少年の言葉に、犬たちはじっと耳を傾けている。まるで、本当に彼の言葉を理解しているかのように。
「わかった?」
わん、ばうっ、きゃん、と三匹が同時に頷くのと一緒に、
「わふっ!」
なぜか瑠美もまた、返事をしていた。幸い、今度は周りに誰もいなかったため、怪訝な視線を向けられることはなかった。
(あ、あれ? 私、また?)
もっとも、本人が一番、自身を怪しんでいた。なぜ自分がこんな反応をしてしまうのかわからない。けれど、やはり不快な気分ではない。全身にぞくぞくとしたものが駆ける感覚に、知らず頬が紅潮してしまう。
(なんなの、これ。なんなの、あの子)
気づけば瑠美は、少年と犬たちを尾行するようにこっそりと追っていた。仲良く、行儀よく散歩を終えたあと、陽が落ちるまで公園で遊ぶ姿をずっと覗き続けた。
そしてこの夜、瑠美は自分が犬になる夢を見た。
まだ名も知らぬ少年に首輪を繋がれ、隣を歩き、無防備に晒した腹を撫でられ、そして悪戯を咎められて躾けられてしまうという、とても心躍る夢だった。

○第一章
1 調教に興味ある?
真新しい制服にまだ違和感を覚えながらも高校生活初日を終えた越智太郎は、ホームルームの際に配られたプリントに目を落としていた。
(部活や同好会がいっぱいある。どこに入ろう。犬たちの散歩があるから、活動が緩いところがいいけど)
明日のオリエンテーションを見てから決めるつもりだったが、仮入部や見学は今日からでもいいらしい。
(少し見学してみようかな)
中学時代は陸上部だったから、最初にそこを見学しようと椅子から立ち上がった瞬間、教室に誰かがやって来るのが見えた。上履きの色から、二年生だとわかる。きょろきょろして誰かを探してるようだった。
(うわぁ、すっごい美人だ。一年生の勧誘に来たのかな? どこの部だろ?)
クラスメイトたちがざわめき出したのは、現れたのがとんでもない美少女だったからだ。太郎も例外ではなく、この美しい来訪者に目を奪われる。
(こんな美人の先輩と一緒だったら、毎日部活に行くのが楽しそう)
少しウェーブした黒髪と、自信に満ちた瞳が印象的な少女から不思議と目が離せない。美人だから、という理由に加え、太郎にはなぜかこの上級生が犬のように思えたせいだ。自分でもそんなふうに感じた理由はわからない。
(春休みだからって、犬と遊んでばっかりいたせいかな?)
大きめの犬耳や、ふさふさの尻尾が生えているような気がしてくる。
「……んん?」
気づけば、上級生の女生徒が太郎のすぐ目の前まで来ていた。自分の周囲にいるクラスメイトを訪ねてきたのかと思ったが、近くの席には誰もいない。
(じっと見てたのがばれた? 怒られる?)
太郎は彼女の耳と尻尾を見ていたつもりだったが、あちらからすれば、下級生が自分の顔と股間をじろじろと覗いていたように感じたのかもしれない。咎められた場合、太郎は有効な弁明ができる自信がなかった。
(ど、どど、どうしようっ!?)
下手に正直に言おうものなら、危ないヤツというレッテルが貼られ、始まったばかりの高校生活がいきなり暗転するのは確実だ。
「越智くん、ちょっといいかな?」
「……は?」
「ああ、いきなりごめんね。私は二年生の乾瑠美。芸術研究部の代表として、きみを勧誘に来たの。少し、お話いいかな?」
「芸術研究……え?」
「芸術研究部、通称芸研。まあ、色々な活動をしてる文化系クラブってところね」
「はあ。それがどうして僕を?」
謎の展開に訝しむ太郎をよそに、瑠美は近くにあった椅子に逆向きに座る。背もたれに胸を乗せ、座面を跨ぐというかなり際どい姿だった。
(うわわっ、おっぱい、おっきい! スカートの奥、見えちゃいそう!)
太郎の狼狽をよそに、瑠美は身を乗り出してくる。制服の上からでもわかるほどに豊かなバストがより強調され、太郎の耳が熱くなる。
「きみに才能があるからよ」
「さ、才能? 僕、陸上は好きでしたけど、成績は全然でしたよ?」
「私、陸上部じゃないわ。芸研って言ったでしょ? まあ、百聞は一見に如かず、よ。まずは部室に見学に来てちょうだい」
いったいなにが起きてるのか理解が追いつかない太郎を無視し、瑠美が立ち上がった。そして教室を出ていこうとするが、太郎がついてこないのを見て不思議そうに首を傾げる。
(あ。まただ)
本当に一瞬、瞬きするあいだだけだったか、太郎には確かに犬のような耳と尻尾が見えた。人懐こく、甘えん坊の犬が目の前にいるような錯覚に再び襲われる。
「どうしたの? さ、行くわよ?」
「せ、先輩っ!?」
戻ってきた瑠美が太郎の手を握り、引っ張るようにして歩き出す。美少女上級生にいきなり手を握られた時点で、もはや太郎に抗うという選択肢はなくなっていた。
(なにがなんだかわかんないけど、見学だけならいいかな)
もちろん、それが言い訳でしかないことは、自分が一番知っていたのだが。

「うちの部室はこっちよ、越智くん」
太郎の手を握ったまま、瑠美は大股でどんどん廊下を進んでいく。入学したばかりの太郎には、今、自分たちが学校のどこにいるのかまったく見当がつかない。さっきまでいたのとは別の、古い校舎に来たことだけはわかった。
(なんだか、聞き分けのない犬に引っ張られてる感じ)
元気の有り余ってる子犬に振り回されてるようだと思ってると、瑠美が突然止まった。あまり人影のない教室だった。気のせいか、陽当たりも悪く、薄暗い。
「ようこそ、我が芸研の活動拠点へ! 私たちはきみを歓迎するよ!」
芝居がかった口調でドアを開けた瑠美が先に中に入ったので、太郎もあとに続く。
「……私、たち? 他に誰もいないんですけども」
部室は無人だった。もしかしてどこかに隠れてるのかも、と思って改めて室内を見てみる。が、通常の半分くらいの広さの教室にはいくつかのロッカーと山積みになったダンボール箱の他、長机とパイプ椅子、そしてなぜかソファがあるだけだった。
「私ときみがいるでしょ? だから、『私たち』で間違ってないよ、うん」
「…………」
関わったら面倒なことになると直感した太郎が回れ右をするが、
「まあまあ、話くらいはいいじゃない」
瑠美は素早くドアの前に立ち塞がり、退路を断ってくる。当然、太郎の不信感は募るばかりだ。
「だいじょぶだいじょぶ、怪しくないから。怖くないから。うちは初心者にも優しい部だから安心してちょうだい」
「笑顔のまま、後ろ手で鍵をかける人の言葉にまったく説得力を感じないのですが」
「ふふふふ」
瑠美は笑うだけで弁明すらしない。明らかになにか企んでいる顔なのだが、悔しいことに太郎は今、そんな表情を魅力的だと感じてしまったのだ。最初に感じた正統派美少女、という第一印象が、急速に別の認識で上書きされていく。
(ま、まあ、話を聞くくらいなら、いいか。間違っても危険はないだろうし)
男女が逆ならば話は別だが、ここが校内ということもあり、太郎はひとまず瑠美の話を聞く気になった。他の部活の見学は明日のオリエンテーション後でも問題ないし、目の前の上級生が美人だった点ももちろん、判断に大きな影響を及ぼした。
(それにこの先輩、やっぱりどこか犬っぽくて、放っておけないっていうか。……毛並みの綺麗なアフガンハウンドにちょっと似てるかな?……んん?)
瑠美の長い黒髪にどこか見覚えがある気がしたが、すぐには思い出せなかった。
「そこの椅子、使ってちょうだい」
「は、はい」
勧められた椅子に腰かけると、瑠美も同じように座った。互いの膝が接しそうなほどの至近距離に、太郎の鼓動が高まる。
(綺麗な脚だな……)
スカートから伸びた長い脚を包むニーソックスの魅惑のラインと、パイプ椅子によって扁平した絶対領域にどうしても目が引き寄せられてしまう。
そんな思春期真っ盛りの後輩の視線に気づいてないのか、瑠美は無造作に脚を組みながら、ぐっと上体をこちらに寄せてきた。太郎が気になってしようがない胸の膨らみも強調される。
「ね、越智くん」
「は、はい」
寄ってきた分だけ、太郎は上体を仰け反らせた。一瞬、いい匂いが鼻腔をくすぐる。
そんな太郎の反応を、どこか観察するような目で瑠美がじっと見ている。
「調教に興味、ある?」
「…………僕のバイトのこと、知ってるんですか?」
一瞬、卑猥なことを思い浮かべてしまったのを誤魔化すように、微妙に顔を横にそむけつつ聞き返す。
「ええ、ちょっと調べさせてもらったわ」
瑠美は引き続き、太郎を凝視したままだ。こちらのリアクションからなにかを探られてるような気がして、どうにも落ち着かない。無論、美人の先輩から見つめられてどきどきしてる、という面もある。
「あの、バイトっていっても、ご近所のお手伝いみたいなもので」
太郎はなぜだか子供の頃からやたらと犬に懐かれまくった。また、太郎が命じると、犬たちは驚くくらいに言うことを聞いてくれた。
その謎のスキルを見込まれて近所の人たちから犬の散歩や躾けを頼まれることも多い。小遣いという名の報酬ももらえる上、大好きな犬たちと触れ合えるのだから、太郎とすれば願ってもないアルバイトである。
「ああ、うん、わかってるから大丈夫。学校に報告したりしないから安心してちょうだい。そもそもうち、バイト禁止じゃないし。私が言ってる調教は別のこと……そう、さっききみが最初に思い浮かべたほうだしね」
「な、なんのことですっ?」
耳を赤くしてとぼける太郎をじっと見つめたまま、瑠美はこう続けた。
「もちろん、エッチな意味の調教だよ」

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