【2018年6月7日】

電子書籍発売開始! 催眠恋。番外編

催眠恋。番外編

初恋の思い出

佐藤健一は久しぶりにアルバムを開いた。
中には子どもの頃の自分の写真がたくさん収まっている。
そして、ここには甘酸っぱい想い出がしっかりと残っていた。
それがとある一枚の写真。
そこに映るのは保育園年長の健一。そして隣にはショートカット姿の結城愛。
二人とも無邪気な笑顔でカメラに向かって、ピースサインを作っている。
愛とのツーショットはたくさんあれど、この写真は特別なのだ。
背景は木々と綺麗な青空。
健一の家族と愛の家族で一緒にハイキングに行った時のものである。
この時、健一は愛からお嫁さんにして欲しいと告白されたのだ。

小さな頃から活発だった愛だったが、一方で臆病なところもあった。
一人で外に出られなかったり、眠るときにはいつも電気を点けたままにしていないと怖がったり、虫が苦手ですぐに泣き出したり。
そんな時、いつも「健一君!」と泣きじゃくりながら駆け寄って、ぎゅっと抱きついて、「助けてぇ!」と言うのだ。
それを見た愛の母親が「もう。愛ってば本当に健一君のことが大好きなのね」と苦笑いしてしまうほどだった。
とある休日に、両家揃ってハイキングに出かけることになった。
健一と愛は競争するように登った。
大人を引き離すくらい、二人でどんどんハイキングコースを進んだ。
順調に進んでいると「きゃあっ!」と愛が突然、声を上げたのだ。
「愛ちゃん、どうしたのっ!?」
健一が振り返れば、愛は二メートルくらい後ろで涙目で立ち止まっていた。
「健一君! 助けてっ! こわいっ!」
その足下には、数センチほどの小さなトカゲがいて、じっと愛を見上げていた。
「愛ちゃん、大丈夫だよっ!」
健一はすぐさま愛のそばまで駆け寄れば、拾った木の棒でトカゲを追っ払った。
そしてその場に尻もちをついた愛の手を引いて上げたのだ。
「怖かったよぉっ!」
愛は健一に抱きついてえんえんと泣きじゃくった。
健一は愛の背中をさする。
「愛ちゃん、もう大丈夫だよ。何がきても僕が守って上げるからね!」
「うん……っ!」
親と合流して展望台まで無事に到着したのだ。
そこで昼食をとり、二人で周りを見て回ろうということになった。
二人きりになると、「ねえ、健一君。こっちに来て」と服の裾を引っ張られた。
それは愛が甘える時にする仕草だった。
親にも健一にも同じことをよくしていた。
「どうしたの?」
愛は上目遣で、いつもの彼女らしからずモジモジした。
「また何か怖いことがあったの?」
「ううん、健一君がいるから怖くないよ」
「じゃあ……?」
「健一君。あのね、私……健一君のお嫁さんになりたい」
「えっ!」
愛は少し頬を赤らめた。
「……健一君、私をお嫁さんにしてくれる?」
「うん!」
「本当……に? ……でも、健一君。美和ちゃんと仲良いよね?」
「美和ちゃんよりも、愛ちゃんの方がずーっと好きだもんっ!」
「本当に!? 嬉しい! 約束だよっ!」
愛は満面の笑みを浮かべながら、健一に抱きついた。
あの時、健一と愛は永遠の愛を交わしたのだった。

(懐かしいなぁ)
あの頃の純真な想いに思いを馳せれば、頬が自然と緩んだ。
あの頃から十年の年月が流れた。
健一たちはすっかり大人だ。
健一はアルバムから顔を上げると、振り返った。
ベッドでは一糸まとわぬ姿の愛が俯せの格好で、ぐったりしていた。
なにせ三度も健一の子種を注がれ、愛は泣きじゃくるくらい絶頂し続けたのだ。
最後まで意識を保っていられるはずもないのだ。
(愛。あの頃の想いをしっかりと思い出させるからな。僕にはそれだけの力……催眠アプリがあるんだから!)
健一はニヤリと不敵に笑った。
(END)

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