【2020年8月28日】

奴隷エルフの若奥様プロローグ&第一章

人気戦記作家・内田弘樹が描く、本物のエルフラブストーリー!

続きからプロローグ&第一章公開です

エーファの身体を使って、どうか癒されてください

「北壁」の戦いで心を病んだ英雄アウグスへ皇帝が
賜ったのは――黒い首輪の奴隷エルフ嫁・エーファ。
花のような笑顔とたわわな巨乳、そして極上の膣内
締まりと献身ご奉仕に癒される幸せな新婚セイ活。
それでも、男は彼女と帝国を守るため再び戦場へ!

イラスト: sakiyamama
 

 

プロローグ
「なんだ、てめぇ……!」
 モヒカン頭に黒シャツという、いかにもな男の声が、帝都の路上に響き渡る。
「騎士様だかなんだか知らねえが、俺に文句があるってぇのか!?」
「大いにある」
 アウグスは落ち着き払った態度で頷いた。
 上半身から膝上までを覆う白銀のプレートメイルを身に着け、背中には深紅のマント。腰には大剣を収めた鞘が、真昼の陽光を受けて鈍く光っている。
 まさしく騎士、それもかなりの高位……騎士団長クラスの外見だ。
 わずかに目の下にクマが浮かんでいるが、普通の人間が気づくほどでもない。
 騒ぎを聞きつけ、集まってきた野次馬たちに気を向けつつ、アウグスは続けた。
「今、お前はこの女の顔面をいきなり殴り、倒れた彼女にさらに暴力を加えようとした。問いただすのに充分な理由だ」
「こいつが俺にぶつかってきたからだ! それに、こいつはエルフの女、それも奴隷だ! エルフ奴隷の雌犬なんざ、『帝国』では殴られて当然の立場だろ!?」
 そう言って男は、アウグスの背後で地面に倒れ、痛みに肩を震わせながら両手で頬を押さえている女性をこれ見よがしに指さした。
 傍目から見れば、普通の人間そのもの。麻布のワンピースを身に着け、長い金髪を太いひとつの三つ編みでまとめている。顔の作りは髪に隠れてよくわからない。
 ただ、人間よりも遥かに大きくて長い耳が、彼女の正体を物語っている。
 彼女はエルフなのだった。
 そして、首には首輪が着けられ、彼女が奴隷であることを示している。
「帝国」は人間が主体の国家であり、これまでにいくつもの亜人、あるいは人間同士の戦乱を勝ち抜き、大陸のほとんどを制するに至っていた。
 エルフはその「帝国」に最後まで抵抗を続けた、大陸の中央に暮らす亜人種だ。人間と外観がほぼ同じであるものの、耳が長い、ごくわずかではあるが魔法が使える者がいる、人間よりも長寿で手先が器用、美男美女が多い……などの特徴がある。
 現在はすべてのエルフの種族が「帝国」の軍門に下り、若いエルフを奴隷として差し出す代わりに、かろうじて自治を許されている。
 戦争で積もりに積もった恨みゆえに、「帝国」にはエルフを蔑む風潮が強く、奴隷となったエルフが過酷な労働を強いられることが日常的となっている。消耗品扱いのため、奴隷のエルフが主人以外に粗略に扱われても、大きな問題にはならない。
 女性の傍には、彼女が殴られた衝撃で落としたのだろう、割れた鉢と紫色のラベンダーの花があった。
 アウグスは大声で騒ぎ続ける男を無視して、倒れ伏したエルフに向き直った。
 エルフの腕には、彼女が奴隷であることを示すアイコンと、名前の烙印があった。
 エーファ、という名前らしい。
「エーファ、でいいか? 大丈夫か……?」
「は、はい。すみません。ありがとうございます……」
 アウグスの伸ばした手を取ろうとしたエーファだが、そこで思わず言葉を止める。
 なぜなら……アウグスのほうが先に、エーファに見惚れてしまっていたから。
 安心と懐かしさを感じさせる、母性的で柔らかな顔つき。目つきは垂れ目がちで慈愛に満ちた優しさがあふれ、一方で、エメラルドのような美しい緑の瞳には、奴隷という立場を匂わせない、確かな知性が宿っている。
 体形は全般的に肉付きがよく。メリハリが利いている。麻布に覆われた胸元は弾けんばかりの豊かさで、抱きしめられたときの心地よさを自然に想像してしまうほど。
 まるで、絵画の中の全裸のヴィーナスがそのまま受肉したような美しさだ。
 頬にはモヒカン男につけられた青あざがくっきりと浮かび上がっているが、それでさえ彼女に背徳的な可憐さを加える結果となってしまっている。
 駆けつけた野次馬たちも、エーファの可憐さにくぎ付けになっている。
「……? どうかしましたか……?」
「あ、ああ。すまない。気にしないでくれ」
 アウグスは手を伸ばし、改めてエーファを立ち上がらせた。手を握った瞬間、エーファからラベンダーの甘い香りが漂い、アウグスの鼻孔を刺激する。
 内心の動揺を押し隠すように、アウグスは再び男のほうを向いた。
「エルフだろうがドワーフだろうが関係ない。『北壁』に襲いかかるモンスターたちは、種族の違いを気にしない。すべての種族が団結しなければ、『帝国』は守れない」
「偉そうに……! だったらてめえはどうなんだ!? まさか、その小綺麗な身なりで『北壁』で戦った経験があるとでも!?」
「……残念ながら、その答えはイエスだ」
「な……!?」
「あ、あなた様はもしや、ヒルシュタイン家領主のアウグス様……?」
 見物人のひとりが、驚きの声をあげた。
「ヒルシュタイン家のアウグス様……間違いない! 新聞に載っていた顔と同じだ。『北壁』の戦いで、ヒルシュタイン騎士団を率いてモンスターの軍勢を打ち破った!」
「あのアウグス様!? 『殲壁のアウグス』って渾名がある……」
「千匹のゴブリンを一日で殺したって噂の……!?」
「俺は百匹のオークを打ち倒したって聞いているぞ!?」
「アウグス様だ! 『帝国』の守り手のアウグス様だ!」
「新兵教育のために帝都に帰還したって噂は、本当だったんだ!」
 アウグス様! アウグス様! アウグス様!
 見物人たちは一斉にアウグスの名を連呼し始めた。エーファも驚いたように目を丸くしている。
 アウグスは無言のままだったが、否定もしない。すべては事実だったからだ。
 アウグス・フォン・ヒルシュタイン……それがアウグスの本名だった。
 現在の「帝国」にとって最前線である「北壁」で活躍した騎士団長のひとり。
「北壁」は帝国の北方に設けられた巨大な長城だった。もともとは北方に住まう蛮族の侵攻を阻止するために造られたものだったが、現在はさらにその北方から攻め寄せる多数のモンスターたちを食い止めるための要塞となっている。
 どうして北方からモンスターが攻め寄せるようになったのか、今のところは不明だ。
 ただ、モンスターたちがすべての人類に敵意を持っているのは確かで、「帝国」はそれゆえに「北壁」の防衛に最大限の戦力を注いでいた。
「アウグス様なら、エルフの味方をしたって文句は言えねえや! なんたって帝国の守り手、正真正銘の英雄だもんな!」
「『北壁』では、美人のエルフたちが騎士様たちの慰安に協力しているって話だ。いくら卑しい連中とはいえ、アウグス様ならエルフに慈悲をかけても様にならぁ!」
 繰り返されるアウグスへの賛辞。さすがのモヒカン男も、形勢が不利と見て「くっ……お、覚えていろよ!」と捨て台詞を吐き、脱兎のごとく逃げ出していった。
 野次馬たちの歓声の中、アウグスは疲れたように息を吐き出し、エーファに尋ねた。
「本当に大丈夫か? 痕が残るといけないから、今すぐ病院に行ったほうがいい」
「あ、ありがとうございます。ですが、私は……」
「その割れた花瓶と花も、どこかで買ったものなのだろう? この金で治療代と一緒に立て替えてほしい。釣りはいらない」
 アウグスはポケットから金貨を数枚取り出し、エーファに渡した。帝都の物価で言うと、大人ひとりが一カ月ほど豪遊できる金額だ。
「こんなに……!? とても受け取れません! それに、私は……」
 アウグスはなにも答えなかった。身を翻し、歩き始める。
 人々はアウグスの名を連呼し続けている。アウグスはそれにも反応しない。しかし、その冷ややかな態度が騎士然としたものに映ったのか、さらに人々を熱狂させる。
 エーファは呆然と立ち尽くし、アウグスの背中を見つめていた。

 数時間後。
 アウグスは、モヒカン男と口論になった商店街とは別の道を、徒歩で歩いていた。
 さすがに今回はなんの面倒にも巻き込まずに済んでおり、したがって、自分の名を連呼する者たちもいない。しかし、すでに噂は広まっているのか、路上の人々は興奮と歓喜の視線で自分を見つめ、ひそひそとなにかを話している。
 アウグスはつい数十分前まで、帝都の中央に位置するヴァルファン城において、「帝国」の指導者である皇帝に謁見していた。
 アウグスと皇帝は同年齢、しかも幼少の頃から同じ軍学校に通った親友同士であり、気心は知れていた。
 今回も、アウグスが新たに指揮を任されることになった新編の近衛騎士団、その訓練の進捗状況についての報告をだしに一時間ほど雑談を交わし、その後、こうして帰路をたどっているのだった。
 近衛騎士団は皇帝直属の部隊。このため皇帝も気兼ねなくアウグスを呼び出すことができた。
(……徒歩で城に向かったのは、失敗だったか)
 部隊から馬を借りればよかった……後悔を覚えながらアウグスは歩いていた。
(とはいえ、俺の名前は英雄として『帝国』中に広まってしまっている……こればかりはどうしようもない)
 路を進めば進むほど、人々が自分に向ける好奇の視線は増していく。
 アウグスは思わず口に出かけたため息を堪えた。そして、苦い思いを抱く。
(……本当に俺が英雄だったら、こんな気持ちにならずに済んだのだろうけれどな……)
 不意に思い出される戦場の光景。「北壁」での、自分が率いたヒルシュタイン騎士団とモンスターとの激戦に次ぐ激戦。次々と失われていく仲間。
 アウグスは反射的に胸に手を当てた。胃が締めつけられるような痛みと、胃酸が逆流して喉を焼く気持ち悪さが同時に襲いかかる。そして、それを日常の出来事として慣れ始めている己をも自覚する。
 ……「帝国」が喧伝している通り、「北壁」での戦いで、アウグスのヒルシュタイン騎士団はかつてないほどの戦果を挙げた。モンスターの群れの波状攻撃を退け、「北壁」の内側には一匹たりともモンスターを入れなかった。戦いはアウグスの勝利に終わった。
 だが、その代価として、アウグスのヒルシュタイン騎士団は全滅に等しい損害を受けた。戦いの前、騎士団にはアウグスが自らの領地で人員を募集し、数年の期間をかけて鍛え上げ、「北壁」に連れ出した約千人の騎士や兵士たちがいた。だが、戦いが終わった後、生き残ったのは数十名にも満たず、その大半も重傷を負っていた。
 アウグスはこの悲惨な戦いを、無傷で切り抜けた数少ない存在だった。とはいえ、別に幸運が味方したわけではない。混戦の中、誰もがアウグスだけは傷つけまいと盾になり、自ら命を落としていった結果だった。騎士団で、アウグスはそれほどまでの信頼を仲間たちから勝ち得ていた。
 アウグスたちが全滅を免れたのは、危ういところで皇帝が直卒する援軍が間に合ったからだった。その意味で、本来なら勝利の栄誉はアウグスと皇帝のふたりに分け与えられるべきだったが、皇帝はアウグスのヒルシュタイン騎士団の奮戦を重視し、すべての栄誉をアウグスに与え、自分の名はまったく出さない方針とした。
 ヒルシュタイン騎士団が被った恐るべき損害についても隠蔽された。民心の動揺を招くというのがその理由だった。
 もちろん、アウグスは皇帝の判断を肯定的に理解していた。皇帝が勝利の功績をすべて自分に与えてくれたことには、皇帝の友人としての誠意に恩義さえ感じている。
 だが、感情的に納得しているかというと……それもまた違っていた。
(俺は英雄なんかじゃない。千人の仲間を殺した、無能な騎士団長だ……)
 自分が英雄と崇められるたびに、失われた仲間たちの顔や声が思い出され、アウグスはそんな思いに駆られる。
(皇帝陛下は、お前は最善を尽くしただけと言ってくれている。それは確かにその通りだと思う……だが、だからといって、自分が許せるわけじゃない。自分が許されるべきでもない……)
 圧倒的な数のオークやゴブリンを相手取り、ヒルシュタイン騎士団は精いっぱいに戦った。自分たちにあれ以上の戦いができたとも思えない。
 だが、それでも、他になにかできなかったか、少しでも犠牲者は減らせなかったのかと、自問自答を繰り返してしまう。すべては自分の責任であり、自分の無能ゆえの結果だと思ってしまう。
 アウグスの目の下にクマができているのも、毎晩のように「北壁」での戦いを再現した悪夢を見て、そのたびに目を覚ましてしまうからだった。しかも、その内容は、仲間たちが倒れる場面ばかりだ。誰もがアウグスの身を案じ、未来の勝利を信じながら、アウグスの目の前でモンスターたちに切り刻まれていく。
 おかげでアウグスの体調は悪化の一途をたどっている。精神的にも不安定になり、ちょっとしたことでイライラが募ったり、戦いの記憶が蘇り、胸に気分的にも物理的にも激しい痛みを感じてしまう。
「北壁」での戦いの後、アウグスがこの帝都で新編された騎士団の教育を任されたのは、そんなアウグスの心を皇帝が慮り、戦いから遠ざけようとしたためだった。
 アウグスは一刻も早く戦場に戻るためにこの任務に精進し、それゆえに帝都への赴任と同時に郊外に借りた自宅にほとんど戻らないほど仕事詰めの毎日を送っていたが、それでも戦いへの後悔と自省の念は消えず、むしろ強まるばかりだった。
 今日の「報告」も、そんなアウグスを皇帝が気にかけ、様子をうかがうための理由付けにすぎないようだった。
 実際、皇帝は「報告」後の雑談でアウグスの体調を心より気遣い、今日はこのまま自宅に帰って休むようにと(いえ、仕事が残っていますし、その必要はありません、と拒もうとしたアウグスを抑えて)命じた。
 お前のために、とびきりの贈り物を自宅に届けておいたから、それを楽しみにしておけと言い添えて……。
(俺への贈り物……? 一体、なんだっていうんだ……)
 自分の心の病が生半可なものでないことは、皇帝でもわかっているだろう。金銀財宝や豪華な食事、匠に作らせた剣や鎧……そんなもので癒せれば苦労はない。
(あるいは女か? まさか)
 精神的な傷を女性の身体で癒す……ありふれた手段だ。先ほどの市民の台詞ではないが、前線では兵士たちを相手にする娼婦たちが大勢いる。
 実際、アウグスが最初に試したのはこれだった。
 だが、効果はまったくなかった。むしろ、自分だけがこんな腑抜けた行為に浸っていいはずがない、と逆に自身を追いつめてしまったほどだった。自分の性格を古くから知る皇帝なら、それに察しがつかないはずがない。
 そもそも娼婦は金のために身体を売る者がほとんどだ。奴隷の娼婦とて、最終的には客が払った金はその主人の懐に入る。性欲は発散できるが、ただそれだけのこと。真の意味での安らぎなどどこにもない。
(結局、俺を救える者は、誰もいないということだな……)
 
 ……気がつくと、アウグスはいつの間にか、自宅を囲う壁の前に来ていた。
 帝都の郊外の通りに面した、二階建てで広い庭付きの豪華な造りの邸宅。帝都に帰還した際、皇帝の勧めで購入した家具付きの好条件の物件だった。しかし、アウグスがこの家に泊まったのは数日ほどで、しかもここ一カ月は近づいてもいなかった。
(きっと、荒れ果てているだろうな……。特に、手つかずの前庭……)
 鬱蒼と生い茂る雑草を想像し、暗澹たる気分になりながら、門に向かって壁沿いに歩いていた、そのとき……。
(……この匂い、なんだ……?)
 アウグスの鼻孔を甘い香りが刺激した。どうやら、花の匂いらしい。どこからか、風に乗ってふんわりと漂ってきている。
 しかも、アウグスにはこの香りに覚えがあった。
(この香り、俺はどこかで嗅いだことがある……今日の商店街で、あのエルフの女が持っていた花……ラベンダーの、匂い……?)
 アウグスはぼんやりとそう思いながら、自宅の門をくぐり……。
 そして、見た。

 荒れ果てていると思ってばかりいた自宅の庭が、紫色のラベンダーで、いっぱいに敷きつめられているのを。
 その中心に、目を見張るほどの美しさの女性のエルフが、鉢植えから取り出したラベンダーを両手に持ちながら、こちらを振り向き立っているのを。
 エルフの佇まいに、はっきりと見覚えがあるのを。
 優しげで親しげで、見たものすべてに安らぎを与えるような、その顔に。
 首に着けられた、黒い首輪に……。

「エー、ファ……?」
 思わず呟き……すぐに自分がなにを口にしたかを自覚して、はっとなる。同時に、誰が自宅の庭をラベンダーでいっぱいにしたのかにも想像が及ぶ。
 つまり、先ほど自分が助けた奴隷のエルフは。今、自分の目の前にいる、ラベンダーを手にした美しいエルフは。
 目の前のエルフも、しばしの間、驚いたように目を丸くしていたが、アウグスと同じようにすぐに状況を察し、くすりと笑った。
 まるで、慈母のような微笑み。アウグスの心臓がどくんと跳ね上がる。
「はい……。先ほどはありがとうございました、アウグス様」
 穏やかな口調でしゃべりかけるエーファ。ほんのわずかに頭を下げ、そして、アウグスに向き直り、居住まいを正して続ける。
「先日、私は帝都の奴隷市場で売られていたところを、皇帝陛下直々に買われました。そして、皇帝陛下からアウグス様に賜られた奴隷として、そして妻として、私のすべてを捧げて尽くし、そのお身体とお心を癒すよう、お願い申し付けられました」
「奴隷として、妻として……?」
「はい。アウグス様にとって、いついかなるときも都合のいい存在になることが、私の役目であり、望みです」
 アウグスは息を忘れてエーファを見つめた。衝撃と混乱で、なにも考えられない。
 エーファはかすかに頬を朱に染め、花のような笑顔と共にアウグスに言った
「おかえりなさいませ、アウグス様。今日はお疲れ様でした。まずはお風呂にしますか? お食事になさいますか? それとも……私で?」


第一章

「これは……」
 アウグスは息を呑んでいた。
「すみません。最初の夕餉ということで、ほんのちょっと、頑張ってしまいました」
 申し訳なさそうに苦笑するエーファ。
 食堂の机には、エーファが用意した夕食がずらりと並べられていた。
 ギアーガ牛の薄切り生肉。生肉の赤色とチーズの白、アリーブオイルの緑が鮮やかに輝いている。南海鯛とアムル貝の合わせ煮。まるごと煮られた大きな鯛が、様々な魚介類と共に皿の上で旨味あふれる香りを放っている。メッシアトマトと水牛チーズのサラダも見るからに瑞々しい。
 あとは豆がたっぷり入った田舎風のスープや、大皿に盛られた色とりどりのベーコン、ハム、チーズ、バター、そして何種類かのパン。
 エーファのかけた手間が〝ほんのちょっと〟ではないことは、一目瞭然だった。
「あ、これをお出しするのを忘れていました。お好きでしたよね……?」 
「それは……!」
 エーファが取り出したのは、赤黒い液体が入った、立派な装飾の瓶だった。
「アヴァールワインの三十年もの……よく見つけられたな」
 アヴァールは二十年前に帝国が滅ぼした王国の名だった。ワインの名産地として知られていたが、戦争でワイン産業は壊滅。このため、未開封のアヴァールワインは滅多に手に入らない一品となっている。
「はい。陛下から、アウグス様が好きな銘柄と聞いて、一週間ほど帝都の酒屋をめぐって探し当てました。運よく、地方の商人が持ち込んでいたようで」
「かなり値が張ったんじゃないか」
「ええ。ですが、今日の夕餉に必要な支払いだけは、皇帝陛下が持ってくれるとのことでしたので、お言葉に甘えさせていただきました」
 それが謙遜でしかないことはアウグスにもわかった。料理に使われた食材のほとんどが、「帝都」では手に入りにくい地方の名産品だ。
 そして、そのすべてが、アウグスが好みのメニューとなっている。
 エーファは軽く両手を叩き、心地のよい明るい声で言った。
「さ、冷めてないうちにいただきましょう。お酒は食前に嗜まれますか?」
「……いや、食べながらでいい。腹が減っている」
「わかりました」
 アウグスはエーファが取り分けた料理を、ほんの少し緊張しながら口に運んだ。
「これは……美味いな」
 お世辞抜きに美味しかった。こんなに美味い料理を食べるのは本当に久々だ。
 エーファはほっと胸に手を当てた。
「よかったぁ。アウグス様のお口に本当に合うか、実は自信がなかったので……。では、私もいただきますね?」
 エーファが食事を始めるのを、アウグスはなんとも言えない表情で見つめていた。
 どうして俺は、この状況に心地よさを感じている? 
 エーファと夕食を共にすることに、安心を感じている?
 彼女は……皇帝が俺のために遣わせた、奴隷のエルフでしかないはずなのに。

 庭で思わぬ再会を果たした美しいエルフの言葉に、アウグスは面食らっていた。
 混乱する思考をどうにかまとめ、ようやく、質問をひとつ口にする。
「……つまり、俺の身の回りの世話をしろ、と皇帝に命じられたと?」
 間違いなく、そんなことのために来たのではない……内心で自分の言葉を否定する。
 案の定、エーファは優しい微笑みのまま、首を振った。
「……はい。ですが、その表現は正確ではありません」
「…………」
「すでに私は、皇帝陛下からアウグス様に賜れた奴隷。アウグス様の望むとき、望む存在になることが役割です。アウグス様が望むのなら、ここから立ち去ることも厭いません」
 それも選択肢のひとつ、と思わないでもなかった。
 しかし、皇帝への恩義を考えるなら、さすがにそれは除外せざるをえない。
「……さっき、ラベンダーの花を持っていたが、まさか、これのためだったか」
「はい。一週間前から準備していまして、今しがた、ようやく花壇のすべてに植えることができました。ラベンダー、私が一番好きな花なんです」
 嬉しそうに頷くエーファ。本当にそう思っているのがありありとわかる。
「家の中も整頓させていただきました。騎士団長様の自宅と聞いていましたから、豪華な造りと思っていましたが……気どりがない感じで、とても素敵なお家でした」
 アウグスはなにも答えられなかった。
 どうする? 彼女の言うままに一緒に暮らす? そして彼女に癒される? 
 バカな。俺の生活に彼女は必要ではない。俺の心が癒されるとも思えない。
 アウグスはエーファを見つめた。
 新たな主人と目を合わせた美しいエルフは、アウグスの言いたいことを探るよう、ほんのわずかに首を傾げながら、微笑み返してくる。
 可愛い。そして綺麗だ。まるで、庭に咲き乱れるラベンダーのように。
 と、その瞬間、どこからか「ぐぅ~」と間の抜けた音が聞こえた。
 アウグスはその発生源がどこか、すぐに気づいた。恥ずかしさで死にたくなる。
 エーファはくすくすと小声で笑った。そんな何気のない仕草さえ可愛く思える。
「お腹、空いていたんですね。ご安心ください。夕餉の用意は済んでいます」
「そ、そうなのか……?」
「はい。とりあえず、ご一緒にどうです? 詳しい話は、お腹をいっぱいにしたあとに」
 誘われるままエーファと共に玄関に向かうアウグス。
 困惑は尽きなかったが……今すぐ空腹を満たせるのは、悪くないように思えた。

 料理はどれも絶品だった。エーファの腕前なら、名店が連なるこの帝都でさえすぐに店を持てると思ったほどだった。彼女が苦労して手に入れたヴァーベルワインもため息が出るほどの美味しさで、香りと喉越しも素晴らしい。
 そんなアウグスを見て、エーファはとても幸せそうだった。
 アウグスは困惑を深めるばかりだった。エーファが演技をしているようにはとても見えないあたりがさらにその印象を強くした。
「君が皇帝から俺への贈り物、という事実は受け入れたとして……」
 食事が一段落した後、アウグスは改めて話を切り出した。
「俺に断られたらどうするつもりだ? 皇帝陛下のところに戻るのか?」
「はい、そうなります。エルフには、自由人になる権利は認められていないので」
 自由人とは奴隷ではない人間を指す。通常、人間の奴隷はある程度の労役を行えば、自由人になれることになっている。だが、異種族であるエルフにその自由はない。
 つまり、自分がエーファを受け取らなければ、彼女は「よりマシではない」主人の下に送られる可能性がある……アウグスはそう理解した。そして皇帝であれば、自分がその可能性について思い至ることを前提に、エーファを寄越したはず、とも。
 エーファを手放すのは惜しくない。ただ、彼女が「よりマシではない」主人の下で苦しむことになるのは、正直なところ受け入れたくない未来ではある。
 けれど、だからといって……。
 アウグスの内心を察したのか、エーファは朗らかに微笑んだ。
「気になさらないでください。その場合は、ご縁がなかったというだけです。それに、今回の役目については、私も自ら望んでいる面があるので」
「自ら望んで……?」
「私は陛下から、アウグス様が今、なにに苦しんでいるのかを伝え聞いております」
「それは、なんとなく察していたが……」
 戸惑うアウグスをよそに、エーファは、これまでになく毅然とした態度で告げた。
「私は、アウグス様のお身体とお心を癒されることを願いますし、そのためにアウグス様が私を奴隷として、妻として使用してくれることに喜びを感じます。私ができることであれば、アウグス様にはなんでもしてあげたいと思います」
「……その台詞は嬉しいが、正直、どう反応していいかわからない。君がそこまで俺に尽くそうとしてくれる理由がわからないからなおさらだ」
「理由ですか? 特にありません」
「はぁ?」
「私、昔から、困っている人を見ると、ほおっておけない性格のようで」
 恥ずかしそうに苦笑しつつ、エーファは右手を頬に添えた。
「皇帝陛下に奴隷として買われたあと、アウグス様に仕えないかというお誘いを受け……その役目、ぜひとも自分に、と思わず答えてしまいました」
「……お前は奴隷のエルフだ。『帝国』がエルフたちになにをしているのか、身をもって知っているはず」
「はい。ですが、私はそれでも、アウグス様に尽くしたいと思いました」
「…………」
「すみません、自分でも支離滅裂だと思っているのですが、どうやら私は、それでも、不幸な誰かのお役に立ちたいと思ってしまう、不出来なエルフのようで……」
「そう言われてもだな……」
 エーファが嘘を言っているようには見えない。
 自宅の庭をラベンダーでいっぱいにしたり、豪華な夕食を用意したり、希少で高価なワインを手に入れたりするのは、エーファが本気で自分に尽くそうとした証拠だ。
 この食堂にしても、エーファの手できちんと片付けがなされ、可愛らしい小物やセンスのいい異民族風の装飾品で飾られ、とても居心地のいい空間になっている。
 きっと、彼女との暮らしは、とても楽しいものになるだろう。
 アウグスは改めてエーファを見つめた。
 突然、自分のモノになったエルフ。その雰囲気は慎ましやかで親しげで、まるで面倒見がいい姉か、息子を純粋に心配する母のよう。
 スタイルは抜群で、今も彼女の胸元には、見るからに柔らかで心地よさそうな膨らみが、息遣いと共に揺れている。
 これを自分の好きに扱える。最後はボロ雑巾のように捨てることだって。
 その誘惑に、自分はあらがえるのか。
「……とりあえず、部屋をひとつやる。今日はそこで休んでくれ」
 エーファは一瞬つらそうな表情になったが、すぐに笑顔で答えた。
「わかりました」


 それは、文字通りの悪夢だった。
 モンスターの波状攻撃を受ける「北壁」。次々に失われていく仲間たち。
 三つ年下の従弟で、自分をいつも慕ってくれていたリファール。第二波との戦いの最中、オークが振り下ろした巨斧に全身をふたつに割かれて即死した。
 自分が剣の師として崇めていた叔父のガイ。第四波を退けたと思った直後、敵の放った矢を首に受け、崩れるように倒れた。
 騎士団一の腕利きだった女騎士のクーヤ。第七波の最中に行方不明となり、その後、ゴブリンたちに輪姦され、殺された姿が近くの洞窟で発見された。
「兄さんたちが心配だから」と、事務役として騎士団に参加していた妹のフレイでさえ、第九波で「北壁」内に突入してきたオークたちに首を刎ねられた。
 他にも数えきれないほどの仲間が失われた。誰も恨み言など言わず、ただただ、「帝国」と騎士団の勝利を信じ、アウグスの身を案じながら。
「もう、やめてくれ……!」
 演劇のように見事な脚本で繰り返される惨憺たる光景に、アウグスは泣き叫ぶ。
「俺は、お前たちに誇れる生き方をしていない。俺は英雄なんかじゃない……!」
 溺れた人間のように両手をバタつかせる。もちろん、その先にはなにもない。
 だが、今日は違った。
 アウグスはなにかを掴んだ。必死に自分に手繰り寄せ、ぎゅっと抱きかかえた。
「助けてくれ、どうか、どうか……!」
 背中に感じる温かななにか。顔もまた、温かで柔らかなもので覆われる。まるで天国にいるかのような、ふんわりとした優しい心地よさ。
 自分は救われたのかもしれない。

「……ッ!」
 アウグスは覚醒と同時に身を引いた。
 目の前に、エーファの顔があった。
 自分の両手は、エーファの脇を掴んだまま。エーファのワンピースの胸元には、なにかが押しつけられた跡。
 顔面から血の気が引く。
「……大丈夫ですか、アウグス様」
 エーファは本気で心配しているようだった。
「アウグス様がひどくうなされていて、心配で近づきましたら、そのときに……」
「あ、あぁ……すまない。醜態をさらしてしまったようだ」
 アウグスはエーファから両手を離そうとして……果たせなかった。
 エーファが、アウグスの右手を、すぐに両手で包み込むように掴んだから。
 温かで柔らかで……繊細な肌の感触が、右手に広がる。
「毎晩、こうなのですか?」
 アウグスの顔を覗き込む。
「毎晩、悪夢を見るのですか? 今のように……」
「…………」
「そう、なのですね……」
 つらそうに瞳を自分の胸元に落とすエーファ。アウグスは黙ったままだ。
 ただ、エーファの開かれた胸元を見た途端、夢の中で感じたあの信じがたい心地よさが思い出され……自己嫌悪でたまらない気分になる。
 しかし、エーファは数秒ほど黙り込んだ後、アウグスを安心させるように微笑みを、自分が両手で包み込んでいたその右手を引き寄せ、ある部分に手のひらを触れさせた。
 自分の、右の胸元に。
「お、おい……!」
「アウグス様……私と……セックス、しませんか?」
 エーファの慈しみに満ちた微笑み。
「私がどれだけアウグス様を満足させられるかはわかりませんが……私の身体で性欲を発散すれば、きっとよく眠れます。そのまま朝までぐっすりです」
「いや、そうじゃなくて……!」
「なんでしたら、おっぱいを吸ったまま眠ってもかまいませんよ? 赤ちゃんも、そうしたほうがよく眠れるそうですし……あ、子守歌だって歌っちゃいますよ?」
「より業が深まっている! いやだから、君と俺との関係はまだ……うぷっ!」
 今度は頭そのものを胸に押しつけられる。
 マシュマロに顔を埋めたような感覚。あまりに心地よくて、天国にいるようだ。
 アウグスは顔を上げることができなかった。そうするべきなのはわかっていたが、エーファの豊満な胸乳の幸せな感触に、疲れきった身体と心が吸い寄せられている。
 鼻孔を刺激する甘い体臭。思いきり吸い込みたくなる。
「大丈夫。アウグス様は、きっと大丈夫……」
 背中をポンポン、と優しく叩かれる。恥ずかしかったが、このままエーファに甘えていたい、抱きしめられていたいという欲望も湧き出てくる。
「私に世話を焼かれるのを好まないのなら、せめて、私を性欲処理に使ってください。この身体を、アウグス様のストレス発散に役立ててください。私は奴隷ですから、そう扱われても文句はありません。たとえその後、アウグス様に捨てられても」
「…………」
「それに、私のおっぱい、気持ちよくありませんか? 自分で言うのもなんですが、大きさと柔らかさには、ちょっと自信があるのですよ?」
「……ああ、気持ちいい」
「よかった」
 今度は頭を撫でられる……もはやなんの反感も覚えない。ずっとこうされていたい。
 アウグスはエーファの胸元から顔を離した。
 目の前に、エーファの顔がある。
 望めば、自分は今すぐ口づけを交わせるだろう。エーファもそれを待っている。
 だが、そうなればもう、後戻りはできない。
「ひとつだけ聞かせてくれ。どうして君は、俺にそこまで憐憫をかける?」
「ですから、それは私が……」
「それだけじゃないことはわかっている。自分の身体を見知らぬ相手に好きにされるのは並み大抵の心意気じゃない」
 エーファは数秒ほど黙り込んだ後、アウグスに視線を小さな笑顔で合わせた。
「……さすが騎士団長様。隠し事はできないものですね」
 アウグスをまっすぐに見据えながら、エーファが穏やかな声で語り始める。
「……私の父も、アウグス様と同じように、エルフの一族をまとめる戦士でした。ですが、『帝国』に敗れ、生き残りはしたものの、心を病み、自分で死を選びました」
 アウグスはエーファを思わず見つめた。
 エーファの言動から、ただの奴隷ではないとは思っていたが……まさか、エルフの一族の長の娘……つまりはお姫様だったとは。
 しかも、自分と同じ理由で、父親を失って……。
「私は一族を存続させる条件として、『帝国』に奴隷として送られました。家族と離れることはつらかったですが、自分の境遇を悔いてはいません。私が奴隷として誰かに奉仕することで、一族が救われるのです。私は、今の自分を誇りに思っています」
 エーファはアウグスの指先を自分の頬に誘った。愛おしそうに肌にこすりつける。
「アウグス様は父と似ています。責任感の強さゆえに、大切な仲間を守ろうと努力する……でも、それゆえに失われた命が重荷となり、心を病んでしまえば元も子もありません。私は、私が味わった悲しみを、他人に味わってほしくありません」
「…………」
「ですから、どうか私をお使いくださいませ。私も、精いっぱい頑張りますので……」
 優しいエーファの微笑み。だが、その頬に触れるアウグスは、エーファがかすかに震えていることを感じていた。瞳は涙でわずかに濡れている。
 エーファはしらふのまま、今の言葉を口にしているのではない。
 内心の不安を押し隠し、勇気を振り絞り、己のすべてを新たな主人に預けたのだ。
 俺はその勇気に、応えなければならない……。
「わかった。エーファ。俺を……癒してくれるか?」
「……はいっ!」
 心の底から嬉しそうに、エーファが答える。
 アウグスはそんなエーファにゆっくりと顔を近づけ……唇を重ねた。


「んっ……」
 キスを交わした瞬間、エーファの甘い吐息が漏れる。
 エーファの唇は、ひんやりとしてぷるぷるで、触れるだけで気持ちよかった。ずっとこうしていたくなる。
 ちゅっ、と湿った音を立てながら、アウグスはエーファから唇を離した。
 エーファはとろんとした顔で、アウグスを見つめている。
「……ひとつわかったことがある……君は処女だな」
 ぼわっと音が出るような勢いで、エーファの顔が朱に染まった。
「え、えーと、ど、どうしてわかったのですか……?」
「いや、単純にキスに慣れていないから」
 キスをした瞬間、エーファは緊張して、全身がギチギチに硬くなっていた。
 アウグスは意地悪く笑った。
「俺の癒し役を買って出たにしては、経験が不足しているようだな」
「そ、そんなことはありません! キスは、確かに初めてですが……いろいろ予習はしていますっ!」
「予習……?」
「その、皇帝陛下から、アウグス様を悦ばせるために、いろいろ資料をいただきまして……」
「……一体、どんな資料を」
「な、内緒です……!」
 ムキになって答えるエーファ。これまでのギャップもあり、とても可愛い。
「で、ですから、経験は、ないかもしれないですけど……大丈夫です!」
「……予習したなら知っているだろうが、初めてってかなり痛いぞ?」
「大丈夫です! エルフはそういう体質なんです!」
 そんな話、聞いたことがない。
「ですから、その、キスの続きを……その先も一応、知ってますので……」
「……わかった」
 これ以上、問いつめても仕方がない。エーファが望むなら、それに付き合おう。
「んっ……ふっ……」
 アウグスは小鳥が餌を啄むような軽いキスを繰り返した後、大人のキスに移行した。舌でエーファの唇をこじ開け、そこに先端を押し込む。
 皇帝の「資料」で予習していたのだろう、エーファはすんなりとそれを受け入れた。自然な形でアウグスの舌に自分の舌を絡ませ、まさぐってくる。
 くちゅくちゅくちゅ……寝室に、湿った音だけが響き渡る。
「ぷ……はぁ……」
 舌を絡ませたまま顔を離す。エーファの陶然とした息遣いと共に、つぅーと唾液がふたりの舌から糸のように伸びる。
 エーファはうっとりとした顔でアウグスを見つめていた。
 アウグスも、そんな可憐なエーファに自分の獣欲が高まっているのを感じていた。
「大人のキス……こんなに気持ちいいものだったんですね……」
「これからもっと気持ちよくなる。胸、直に触っていいか?」
「あ、はい。ええと……」
「自分で服を脱いでくれ。上から、ゆっくり」
「それはかまいませんが、どうして……?」
「そのほうが俺が癒される。いや、男全般が、と言うべきか」
 エーファはきょとんとした顔になったが、すぐにアウグスがなにを言いたいのかを察し、情深い微笑みを浮かべた。
「もう……アウグス様も、やっぱり男の子ですね」
 エーファは自分で胸元のボタンをはずし、両手をワンピースの襟にかけて開き、ゆっくりと下げた。
 襟が胸をすり抜けると同時に、エーファの豊かなおっぱいがプルンと弾けるように飛び出した。採れたての果実のようなたわわぶりだ。
 ピンクの乳輪は人並みに大きく、先端には小さな乳首がぷっくりと膨らんでいる。
「……大きくて、すごく綺麗だ」
「う、嬉しいですが、ストレートに評されると、その、恥ずかしいですね……」
 頬を赤らめるエーファ。
「じゃ、遠慮なく」
「んっ……!」
 アウグスはエーファの双丘に両手を伸ばし、軽く手のひらで包み込んで揉み始めた。本当は最初からもっと激しくしたかったが、さすがにそれは理性が拒否している。
 エーファの肌はすべすべで不純物ひとつなく、両手で触れているだけで気持ちがいい。おっぱいの弾力、柔らかさも、娼婦たちとは比べ物にならない。
 エーファも興奮の度合いが増しているらしい。白い肌がじっとりと汗ばんでいる。乳首も充血が進み、ピンと勃ちつつある。
「あ……ん……はぁっ……アウグス様、私のおっぱい、どうですか……?」
「気持ちいい。俺はさっき、こいつに顔を埋めたんだな……」
「そ、そうなります……」
 アウグスはふたつの乳首を両手の指でつまんだ。コリコリと強めの指圧で弄る。
「あ、い、はぁっ! アウグス様、これっ……! 気持ちいい、です……っ!」
「じゃあ、次はこうだな」
「あ、はぁっ!」
 アウグスはエーファの右の乳首をつねりながら、左の乳首を舌で舐め回した。
 エーファの身体が、ビクンと跳ねる。
「アウグス様……っ! 乳首が、ジンジンしてきました……!」
「こういう攻め方、資料にはなかったのか?」
「ありました……けれど、想像以上です……っ!」
 アウグスは左の乳首そのものを口の中に入れ、舌でその先端を舐め回したり、母乳を求めるように吸ったりした。同時に、右の乳房もより激しく揉みしだく。
 エーファにとっては初めての経験、初めての快感だからか、新しい攻め方をするたびに、身体がビクビクと震える。
 エーファの乳輪を丁寧に舐めると、乳首のまわりのボツボツの分布がよくわかる。それが妙に生々しく、同時に母性を感じてしまう。
 ふんわりと漂うエルフの女性の汗の香り。エーファが髪に振りかけていたのだろう甘い香水の匂いと混ざり合い、これまた生々しい刺激を嗅覚にもたらす。
 アウグスはさらに愛撫を繰り返した。揉む乳房と舐める乳首を逆にしたり、突然、両手でおっぱいを揉んだり、それをしながらキスをしたり、うなじを舐めたり……。
「あっ、ひっ、はぁっ、ああっ……アウグス様ぁ……」
「気持ちいいか?」
「は、はい……っ! とっても、とってもぉ……っ!」
 荒い息を吐きながら悶えるエーファ。三つ編みにまとめた髪が乱れ、汗にまみれた頬や肩にべったりと張りつき、いいようもないエロティックさを醸し出している。
 と、アウグスは違和感を覚えた。
 他でもない、自分の股間に。
 これまでの行為で、アウグスの股間は充分に充血し、寝間着の上からでも明確にわかるくらいにそそり立っていた。
 その股間を、エーファが自分から手を伸ばし、愛おしそうに優しく擦っている。
「エーファ……?」
「よかった……。私の身体で、きちんと興奮してくれているんですね……?」
「いや、それはするだろ……って、もしかして自信がなかったのか?」
「さ、さて、それはどうでしょうか……ただ、初めてのことなので、確信が持てなかったのかもしれませんし……?」
 視線を逸らしながら、他人事のようにエーファが呟く。
 ただ、その中でも、股間をまさぐる手の動きは止めない。
 すりすりすり。エーファの手つきが、どんどん大胆になっていく。
 気持ちいい。ちょっとどころでなく。
「ちょ、ちょっと待て、エーファ」
「はい……?」
「……そのまますりすりされるとまずい。達してしまう」
「あっ、なるほど……」
 合点がいったように頷く。
「こうやって触るだけでも、男の子は気持ちがいいのですね……」
「ああ。だから……」
 エーファは委細承知、と言わんばかりに微笑むと、アウグスのズボンとパンツをゆっくりと下ろした。
 同時に、充分に勃起したアウグスの陰茎が、ブルン、と跳ね上がるように前に出る。
 さすがのエーファも、息を呑む顔になる。
「これが……殿方の……」
「初めて見るわけじゃ……ないよな……?」
「ええ。子供の頃、家族のものは見ていますし、その、皇帝陛下から渡された資料でも見ていますが……実際は、こういうものなんですねぇ……」
「まじまじと見られても困るんだが……」
「匂いも……うっ、なるほど。これが雄の匂いというものなのですね……」
「どこで覚えたそんな単語」
 皇帝にどんな資料を渡されたのか、ちょっと不安になってくる……。
 しばらくエーファはそれを見つめていたが、突然、口を近づけ、亀頭を舐め始めた。
「……ッ! エーファ、なにを……!」
「その、アウグス様は、こうすれば必ずお悦びになると、皇帝陛下が……」
「確かに嬉しいけど! いやそうじゃなくて! 今日は風呂にも入っていないし、最近は手入れもしていないから……!」
「んっ、気に……しないてください……私が、お手入れを、んふっ……」
「だからって……!」
 エーファは亀頭の先ではなく、他の部分にも舌を這わせ始めた。アウグスが気にした通り、亀頭には白い汚れがそこそこにこびりついているが、エーファはおかまいなしにそれを舐め取っていく。
 エーファはそのままスジの先やその裏、シャフト、尿道にまで舌を這わせていく。アウグスの隅々までを綺麗にするつもりするらしい。
 本当の性奴隷のようにアウグスに奉仕するエルフの美女。罪悪感が胸に宿るが、それ以上にエーファの姿が淫靡で、舌使いそのものも気持ちよく、ペニスは萎えるどころかさらに張りを増してしまう。
 エーファの舌での奉仕はアウグスの膀胱にまで行われた。そしてそれが終わると、改めて亀頭に顔を近づけ、優しく口の中に入れ、ゆっくりと愛撫を始める。
「ちゅ、んふっ、ちゅ、ぷちゅ、ん……」
 一心不乱にアウグスの分身を口淫で慰めるエーファ。
 唇で陰茎を刺激しながら、舌で亀頭、特に性感帯のカリの部分を刺激する。
 とても素人の技とは思えない。
「エーファ、これ、どこで……?」
「んっ……実はこれも、皇帝陛下が資料として模型をくれて……練習を……」
「そ、そこまで……!?」
 確かに模型で事前に練習をしていれば、比較的冷静でもいられるだろう。エーファは男性の理想ではあるが滅多に出会えない、「床上手の処女」ということになる。
 一方でアウグスは、そこまで真摯に自分に尽くそうとしてくれていたエーファに胸を打たれていた。
 模型でしっかりと練習していたからか、エーファのフェラは巧みだった。ペースもどんどん速くなっていく。アウグスの快感もエスカレートしていく。
「うっ……! エーファ、待て、待って!」
 たまらずアウグスは声をあげた。
「このままじゃダメじゃ! 俺は君に、そこまでは……!」
 エーファはアウグスを無視して、さらにペースを上げた。自分の唾液を絡ませ、オイルのようにして動きを滑らかにしていく。
 そのうえ胸元を足に押しつけたり、手で膀胱をさわさわしたり……。
「ん、ぷちゅ、んふっ、ん……!」
「え、エーファ、出る……ッ!」
 ドプウッ! ドプドプドプ……ッ!
「んぐ……んんんんんんんんっ!」
 エーファはアウグスの分身を一番奥に入れた状態で、射精を受けることになった。
 熱がこもったどろりとした液体が、エーファの口に放出される。
「んんんんっ! ん……んぐ……ぷはあ……」
 だが、エーファはそれを吐き出そうとはしなかった。
 アウグスの逸物から口を離し、一度、二度、三度とゆっくりと飲み下す。
「ん……けほっ、けほっ……! さ、さすがに喉に絡んで、きついですね……。でも、全部、アウグス様のを、受け止めました……」
 誇らしげに微笑むエーファ。しかし、瞼には涙が浮かんでいる。本当は、よほど苦しかったに違いない。
 アウグスはなんと言っていいかわからなかった。
 ひたすら自分に尽くそうとしてくれるエーファの健気さがいじらしく、嬉しかった。
 しかし、自分の心の弱さが彼女に無理を強いているとも思えてしまい、つらさを感じる。
「そんな顔をしないで。私は、アウグス様を気持ちよくできて、とても嬉しいです」
 アウグスの内心を読んだように、笑顔でフォローを入れるエーファ。
 唇の端から垂れた、涎と精液が混ざり合ったものを手でぬぐう……その行為と、エーファの美貌とがギャップになって、たまらなく淫らに感じられる。
 優しく微笑みながら、射精で若干縮んだアウグスのペニスを愛おしそうに擦る。
「精液って、本当に熱くて苦いんですね……でも、そういうものが、ここからびゅっと出て、女の子が子をなすための種になる……不思議です。エルフも人間も、そこは変わらないことも含めて」
「エーファ……」
「アウグス様……。私の中にも、アウグス様の熱くて苦いものを……どうか……」
 そう言ってエーファは自分でショーツを脱ぎ、下半身のすべてを露わにした。そして腰を落として股を開き、誘うように陰部を広げて見せる。
 エーファのあそこは、さすがに男を知らない女と言うべきか、これまで見てきた娼婦たちのそれとは比べ物にならないほど綺麗だった。
 恥丘はふっくらと膨らみ、ヘアはほとんどない。指先で開かれた秘唇の先は鮮やかなピンク色で、上にはフードに包まれたクリストスがある。どちらも、これまでの前戯で湧き出た愛液で、ぬらぬらと湿っている。
 エーファが自分のために虚勢を張ってくれているのはわかっている。今だって、とんでもなく恥ずかしい思いをしているはずだ。
 でも、そんな彼女の、いまだ穢れを知らない恥部を自分のもので貫き、好きなだけ犯すことができる。初めての経験に、彼女がどこまで耐えられるかを試せる。
 そんな邪な考えもよぎり、それだけでムラムラと性欲が高ぶってくる。
 おかげで、一度は萎えた陰茎も、すぐに硬さを取り戻そうとしている。
 エーファが性器を弄るたびに、チーズのそれに似た濃厚な雌の匂いが漂ってくる。
「普通は挿れる前に、指先なんかで慣らすものなんだけど」
 エーファをベッドに押し倒し、上にまたがりながら、アウグスは言った。
「エーファが早く欲しいから……このままいくよ」
「はい……!」
 エーファは嬉しそうに微笑んだ。
「好きなだけ、エーファのあそこをお使いください。エーファは、アウグス様の奴隷妻でありますので」
 エーファは右手でアウグスの陰茎を掴み、陰部へと自分からいざなおうとする。
「それでアウグス様の心と身体が癒されるのなら、エーファは幸せに思います……」
 アウグスはエーファに導かれるまま、自分の滾りに滾った男根をエーファのスリットに押し当てる。くちゅん、と湿った音と共に、お互いの陰部が触れ合う。
 エーファの誘導のおかげで、すぐに膣口を見つける。
 アウグスはそこに、ゆっくりと亀頭の先端を押し込んでいく。
 ずぶ、ずぶずぶずぶ……。
「ん……! んんんっ……!!」
 歯を食いしばるエーファ。さすがに痛いらしい。
「……大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……? 全然、全然痛くありません……っ!」
「見え透いた嘘は止めてほしいなぁ……」
「う、嘘ではありません……! さ、早く、その先に……、続きを……!」
 そのとき、アウグスは、エーファの中に引っかかるような感覚に陥っていた。
 処女膜だ。薄い粘膜が、アウグスのそれ以上の侵入を拒んでいる。
 これを貫かなければ、先には進めない。きっと本当に痛いだろうけど……。
「エーファ、たとえ痛かったとしても堪えろよ……一気にいく」
「え……? あっ、い、んんんんんんんんんんんんっっ!」
 ずぶぶぶぶぶぶっ!
 アウグスは有無を言わさない勢いでペニスをエーファの中に押し込んだ。
 すぐに根元までずっぷりと入り、亀頭の先が膣内の硬い部分にコツコツと当たる。
「い、いい……ッ! あ、く、い……、いい……っ!」
 苦悶の表情でシーツを握りしめるエーファ。やはり、相当に痛いらしい。
 ただ、意地でも「痛い」と言わないあたりに、エーファらしさがある。どうやらこのエルフ、見かけは母性的だが、性格はかなり意地っ張りのようだ。
 アウグスはせめてものことと思いながら、エーファの両手に手のひらを重ねた。エーファも反射的にそれを掴み、爪を立てんばかりの強さで握りしめてくる。
 幸い、結合部分から血は出ていない。そこからは愛液だけがあふれ出ている。
 アウグスと両手を繋ぎ、荒い息を吐き出しながら、エーファが尋ねる。
「アウグス様……、全部、挿入りましたか……?」
「ああ。全部挿入った。やっぱり、それなりに痛いだろ?」
「痛くありません」
 真顔で答えるエーファ。譲れないらしい。
「でも……お腹の中が、アウグス様の大きくて熱いものでいっぱいで……これが、セックスなんだなって、思っています……」
 アウグスと繋がった両手をぎゅっと握りしめる。
「ひとつに、なれましたね、私たち……」
 心の底から嬉しそうに微笑む。
「私の中、いかがですか……?」
「……気持ちいい」
 エーファの膣内は極上の気持ちよさだった。
 まだまともに抜き差しをしていないのに、柔らかくて熱くてぬめぬめした肉の壁が心地よい圧迫感で押し寄せ、陰茎に絡みついてくる。
 中のヒダヒダが息遣いに合わせるように蠢き、カリの部分を遠慮なく刺激してくる。
 こんないい具合の女性は、これまで出会ったことがない。
 ペニスを左右に動かして膣の形を変えようとすると、エーファもいじらしく、きゅっと膣を締め上げて反応してくれる。
 エーファは荒い息を吐き出しながら、結合部を見つめている。
 ふたつの大きなおっぱいが、まろみのままに揺らめいている。闇の中で底光る白い肌に、汗が玉のように浮かんでいる。
 綺麗で、可愛い。エロい。そして、とても気持ちいい。
 自分はこれから、そんなエーファの身体で、さらに気持ちよくなれる……。
「さぁ、いっぱいいっぱい、動いてください」
 エーファは満足げに微笑んで、自分の腰を動かしてアウグスを誘った。
「今は私とのセックスで、ただただ気持ちよくなってください。イヤなことはなにもかもを忘れて……。私はなにをされても、それを受け止めてみせます……」
 アウグスはエーファの言葉に従い、本格的に腰を動かし始めた。
 ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぬちゅ……。
 ねっとりとした淫らな音が、緩いテンポで繰り返される。
「あっ、ひっ、あ……」
 わずかに顔をしかめながら、細い声をあげるエーファ。まだ痛いのかもしれない。
 アウグスの劣情は強まるばかりだった。
 痛みを堪えるエーファを、もっとよがらせたい、もっと喘がせたい、その清楚な表情を崩したい。
 その衝動そのままに、アウグスはペースを速めた。
 エーファには悪いが、彼女が望む通り、なにもかもを忘れて彼女に淫したい。
 ぐちゅっ! ぬじゅっ! ぐちゅ! ぐちゅぐちゅっ……ずちゅ!
「あっ、いっ、あっ、ひぃぃっ! い、あぁぁぁっ!」
 声を大きくして喘ぐエーファ。悲鳴に近い。瞼から涙があふれ、頬を伝う。
「エ、エーファ……?」
「だ、大丈夫……! 大丈夫、ですから……!」
 アウグスの内心を読んだように、エーファが応じる。
「だから、もっと深く、もっと激しく……アウグス様の望むように……!」
 胸にズシンときた言葉だった。
 エーファは本当に自分のことを心配し、本当に自分の心の傷を癒そうとしてくれている。どんなに痛みを感じていても、自分のためと思って耐えていてくれる。
 彼女にとっては、大切な「初めて」だったというのに。一族を生き残らせるために奴隷として帝国に売られたという、不幸そのものの境遇なのに。
 そんな彼女を、今、自分は彼女自身の望みに従って、性欲のはけ口としている。
 わけのわからない気分の中、アウグスはエーファの自分の下半身に打ちつけ続ける。
 ずちゅん! ずちゅん! ぐちゅん!
「あっ、ひっ、あっ、あああっ! ふぁぁぁっ!」
 エーファは声をあげながら、必死にアウグスを受け止めようとする。
 アウグスが腰を動かすと、それに合わせて自分も動き、アウグスにできるだけの快感を与えようとする。
 その健気さもアウグスの胸を打つ。性欲もさらに高ぶる。
 エーファが揺さぶられるたびに、黒い首輪に着けられた鎖がジャラジャラと揺れる。ギシギシとベッドが軋み、飛び散った体液がシーツに無数の染みをつける。
 エーファの声も、次第に艶がかかってきた。
「い、はぁっ! は、うぁ……! い、いい……! これ、いい、です……っ!」
「気持ち、いいのか……?」
「は、はい……っ! ちょっと、わかってきました……」
 火照りきった顔に、陶然とした微笑みを浮かべるエーファ
「これが、セックス、これが、男女の交わり。赤ちゃんを作るための、儀式……」
 赤ちゃん、というフレーズで、アウグスにある懸念が湧く。
「そう言えば聞いていなかったけれど、今日は……」
「ご、ご安心ください。そういうのは、心配しなくて大丈夫です……」
 先回りするようにエーファが答える。
 たぶん、今日は排卵日ではないということだろう。あるいは、人間とエルフの間に子供はできにくいのか。
「だから、このままいかようにも……アウグス様の、望む通りに……」
 アウグスは頷き、腰使いのペースをさらに増した。もはや自制が利かない。
「あ、ひっ、あああっ! アウグス様、そ、そうです、激し……あぁぁぁっ!」
 エーファの声にならない声。エーファも官能に呑まれ、一緒に腰を動かす。
 アウグスはエーファから両手を離し、ふたつのおっぱいを鷲掴みにして揉みしだいた。エーファはなにかを口にしようとしたが、その前にキスで唇をふさがれてしまう。
 もちろん、その間もアウグスはピストンは止めない。
「あ、ん、ふっ、……ちゅ、ぷちゅ、んふぅぅぅ……!」
 口、胸、秘部。三カ所を同時に攻められ、エーファはブルブルと震えた。
 膣内がキュッキュと締まり、アウグスを無数の膣ヒダが複雑な動きで撫で回す。
 最高に気持ちいい。
 おかげで、アウグスのペニスは限界まで張りつめ、もはや限界に達しつつある。
 アウグスはエーファから口を離し、再びその両手を握った。エーファもすがるようにその手を取る。
「エーファ、そ、そろそろ……!」
「は、はい……! どうぞ、私の中で、いっぱいいっぱい、出してください……!」
 唾液と精液でどろどろになった顔に、精いっぱいの微笑みを浮かべるエーファ。
「遠慮はいりません。私の中を、アウグス様の子種でいっぱいに……!」
 アウグスはラストスパートをかける。びちゃびちゃと音を立てて叩きつけられるふたりの身体。エーファもなにかを掴んだのかのように動きを速めていく。
「あっ、あっ、いっ、アウグス様……、私も、いけ、そうです……! アウグス様と一緒に、気持ちよく……!」 
 瞼に涙を溜めて、けれど、とても嬉しそうに告げるエーファ。
「だから、このまま、このまま……!」
「エーファぁぁ……!」
 アウグスはエーファの最も深い部分に突き入れ、同時に精を放った。
 ドブッ! ドクドクドクドク……!
「あ、ああああああああっ!」
 射精を受け止めたのがトリガーになったのか、エーファも高らかに声をあげながら背中をのけ反らせた。
 ビクビクと全身が震えている。気をやったに違いない。
 両手両足の指先が、乱れた髪が、ツンとなった乳首の先が、フルフルと揺らめく。
「あ、あぁ……はぁ……はぁ……」
 エーファは力尽きるようにシーツに背中から崩れ落ちた。荒い息を出している。
 ただ、意識は明瞭なようで……すぐにアウグスに満足げな笑みを浮かべる。
「はぁ、はぁ……いっぱいいっぱい、出ましたね……。さすが、男の子、です……」
 エーファは、アウグスのものが入ったままの鼠径部を見つめ、愛おしそうに撫でた。
「ありがとうございます。私で、気持ちよくなってくれて……」
 アウグスはなにも答えられなかった。
 単純に疲れきっていたし……射精を膣内でされて、感謝の言葉を口にする女性などエーファが初めてだった。正直、罪悪感と無縁ではいられない。
 けど……それ以上に、充分以上の満足感がある。
 エーファとのセックスは本当に気持ちよかった。
 こんな身体、二度と巡り会えないだろうと思ったほど。
 エーファに中出しを褒められたことを、子供のように嬉しく思う自分さえいる。
 ただエーファを抱いただけで、こんなに前向きになれるなんて。
 もしかすると、彼女は本当に、俺の心の傷を癒すことができるかもしれない。
 だとするならば……結論はひとつだ。
「どうしたんですか? 黙ってしまって……」
 心配そうにアウグスの顔を覗き込むエーファ。
 アウグスは作り笑いを浮かべた。
「いや、なんでもない……けれど、本当に気持ちがよかった。いろいろと発散できた気もする。エーファが頑張ってくれたおかげだな」
「自分のできることをしたまでです。私も、アウグス様の力になれて嬉しいです……」
 アウグスとは違い、エーファは本物の……本心からの微笑みを浮かべていた。
 これまでと同じ、優しげで、頼りがいのある笑顔。アウグスは数年前に逝った母親のことを思い出した。エーファは母性の塊のようなエルフなのだろう。
「これからも、毎晩のように私を性欲処理にお使いください。私は、アウグス様を癒すためならば、どんなことでも……」
「そのことなんだが」
 アウグスは自分のペニスをエーファから引き抜いた。手近なタオルを手に取り、こびりついた精液や愛液を拭き取る。
 エーファは……アウグスがなにかをする前に、自分のハンカチで秘部を拭いていた。
 お互いに身綺麗になった後、アウグスは改めてエーファに向き直った。
「俺はこれからも、エーファの世話になりたいと思っている。今、君と繋がってわかった。君は俺に必要なエルフだ。俺が大丈夫になるまで、ずっと傍にいてほしい」
 驚きの顔で、目を見開くエーファ。
「私で、本当によいのですか……?」
「いいもなにも、君が望んだことだろう?」
「え、あ……いえ、ここまで素直にアウグス様が私の言うことを聞いてくださるとは、思っていなかったので。男の子は、もう少しやんちゃなものだと」
 あくまで自分が癒し役であるという立場を崩そうとしないエーファ。その意地っ張りな部分も、今のアウグスにはとても可愛く思える。
 アウグスは真面目な顔で続けた。
「というわけで、君はこれから俺のものだ。だから、自分を性欲処理の道具だとか、そういう卑下はやめてほしい」
「はぁ……。アウグス様が望むのであれば……」
 拍子抜けしたように応じるエーファ。
「あと、ここで確認しておきたい……どうして君は俺と再会したとき、『奴隷として』だけではなく『妻として』振る舞うと言ってくれたんだ?」
「それは……純粋に、そんな関係になれたらいいなって思っただけです」
 気恥ずかしそうに顔を伏せるエーファ。
「私は、アウグス様の望むとき、望む存在になることが望み……けれど、アウグス様の妻のように振る舞えたのなら、きっと、私は一番、私らしく生きていける……」
「君の見立ては正しいと思う。だから……」
 アウグスはエーファの三つ編みを丁寧に撫で、確証を込めて頷いた。
「君は俺の奴隷だけれど、今からは新しい妻だ。だから、俺の妻らしく、よろしく頼む」
 エーファはアウグスの言葉に、花のような笑顔を浮かべ、こう答えたのだった。
「わかりました……!」
 そのとき、エーファの秘部から、アウグスの子種がどろりと湧き出て……ふたりの体液で汚れたシーツに、ふたりの絆の証としての新たな染みを生じさせた。

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