水無瀬さんごの『お兄ちゃんのこと、好き好き大好き好き好き』
の電子書籍販売が始まりました。
それを記念しまして、SSペーパーを公開します。
「えっと、この本を買っていただいた皆さんに、私たち兄妹からこの本の世界観を少しだけご紹介しようと思います! はい、お兄ちゃん!」
「ども。兄の恭一です」
「妹の彩夏ですっ。で、ここは私たちが住む奥嶺淵村の入り口です! 東京からは特急で60分、各停で90分、バスで2分となっております!」
「おいおい、バスは2分じゃ済まないぞ」
「……だって、お兄ちゃんに会うのが楽しみで、65535分でリセットされちゃったし……」
「ファミコンかよ! しかも絶対カウンタ壊れてるし! っと……そんなことしてる場合じゃない。村の紹介だったな。手短に次行こう、次」
「バス停の近くには村役場や学校、そして何軒か家があって……そのうちの一つ、電信柱に死ぬほどたくさんケーブルがつながってるここは、いつもお世話になってる五十嵐家です!」
「中身はいったいどうなってるんだろうな……」
「五十嵐家の内部は奥嶺淵村の七不思議の一つ。街灯がほとんど無いこの村では、夜でもチカチカ緑色に光ってる五十嵐家が目安になります!」
「木の電柱がケーブルの重みで傾いてる……」
「で、バス停から続いてる坂を奥までのぼると、彩夏とお兄ちゃんの愛の巣があります!」
「うん、愛の巣ね。うん」
もう突っ込まないぞ。
「愛の巣は木造平屋建て、だいたい八畳ほどの部屋が七つほどあります! メインの寝室は十二畳! どんなハードなプレイもレッツカモン!」
「だから、突っ込まないぞ!」
「ちなみに、古い屋敷なので天井の梁や柱が見えている場所があってですね……」
「吊さないぞ!」
「むぅ……お兄ちゃんのケチ。由緒ある縛り吊しプレイが出来る、由緒ある屋敷なのに」
「まぁ、縛り吊しは由緒正し……っておい!」
「そうそう、縛りと吊しは日本の文化! 梁と柱ですぐに吊しを思いついたお兄ちゃんも同罪!」
「た、確かにそうだが、やらないからな!」
「と言いつつやっちゃうお兄ちゃんが好き!」
「……な、流されやすいんだよ……」
「で、村の一番奥にある愛の巣が終点……ではなく、診療所ができることになりました!」
「マジで? き、聞いてないぞ!」
「この辺に久しぶりに赤ちゃんが生まれたので、村長さんが決めました! さあ、山奥の村、分校、診療所が出そろって、迫り来る怪しい刃の影。はたしてどんな惨劇が待ち受けているのか!」
「……と、今日も平和なこの村の紹介でした」
「もう。お兄ちゃんのオチ、つまんないよ!」