【2018年6月6日】

電子書籍発売記念!『僕とるー先輩の放課後調教日誌』

バレンタインシーン公開

5 バレンタインキッス
年が明けた二月十四日、太郎は周囲の男子たちと同じようにどこか上の空だった。
「どうして彼女持ちのお前までそわそわすんだよ」
「いいなー、乾先輩みたいな美少女からのチョコ、死ぬまでに一度でいいからもらいたい人生だった」
「はっ! まさか越智、貴様、先輩からチョコ以外のものまでプレゼントしてもらうのか!? それで浮かれてやがるのか!?」
なんだか落ち着かないよね、と休み時間に口にしただけなのに、周囲の友人たちは過敏な反応を示した。男子にとっては今日のバレンタインデーがそれだけセンシティヴな問題である証拠だ。
「誤解だってば。先輩からもらえるかわからないから、どきどきしてるんだよ」
「え。なにお前、もらえない可能性あんの? 付き合ってんだろ?」
「まあ……期待はしてるけど、もらえないかもって心配も、なくはない、かな」
太郎のこのセリフに嘘はない。ただし正確には、
「普通にチョコをもらえるかわからない。るー先輩のことだからまた妙な真似をしてくるんじゃないかと不安」
が本音だ。
恋人となり、飼い主と愛犬という関係も深まってきた現在でも、瑠美は太郎をあの手この手でいじってくる。むしろ、その頻度は高まってすらいた。
(ここんところのるー先輩、浮かれてたし。あれ、絶対になにか企んでるよねえ)
昼休みになるとすぐ、太郎は芸研のある棟へと向かった。いつもより大股になってるのが自分でもわかり、苦笑が浮かぶ。
(僕、思ってたよりも先輩からのチョコ、期待してるみたいだ)
今日だけで様々な青春ドラマが起きるであろう校内に漂う、少しざわついた雰囲気を感じつつ、部室に入る。
「あ、ポチ、来たね」
瑠美は、指定席であるソファに座ってなにかの本を読んでいた。
(大学入試のガイドブック、か)
上級生である瑠美に受験生活が迫っているという事実を目の当たりにして、太郎は自分でも驚くくらいに狼狽えた。
「さ、ご飯食べよ、ご飯。私、前の授業が体育で、もうお腹ぺこぺこなんだ」
後輩の動揺をよそに、瑠美はガイドブックを放り出して太郎の前にやって来る。
「そうそう、今日はるー特製のデザートもあるからね、楽しみにしてていいよ。わふふんっ」

「はい、これが本日のデザート。もちろんチョコだよ」
弁当を食べ終わってすぐに瑠美が取り出したのは、太郎がやきもきしながら待ち望んでいたチョコだった。ただし、期待していたものとは少々毛色が違う。
「これは……『まつたけの山』……?」
それは、クラッカーとチョコのスナック菓子だった。
「あ。もしかしてポチは『やまうどの里』派? 里の者だったら私と戦争だよ?」
「いえ、僕も山の民です。……ええと、その、ありがたくいただき、ます」
手作りとまではいかなくとも、もう少し別のチョコをもらえるのではと思っていた太郎は失望を顔に出さぬよう気をつけながら、長方形の箱に手を伸ばす。
「独り占めはダメだわん。それはポチとるーで一緒に食べるんだわん」
瑠美は太郎よりも先に箱を開け、松茸を模した菓子を一個取り出した。
「ポチはもちろん知ってるだろうけど、わんこにチョコは毒だわん。でも、るーはこれ、食べたいわん。よろしくだわん」
そう言うと、茎部分であるクラッカーを咥え、
「ん」
と、顎を突き出してきた。チョコでできた松茸状の傘が太郎の目の前で揺れる。
「まさか……僕がチョコを舐め取るんですか?」
「あふっ」
その通りだわん、とでも言いたそうに、まつたけの山を咥えた恋人が頷く。
「早ふ早ふっ」
ぴょこん、とエア耳とエア尻尾が現れたのを太郎は確かに見た。そして、悟った。これが瑠美の、バレンタインデーに合わせての仕掛けであることを。
(この人、どれだけ僕をおちょくるのが好きなんだろ……)
瑠美の目的は太郎が慌てふためく様とはっきりしてるから、冷静に受け流すのが一番の対抗策だ。それはわかってる。わかってても実行できないからこそ、しつこくからかわれてしまうのだ。
「んふふー」
耳を赤くして動揺する太郎の反応に、瑠美の目が愉しげに細くなる。
「……わかりました。ありがたく、いただきます」
瑠美はこちらが行動しなければいつまでも待ち続けるとこれまでの経験で学んでいた太郎は、覚悟を決めた。瑠美に口元に唇を寄せ、松茸チョコを舐め取ろうとする。
まつたけの山は三センチ程度で、クラッカーとチョコ部分はそれぞれほぼ半々だ。そして、瑠美はそのクラッカー部をほとんど全部咥えているため、限りなく二人の唇は接近してしまう。
(これ、普通にキスするより恥ずかしいのでは)
キスと違い、どちらも目を瞑っていないため、互いの顔が超至近距離で見える。しかも太郎はチョコを舐め取るために舌を伸ばす必要があった。まるで瑠美の唇を舐めようとしてるかのような錯覚に陥り、余計に羞恥が増す。
「ほらほら、早ふー」
きっと今頃は盛大にぱたぱた揺れてるであろうエア尻尾を思い浮かべつつ、太郎はチョコを舐め始める。暖房の効いた室内にずっと置かれてたせいかチョコは柔らかくなっており、思ってたよりも簡単にクラッカーから剥がれてくれた。
「ん……ん……」
太郎が舌を動かすのに合わせて、瑠美が小さく鼻息を漏らす。口内に広がるチョコと、眼前の美しい上級生からほんのり漂ってくる匂いはどちらも甘い。
「あむン……んぐんぐ」
チョコがなくなった途端、瑠美は太郎の唾液が付着したクラッカーを食べてしまった。そしてすぐに二個目のまつたけの山をまた咥え、
「んっ」
と、差し出してくる。ボール遊びをねだる犬を相手にしてる気分だった。
「……わかりました」
瑠美が満足するために要したまつたけの山は、十二本にも及んだ。
「むふふン、ポチってば、最後はずいぶんとぺろぺろが上手くなったよね。……どう、チョコ、美味しかった?」
「はい、ありがたくバレンタインのチョコ、いただきました」
「ん? 私、バレンタインなんて言ってないよ? これはただの悪戯……じゃない、デザートだけど」
「えっ」
「さすがにチョコは別に用意してあるってば。だいたい、このネタはこないだの節分でもやったしねー」
節分のネタとは、恵方巻きを食べてるあいだは黙ってなければならないというルールを利用した瑠美が、今回とは逆に、太郎の反対側から咥えてきた一件のことだ。
ちなみにこの際、瑠美は恵方巻きだけでなく、太郎の唇も食べている。
「あのときは、きみの自前の恵方巻きも食べさせてもらっちゃったけど」
わふふ、と笑いながら、瑠美は太郎の股間を見る。
「るー先輩、発言が完全におっさんです。おっさん化が加速度的に進行してます」
「エッチな女の子は嫌いじゃないくせに。……はい、こっちが正真正銘のバレンタインチョコ」
瑠美が改めて取り出したのは、綺麗にラッピングされた小箱だった。瑠美の髪を飾っているアクセサリーと同じ、赤い花のシールが貼られていた。
「ありがとうございます! 嬉しいです!……え?」
恭しく受け取ろうとした太郎の手が虚しく空を掴む。困惑する太郎を見てくすくす笑うと、瑠美はなぜか制服をはだけ始めた。双つのたわわな膨らみによって生み出された深く柔らかい渓谷に、瑠美が小箱を挟む。
「はい、どうぞ。……男の子って、こういうのが好きなんでしょ?」
「そ、そりゃ、嫌いじゃないですけども」
「ほらほら、早くしないと、溶けちゃうよー? だいじょぶ、今なら取り出すふりでおっぱいまさぐれるから。気づかなかったふりしてあげるから」
「し、しませんってば!」
「……しないの?」
なぜかしょんぼりする瑠美の頭部に、ぺたん、と倒れたエア犬耳が一瞬見えた。
「あ、ありがたくいただきますっ」
太郎はチョコに手を伸ばすが、ただでさえ谷間は深く、しかも瑠美が左右から乳房を寄せて挟んでいるため、なかなか取り出せない。
「やんやん、ポチったら大胆。そんなにるーのおっぱい触りたかったの? エッチ」
セリフとは裏腹に、この歳上の恋人は嬉しそうに身体を左右に振ってくる。そのたびに柔らかく温かな柔肌が手に触れ、太郎の理性をごりごりと削る。
「ちょっと先輩、動かないでくださいってば。取れないんですけどっ」
「ほいほいと簡単にチョコを渡すような、安い女と思われたくないわん!」
「なにわけのわかんないことを言ってんですか。……お手」
「わん!……はっ!」
バレンタインデーで浮かれてるのか、普段よりさらにテンションの高い犬娘が反射的に手を出した隙に、太郎は素早くチョコを取り出した。
「わんこの習性を利用するなんて、ずるーい! がうがう!」
文句を言いつつも、瑠美は嬉しげに太郎に差し出した手をにぎにぎしている。
「開けてもいいですか?」
「もちろん」
惜しいと思いつつも丁寧にラッピングを剥がして箱を開けると、犬の足裏の形をしたチョコが現れた。
「手作りだから、味は期待しないでね。味見した感じではまあまあだったけど」
「わんこはチョコ、食べられないんじゃないでしたっけ?……あ、美味しい」
早速食べてみると、チョコの甘さが舌の上に広がった。
「聞こえないわーん。そんな意地の悪いこと言うご主人様には、噛みついちゃうよー。がうがうっ。……ばう?」
可愛らしく吠える瑠美の口の中にチョコを放り込んでみた。
「んぐんぐ……うん、やっぱり普通に食べられるね。我ながら悪くない出来だよー」
「ありがとうございます、先輩。凄く嬉しいです」
「ホワイトデーのお礼、楽しみにしてるわん。お散歩とかお散歩とかお散歩とか」
聖夜の深夜デートが忘れられないのか、瑠美は事あるごとに散歩プレイをねだってくる。
「せめて、もう少し気温が高くなってからにしましょうよ。あのあと僕たち、揃って風邪引いたじゃないですか」
「うー。約束だよ?」
「はい。愛犬の散歩は、飼い主の義務ですからね……って、先輩?」
突然、瑠美が太郎の前に跪いた。先ほどから開けたままの胸元を上から覗き込む格好になり、その圧倒的なまでの谷間に目が奪われる。
「発情したご主人様のオチン×ンを鎮めるのはバター犬の義務だわん」
そう言ってズボンのファスナーを開け、太郎の若茎を引っ張り出す。
「ホワイトデーの前借り、もらっちゃうね? おっぱいマシュマロでむぎゅむぎゅして、オチ×ポキャンディーぺろぺろして、ホワイトチョコ、ごっくんしちゃうね?」
卑猥な言葉を連発して太郎の困惑と興奮とを誘発することに成功した瑠美は、チョコよりもずっと甘いプレゼントをしてくれるのだった。

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