【2020年10月17日】

『兄妹ですが異世界で結婚しました。』沙桐好佳 プロローグ&第一章公開!

原作:サークル アクアドロップ 三上ミカ『兄妹ですが異世界で結婚しました。』沙桐好佳 プロローグ&第一章

 

 

 

 

 

 

 

 

プロローグ 駆け落ち電車の終点は――「「ここって異世界!?」」
「ごめん、ミリカ……俺のせいで……」
 すべてを拒絶するかのように閉じられた我が家のドアを前に、一人の学生が途方に暮れていた。
 湧き上がる後悔を胸に、ナルヤ――長谷川成也が空を仰ぐと、ポケットに突っ込まれた携帯が唐突に震える。
 画面を点けた瞬間、今までぼんやりとしていた意識が急に鮮明になる。
 なぜならそこにはミリカ――実の妹である長谷川未莉花の名前が煌々と表示されていたからだ。
 慌ててメッセージを開く。
『今どこにいるの?』
 ただその文字だけで泣きそうになってしまい、震える手で返信しようとすると、立て続けに短いメッセージがポンポンと飛んでくる。
『スマホ取り上げられちゃった』
『今パソコンからメッセージ送ってるよ』
 その単調な文章の奥から、ミリカの深い悲しみが伝わってくる。
 メッセージ越しとはいえようやく連絡が取れた安堵と、妹が感じてるであろう身を切るような悲しみに、必死に涙を堪える。
 自分が泣いてはだめだ、ミリカの方がもっとつらい思いをしているはず。
 そう歯を食いしばっていると、さらにメッセージが送られてくる。
『私、ナルにぃと離れたくない』
『一緒にどこか遠くに行こう?』
『明日の朝一、駅前で待ってる』
 そんな言葉を見て、ついに涙がこぼれ落ちる。
 自分が動転している間に、妹はどれだけしっかりと今後を見据えていたのか。
『ナルにぃ、好きだよ』
『私も働くから』
『二人で働けばきっとなんとかなるよ』
 恐らく画面の向こうで、これ以上ないぐらい泣いているであろう妹の顔を思い浮かべる。
 いつか二人で暮らそうと話していた。
 それが今になるとは思っていなかったけれど……
『分かった、駅で待ってる』
『俺も大好きだよ』
『二人で生きていこう』
 覚悟を決めメッセージを送ると、少々の間の後に返信が一つ。
『ありがとう、ナルにぃ。大好き』
 それ以来、静まるスマホ。
 恐らく長時間パソコンを弄ると両親に怪しまれるのだろう。
 輝きを失ったスマホの画面を見て、ナルヤは再度覚悟を決める。
「……よしっ!」
 制服の袖で涙の跡を拭うと、しっかりとした足取りで駅へと向かうのだった。

 ナルヤが家を追い出されたのは、とても簡単な理由だった。
 それは、妹のミリカと恋人になってしまったから。
 両親には内緒で付き合っていた二人は、卒業したらどこかで暮らそうなんて話をしていたが、あっという間に親にバレてこんなことになってしまった。
「ミリカ、大丈夫かな……」
 始発が出る十五分ほど前、駅前のベンチに座りながらせわしなくあたりを見回すと、パタパタと小走りに駆け寄る音が響き渡る。
 その音に気付いたナルヤは慌てて立ち上がると、勢いに任せて妹を抱きしめそうになり、思い留まる。
「……どこで誰に見られているか分からないからな……」
「うん、ナルにぃ。分かってるから……大丈夫」
 家を追い出されてから半日も経過していないが、この数時間の別離は二人にとって耐え難いものだったようで、無言でお互いの顔を愛おしそうに見つめ合っていた。
「なぁ、ミリカ」
「ん? どうしたのナルにぃ?」
 恐らく一睡もできていないのだろう。
 未だにミリカの目は真っ赤に充血しており、疲労が滲み出ている。
 そんな彼女の様子を見て胸にチクリとした痛みを感じつつも、これだけは確認しておかねばと口を開く。
「本当に……いいんだな?」
 昨日まで当然のようにあった当たり前の生活。
 学校に行って勉強し、友達と笑い合い、家に帰れば家族のぬくもりを感じ、夜に温かい布団で眠る。
 そんな生活が今日から突然なくなってしまうかもしれないのだ。
 二人で働いても生活は苦しいかもしれない。
 周りから白い目で見られるかもしれない。
 いつ連れ戻されるか分からない恐怖と戦いながら日々を過ごすことになるかもしれない。
 そんな色々な想いを、その一言にすべて込めてナルヤは問いかける。
「…………」
 そしてその想いをしっかりと受け止め、下を向いて考え込むミリカ。
 しかし、その間も一瞬のことで、すぐに顔を上げるとこう言った。
「うんっ! 私、ナルにぃと一緒にいられるならどんな場所でもいい……だから……一緒に生きてこ?」
 その顔は確かに長時間の慟哭でむくみ、ひどい有様だったかもしれない。
 だがその屈託のない笑顔はそんなことをすべてかき消すように明るく、輝いていた。
「そっか……じゃあ、行くぞ!」
「うん! 行こっ、ナルにぃ!」
 どんなところだろうと、二人ならきっとやっていける。
 その気持ちだけを頼りに、不安に押し潰されそうになりながらも改札を通り抜け、より遠くへ、より田舎へと電車を乗り継いでいく。
 始発、しかも下り列車でまばらだった乗客は一人、また一人と降りていく。
 見たこともない路線、聞いたこともない行き先の電車は、車両どころか列車全体ですでに乗客は二人だけ。
 一駅一駅の間隔もどんどん長くなっていき、車窓から眺める景色も似たようなものになっていく。
 そんな環境と風景に、張り詰めていた緊張の糸も限界を迎えたのか、二人を睡魔が襲う。
 必死に眠気と闘い船を漕いでいたミリカの頭が、ぽてんと肩に乗っかり、そのままくぅくぅと可愛らしい寝息を立て始めた。
(ミリカ……俺が……絶対に幸せにするから……)
 再度誓いながらも、妹の体温と窓から射し込む温かい光に包まれ、ナルヤもまたまどろみ始める。
 ガタンガタン……ガタンガタン……。
 小気味よい振動により、揺られる身体。
 ガタッ、プシューッ。
 つんのめるような軽い衝撃と、圧縮された空気が吐き出される音。
「終点、■■■です。終点、■■■です。お忘れ物のないように~」
 聞こえづらい車内放送に意識が少しずつ覚醒していく。
「ミリカ、着いたみたい、だ、ぞ……?」
「ん~~むに……ここどこ……えっ?」
 電車を降りようと重い瞼を持ち上げた二人は、同時に自分たちの置かれた状況を認識する。
 いや、認識しようとし、失敗していた。
 自分たちを包んでいたはずの鋼鉄の乗り物は気付けばなくなり、あたりは見たこともない木が生い茂っている。
 始発で乗ったはずなのに、視界は真っ暗で、どう考えても夜になっているようだった。
 足元に二人が座っていた電車のシートのみが現実の残滓のようにそのままだったが、周りの風景と比べると逆にそこだけが非現実のように浮いている。
「ここは……?」
 おっかなびっくり二人は立ち上がり、一歩、二歩と歩みを進める。
「ナルにぃ……! 後ろ!」
 急いで振り返ると、ついさっきまで座っていた――唯一自分たちを日本と繋ぎ止めていた――シートが消えている。
「……な、なんだこれ? どこだよここ……?」
 夜空には、綺麗な色をして煌々と光る月が、〝二つ〟。
「ナルにぃ! あれ……!」
 遥か遠い空の向こうには、全身に鱗を張り巡らせた赤い鳥のようなものがあくびと共に火を吹きながら飛んでいる。
「あれってドラゴンだよね……?」
「た、多分……」
 驚きながらも二人は唾を飲み、理解した。
 目前に広がっていたのは、これまで友人に借りたライトノベルで読んだ光景そのものだったからだ。
「ナルにぃ……」
「ミリカ……もしかしてここって……」
「「異世界……?」」
 声を揃え、二人は認識を共有した。

一話 兄妹で恋人でも――異世界なら「初体験」できる!
 突然の事態に驚きながらも、それ以上の閃きがナルヤの頭に浮かんだ。
「よし、ここでは兄妹なのは隠して恋人同士として生きよう!」
「……! ナルにぃあたまいい!」
 根はポジティブな二人、元から当てのない駆け落ちだったというのもあり、異世界に来たこと自体にはさして悲観もなく、早速住民を探して歩くことにした。
「ミリカ、足元気をつけて……!」
 周りは鬱蒼と繁った森、しかも時は夜。
 月明かりとスマホのライトを頼りに、勇敢に、しかし慎重に進んでいく。
 道らしきものを五分ほど歩いた頃、遠くに明かりが揺れているのを見つけた。
「ナルにぃっ! あれ!」
「やったぞミリカ! きっと人だ!」
 ハイタッチをして喜びを分かち合い、早足で明かりに近づいていく。
 どうやら二人が人影を見つけたのと同じくして向こうもこちらを見つけたらしく、明かりの持ち主もパタパタと二人の元へとやってくる。
「もしも~し! もしかして、転移者さんですか~?」
 近づいてみると、明かりを持っていた人影は二人の女性だった。
 二十代前半だろうか。一人は黒髪を三つ編みでまとめ、ふわりとしたスカートと丸いメガネ、少しぽっちゃりとした体形から柔らかい印象を受ける。
 もう一人の女性は対照的にクールな印象で、茶色いストレートの長髪、切れ長の目、白衣のような羽織とネクタイをしている。
「えっと、俺たちっ……!」
 異世界における初めての人間との出会いに一瞬言葉を詰まらせると、最初に話しかけてきたメガネの女性が丁寧に自己紹介をする。
「あっ、ごめんなさい! 突然話しかけられてもびっくりしちゃいますよね。初めまして、私はナズナっていいます」
 続いて隣に立っていた白衣の女性も簡潔に自己紹介をする。
「私はセリカだ、よろしくな」
 不愛想なセリカに苦笑しつつ、ナズナが話を続ける。
「転移者って言われてもよく分からないですよね。もう気付いてると思いますが、ここはあなたたちがいた世界とは別の世界なんですっ」
「やっぱり……!」
 ドラゴンを見た時からある程度覚悟をしていたとはいえ、人からそう説明されるとやはり驚きを隠せない。
「実はこの場所、千日ごとに日本と繋がっていて、たまにこうやって転移してくる人がいるんです。私たちも日本から転移してきたんですよ~」
「日本と? ってことは、俺たち以外にも……?」
「はい! 日本から来た方、たくさんいらっしゃいますよ」
 誰かしら住民はいるだろうと思っていたが、まさか同じように転移者、しかも日本からの人間が多くいるとは想像もしていなかった。
「マジか……! 俺たちみたいなのがたくさんって……!」
「でもナルにぃ、それなら少しは安心かも……?」
 驚きで見つめ合っている二人に対して、ナズナが再び話しかける。
「それはそうと……お二人はご家族ですか?」
 ナルヤは思わず身構えると、先ほど決めたことを実行する時だと再度用心する。
(ここでは兄妹であることを隠して恋人として生きる……!)
 しかし恋人ですと言おうとした瞬間、妹が先制を切って話し始める。
「いいえっ! 恋人同士ですっ! 兄妹とかじゃないですっ! ねっ、ナルにぃ!」
「ちょっ、ミリカ! その呼び方だとバレるって……!」
 心優しく成長した兄妹は、あまり嘘が上手ではなかった。
 コソコソと内緒話をする様を生暖かく見守っていたナズナが声をかける。
「うふふ、とりあえず私たちの住んでる町まで行きましょうか?」
「は……! はい、ぜひお願いします!」
 町まで誘導してもらうことになった二人は、道すがらこの異世界について色々教えてもらっていた。
「えっ、エルフって……あの耳が長くてすごい長生きするっていう?」
「そうそう、そのイメージのエルフで大体合ってます!」
「じゃあ、ナズナさんとセリカさんはエルフの町で暮らしてるんですか?」
 先を歩いていたセリカが振り返る。
「いや、正確には千日に一度のスパンで転移者が来るので、エルフの町の隣に転移者用の自治区があるんだ。私たちもそこに住んでいる」
 クールな印象のセリカだったが、流暢に説明を始めてくれた。
 千日に一度繋がる、元いた世界とこの異世界を繋ぐ道は一方通行で、毎回誰かしらこの世界へと転移してくるらしい。
「一方通行ってことは、次に日本とここが繋がってもこっちからは戻れない?」
「そうだ。この世界で有名なおとぎ話には、日本へ行けるような話もあるがな」
 するとナズナが歌うようにそのおとぎ話の一説を口ずさむ。
「天から光落ちる時、もう一つの世へ旅に出る……♪」
 セリカはナズナの歌にこくりと頷き、補足する。
「しかし、実際にそんな現象を見たことはない」
 やはりもう日本には戻れないことを覚悟したナルヤは、なおのこと兄妹であることは隠していかねばと気を引き締めた。
 セリカはさらに自治区について説明を続ける。
「エルフは長寿だからな。千日に一度なんて、我々の感覚だったら毎月のように転移者が来るようなものなのだろう。それで自治区には特殊なルールがあり……」
 二人が情報を得ようと聞き入っていると、唐突に先導していたナズナが振り返り、にっこりと笑いかける。
「ところでお二人は恋人同士って言ってましたけど……もしかして、兄妹ですか?」
「ふぇっ?」
「ミリカさん、さっきからナルにぃって呼んでますし、お顔もそっくりで~」
「えっ、いや、これはその……」
 突然の即バレにあたふたするナルヤたちに対し、ナズナは二人の心配を察した様子でニコニコと話を続ける。
「あっ心配しなくても大丈夫ですよ! 実は私たちも女同士ですけど……」
 左手の薬指に光る指輪を見せつけるナズナ。
「異世界だから結婚できましたので!」
「「?」」
「だからお二人も心配しないで大丈夫ですよ~♪」
 突然の強烈なカミングアウトに目を白黒させるナルヤとミリカとは対象的に、ナズナはのほほんと幸せそうな笑顔を浮かべる。
 よく見ると同じデザインの指輪がセリカの薬指でも光っている。
「えっ、あの、それは……?」
「あっ、着きましたよ~~!」
 事の詳細を聞こうとするが、気付けば町の入り口に到着していた。
「はい! ここが私たち転移者用の自治区で~す!」
 石壁に囲まれた中に、華やかな町が広がっていた。
「わぁぁ~~! 可愛いっ! 童話の中みたい!」
 はしゃぐミリカを横目にナルヤは道行く人々の顔を見て呆気に取られる。
 確かに町並みはレンガや石造りの家、高低差のある道は暖色の照明と鮮やかな花で彩られており西洋ファンタジーそのものだ。
 しかし石畳の上を歩いているのはほぼ日本人だった。
「本当に日本から定期的に転移してるんだな……」
「ねえねえ、ナルにぃ、あれ!」
「こらっ、人前でナルにぃって呼ぶのは……わっ、エルフだ……!」
 交易のために来ているのだろうか、耳の長い色白で顔貌の整った――ナルヤたちが想像していた通りの――エルフもちらほらと歩いている。
 衝撃的な事実や状況の連続で、思わず町の入り口で棒立ちになってしまう。
 しかしそんな転移者には慣れっこなのか、ナズナたちは二人を連れてサクサクと町中を案内していく。
「さぁさぁ、役所に行って転移者登録をお願いしますね!」
 いざ役所に着いてみると、確かにあくまでここは転移者のための自治区ということで、役所の担当者は皆エルフで、色々な手続きを行っているようだった。
「ささっ、お二人ともこちらへどうぞ~」
 ナズナに導かれ窓口まで移動していると、役所にいた他の人たちも次々にナルヤたちの存在に気付く。
「おい、あれ新しい転移者じゃないか?」
「また若いのが来たの~こりゃ楽しみじゃわい」
 ざわ……ざわ……。
 たまに来る転移者はやはり好奇心の対象になるようで、誰も彼もがこっちを見ていて落ち着かない。
 だがそんな様子も役所としてはいつものことのようで、淡々と手続きは進んでいく。
「はい、今回も日本の方ね。それじゃあこちらに必要事項を記入してちょうだいね」
 白髪で瓶底メガネをかけたエルフのお婆さんに促され、二人はソファに座る。
(ナズナさんはあぁ言っていたけど、念のため兄妹なのは隠しておくか……)
 ナルヤが内心ドキドキしながら、そう考えていたその時。
 ナズナが二人の背後でばっと両手を広げ華やかな声を上げた。
「今回転移してきたこちらのお二人! 兄妹で! 恋人の! ミリカさんとナルにぃさんです~~!」
「ちょっ、ナズナさぁーーーーーん?」
 本日二回目の即バレだった。
 ナズナの発言を聞いた周りの転移者たちのざわめきが、否が応でも耳に入ってくる。
「おい……兄妹らしいぞ……」
「恋人だって……?」
 周りのざわめきから家を追い出された時のことを思い出し、思わず頭を垂れる。
(やっぱり……いくら異世界でも、兄妹で恋人なんてやばいんだな……)
 そこに追い打ちのように降りかかるエルフのお婆さんの問いかけ。
「お二人さん……? もしかしてここには……駆け落ちで?」
 もはや隠し通すのは無理だと諦め、ナルヤは素直に頭を縦に振る。
(ここを追い出されたらどうしよう……異世界でも路頭に迷うのか……?)
 そんなことを考えていると、お婆さんはほぅ……とメガネを上げ言葉を続ける。
「あらぁ~~! 素敵ね~~! ここならね、結婚もOKだからね!」
「はい……って、えっ? けっ……?」
 予想と違う明るい声色に、戸惑うナルヤ。
「まだ二人とも若いみたいだからね~、子供が楽しみだわねぇ~~!」
「ふぇっ? こっ、子供っ……?」
 今度はミリカが声を裏返らせる。
 しかし驚いているのは当事者だけのようで、周りでざわついていた他の転移者も、みな笑顔でこちらを取り囲んでいた。
「いや~羨ましいなぁ! またすぐに結婚するんだろうなぁ~!」
「ここに来たカップルはすぐ結婚して子供を作るからのぅ~」
 ナルヤたちが呆然としていると、好奇心とおせっかいからか周囲にいた転移者たちがあれこれと事情を聞かせてくる。
 話をまとめると、どうやら千日ごとに日本とこの異世界を繋ぐ穴は誰も乗らないような廃線間際の寂れた路線の上に現れるらしい。
 結果、ここに転移してくる人は生活に疲れた人や駆け落ちカップルが多いらしく、こういった禁断の関係も珍しくないということだった。
 役所での登録を終えナズナたちの家へ向かう道中、セリカがさらに自治区について説明をしてくれた。
「遥か昔……転移者のうちの一人が、他の者が慣れない異世界で死んだり、生活に苦しんでいるのを見て心を痛めてな。エルフの国に協力を求め転移者だけの自治区を作ったんだ。そして千日ごとにやってくる転移者のため、とりあえずの生活ができるように住居と支度金の支給、さらに家族形成を容易にすべく……転移者同士なら関係性を問わず結婚できるルールの整備もした」
 まさかのルールにナルヤは驚き声を上げる。
「ええっ? なんで結婚まで……?」
「恐らく……転移してくる者の傾向から、亡くなる人も多かったからだろう」
 その重い言葉に思わず息が詰まる。
「っ……!」
 転移者には生活に疲れた人や駆け落ちカップルが多いと言っていた。
 前者は想像に難くないが、禁断の関係にあるカップルもまた、他の転移者から迫害されこの異世界を心中の地にしてしまったり、離別した末に孤独死してしまうことが多かったらしい。
 自分たちもそうなっていたかもしれないと想像する反面、ナルヤはこのルールを作ってくれた遥か昔の転移者に強く感謝した。
「……立派な人ですね、皆のためにそんなことまで……!」
 真剣なナルヤの声に対し、ナズナの黄色い声が被さるように割り込んでくる。
「そしてそして! ご自身も甥っ子さんと結婚されたらしいんですよ~~! 素敵ですよね!」
(自分のためかーーーーー!)
 思わず脳内でツッコミを入れるが、ふと冷静になり役所での会話を思い出す。
「結婚も……OK……」
 そして同じタイミングで隣を歩いていたミリカも、ボソッと口を開く。
「こど……も……」
 お互いの発言を聞き、思わず二人は顔を見合わせ頬を赤らめる。
 役所で聞いた『ここなら結婚も大丈夫』という言葉は、二人にとって意識せずにはいられないものだった。
 二人はしばし見つめ合っていたが、ナズナののんびりとした声にすぐ我に返る。
「は~い! ここが私とセリカのお家で~す!」

 来たばかりの転移者は自治区の住民に下宿するのが通例らしく、二人はナズナたちの家の屋根裏部屋に住まわせてもらうことになった。
「今日はとっても疲れてると思うので、ゆっくり休んでくださいね~♪」
「本当に、何から何までありがとうございます……!」
 階段を降りる足音が遠のいていくのを聞きながら、部屋の中を見回す。
 決して広いとは言えないが、ベッドやテーブル、照明などの必要最低限の家具は揃っており、生活をするには充分そうだった。
 ナルヤはふと、当たり前に部屋が明るいことに疑問を感じた。
「……この照明どうやってついてるんだ? 電気なんて多分通ってないよな……」
「見てナルにぃ! これ、光る石が入ってる!」
 ミリカが枕元にあるランプのシェードを外してみると、電球にあたる部分には親指大ほどの光る鉱石が入っているのみ。
 部屋を明るくするほどの光量を放つそれは、蓄光のものとはとても思えなかった。
「うおぉ、もしかして魔法のアイテム的なやつか……?」
 驚嘆しながら椅子に座り、ナルヤは天を仰ぐ。
「俺たち、本当に異世界に来たんだなぁ……」
 元いた世界では絶対に存在しない不思議アイテムを見ることで、今一度自分たちが異世界に転移したことを実感する。
「どこか遠くへ行こうとは言ったけど、まさか異世界に来るとはな……」
「うん。私もこんなことになるなんて想像してなかった……」
 そこまで言うと一度言葉を切り、ベッドの上から小首を傾げながら見つめてくる。
「今日から私たち、ここで一緒に暮らせるんだね……ナルにぃ」
「ミリカ……」
 異世界転移は想定外だったが、結果こうして二人で暮らすことができる。
 そう考えると心の中が温かいもので満たされていくようだった。
 ミリカがベッドの上から甘えるように両腕を伸ばす。
「ねぇ、ナルにぃ? ギューってして?」
 妹の可愛らしい求愛行動を受け、ナルヤはベッドの上に移動し、そっと彼女の身体を抱きしめてやる。
「やっぱりナルにぃの腕の中が、一番安心する……」
 しばらく無言のまま抱き合い、互いの鼓動と体温を確認し合う。
 こうしてただ抱き合うだけでも、これまではいつバレるかと気が気ではなかった。
 しかし、ここなら思う存分抱きしめ合うことができるんだとナルヤは実感する。
「ここなら、誰にも邪魔されないね……」
 思うことは同じなようで、抱きしめた腕の中から安堵の声が漏れてきた。
「私たち以外にも、同じような人たちがいっぱいいて……」
「うん……」
「結婚だって、ここなら……」
 そう言うと、ミリカは兄の胸からそっと身体を離し顔を上げる。
 さすがに彼女が何を求めているか分からないほど、ナルヤは野暮ではなかった。
 ちゅ……ちゅっ……。
 唇を撫で合うような優しいバードキスで、互いをついばみ続ける。
 しばらくの間部屋の中に響き渡るのは、軽いキスの音と呼吸音だけ。
「ん……んぅっ……ぷぁっ……」
 長いキスの時間が終わり唇と唇が離れると、ミリカは恍惚とした顔で兄を見上げる。
「ねぇナルにぃ……ここでなら私たち、誰にも怒られないんだよね……?」
「うん……」
「そしたら、ね……もう最後まで、できるのかなって……」
 思わず自分でも分かるぐらい大きな音で、ナルヤは生唾を飲み込んだ。
 今までもキスや愛撫は何度かしていた。
 同じ屋根の下で暮らしながら欲望を抑えるというのも無理な話で、親の目を盗んでは身体を触り合い、有り余る性欲を満たしていたのだ。
 しかし、その先に進んだことはまだ一度もなかった。
 それは二人が兄妹だから、もしものことがあった時に責任が取れないから。
 家族や学校、社会の目を気にすると、どうしてもその一歩を踏みきれなかった。
「そうだよな……ここでなら……いいんだよな」
 しかし異世界だから大丈夫と言われても、いざことに及ぼうとするとどうしてもナルヤの身体は震え、一線を越えることをためらってしまう。
 昨晩家を追い出され、今朝両親から逃げてきたばかりのナルヤは、まだ罪悪感も拭いきれておらず、躊躇してしまうのも仕方がないというものだった。
 そんな兄の姿を見て、ミリカはもじもじと身体をよじらせ始める。
「ナルにぃ、私、実はね……昨日の夜からずっと考えてたんだ……」
 ふっと目を逸らしながらも、そのまま言葉を続ける。
「家を出たら、今度こそナルにぃと……するんだろうなって……」
 視線を逸らしたまま、顔を真っ赤にしているミリカ。
 駆け落ちの最中にそんな期待をしていた妹に、ナルヤの最後の理性が弾け飛ぶ。
「っ……! ミリカ……!」
 再びぎゅっと彼女を抱きしめると、震えそうになる手を必死にコントロールし、そのままそっとベッドの上へと身体を横たえる。
「んっ……ナルにぃ……もっかい、キスしてぇ……」
 求められるがままに唇を塞ぐと、再び熱いキスを交わす。
 それは先ほどまでの可愛いものとは違う、より深い大人のキス。
 ちゅっ、んちゅっ、ぬるっ、ちゅるっ……。
 そして理性のたがが外れたナルヤの手は、そのままミリカの制服の中へと突っ込まれ、ブラの上からゆっくりとたわわなおっぱいを揉みしだいた。
「んんぁっ……!」
 すでに熱を持っていた乳房はすぐに反応をし、ブラの上からでも分かるぐらいに乳首が盛り上がり始める。
「ふっ、んんっ、ふぅっ、んぁっ……!」
 キスで口を塞がれ声を出すことは叶わないが、荒い吐息が部屋中に響く。
 家で隠れて互いを弄り合っていた時は、万が一にも親にバレるわけにはいかず鼻息一つすら必死に堪えていたのを思い出す。
 ここなら――この部屋はナズナたちの家から間借りしてるとはいえ――愛する人の愛撫に声を上げることだって許されるという事実が二人の愛情を加速させた。
「はぁ、はぁっ、ミリカっ…… 大好きだっ……!」
「あぁっ、はぁっ……! わ、私もっ……好きっ……大好きだよナルにぃ……っ!」
 熱に浮かされたように見つめ合った後、ナルヤはそっとミリカの制服に手をかける。
「ミリカ……服、脱がせるぞ……」
「ん……」
 リボンをほどき、シャツのボタンを外し、丁寧に制服を脱がせていく。
 しっとり汗ばんだ肌が露わになるたびに溜め込んでいた熱がむわっと解放され、そしてとうとう下着だけの姿になったミリカがぽそりと呟いた。
「なんか、いつもより恥ずかしい……」
 もじもじと太ももを擦り合わせ、呼吸を繰り返すたびにブラに包まれた胸が誘うように上下に動く。
 その蠱惑的な姿に、ナルヤは思わず吸い寄せられるように首元へキスをすると、そのまま舌先で鎖骨を舐め上げた。
「きゃっ、ナルにぃだめ、汗臭いかもっ……」
「そんなの気にならないから……」
 ミリカの抗議などどこ吹く風で、舌と両手を使いその身体を愛撫し続ける。
 首から鎖骨、鎖骨から腋へと唇を這わせていくと、ナルヤはそのまま両手を背中側に回し、ブラのホックを外しにかかる。
 数回の試行の後、無事拘束が外れると、解放された乳房がこぼれる。
 薄暗い明かりの下で露わになった胸は、そのボリュームも相まって綺麗な影を身体に落とし込んでいて、なんだか随分と大人びた印象を受けた。
「ミリカ、今日すごくいやらしい……」
「っ……! ば、ばかぁ……言わないでよぉ……」
 今まで見たことがないぐらい張り詰めた乳房にそっと手を伸ばすと、今度は直接薄ピンクの突起物をコリコリと弄る。
「んっ、んんっ……」
 敏感な乳首は、軽く弄られるだけでも逐一体をビクビクと震えさせてしまう。
 円を描くように転がし、たまに優しくつまみ人差し指で擦ってやると、跳ねるように腰を浮かせるミリカ。
「あっ……ふぁっ……! やぁんっ……!」
 おっぱいの感触とその反応をナルヤが楽しんでいると、徐々にミリカの呼吸音は荒く大きくなり、限界が近づく。
「あ、はぁっ……ナルにぃっ、なんか今日、も……ダメぇ……」
 胸を弄られているだけにもかかわらず身体の奥底から快楽がせり上がる感覚に、ミリカは慌てて声をかけるが、ナルヤの手は止まることを知らない。
 耳の裏を舌先で舐め上げられ、同時に両乳首をぐりぐりと押された瞬間、ミリカの身体は軽く絶頂を迎えてしまった。
「あっ、んぁっ……んんぁっ……!」
 全身を襲う快楽に身をよじりながら、なんとか大きな声が出るのを我慢する。
 腕の中で思いきり身体をヒクつかせる妹の姿に、ナルヤは慌てて愛撫の手を止めた。
 兄をじっと見つめ、瞳を潤ませて泣きそうな声を上げるミリカ。
「ば、ばかぁ……イッちゃった……おっぱいだけなのに……」
 恥ずかしそうに腰をくねらせながら語尾を濁らせるその様に、ナルヤはごくりと生唾を飲み込むと震える太ももに両手で触れる。
「脱がすよ、ミリカ……」
 腰を浮かさせてショーツを下ろすと、まだ触れてもいないそこは汗ではない液体がうっすらと糸を引き、光を反射していた。
 濡れそぼった肉の狭間に触れようとすると、ミリカがその手を止める。
「私ばっかり恥ずかしいよ……ナルにぃも脱いで……?」
 そう言うと、身体をナルヤの方に傾け、制服に手をかける。
 一刻も早く先に進みたいナルヤはもどかしい気持ちで、一つ一つボタンを外していく妹を見ながら、息を荒げていく。
「ミリカ……早く……」
 そしてシャツを脱がされると、辛抱できなくなり自分で一気にズボンとパンツをずり下ろした。
「きゃっ……!」
 唐突にぶるんっと躍り出る肉棒に、思わず驚きの声が上がる。
 実家の部屋で互いを弄り合っていた時よりも遥かに膨れ上がったペニスに、ミリカはのぼせたような表情でそっと指を這わせる。
「……すごい、ナルにぃの……いつもよりおっきく見える……」
 すべすべとした指で亀頭に触れられた瞬間、ナルヤの腰に電流が走る。
「つっ……! ミリカ……!」 
 これまでも何度か触られているのに、一線を越えるんだという興奮も相まってか、刺激が一層強く感じてしまっている。
「ナルにぃ、先っぽ好きだよね……気持ちいい……?」
 亀頭をゆっくりと上下に擦られるたび、ビリビリとした快感が襲ってきて、思わず自ら腰を動かしてしまう。
 その様子に気をよくしたミリカが肉棒全体を掴み、さらにその手を速めようとする。
「うぁっ……! ちょっ、待てってミリカ……!」
 いつもより敏感になっているペニスの感覚に、ナルヤは慌てて妹を止めた。
「お、俺のはいいからっ……! もっとミリカのこと、触らせて……」
 そのまま攻守交替し、汗でぴったりと密着した太ももの間に手を忍ばせると、ミリカが軽く足を開いた。
「い、いいよ……ナルにぃ……触って……?」
 ナルヤが秘部の中央に指を添わせ、硬く隆起した陰核をすりすりと撫でると、再び強烈な快楽の波がミリカを襲う。
「んっ……あ、ふぁっ……! はぁぅ……っ!」
 ナルヤは今度は夢中になりすぎないようにと、ミリカの様子を窺いながら徐々に指で撫でる範囲を下げていく。
 そして膣の入り口に到達したところで、おそるおそる中指をあてがった。
「指、入れるぞ……」
 これまで何度か触り合いをしてきたものの、指を入れることはしてこなかった。
 処女膜を破るかもという不安もあったが、ミリカの方はクリトリスだけでイッてしまうことがほとんどだったから、ここまで到達する前に終わってしまっていたのだ。
 ミリカが頷くのを確認し、中指を第二関節まで入れる。
 くぷっ……にゅぐぐ……。
「んっ……! ん……くぅ……っ……」
 ぬっとりとした肉の壁がナルヤの指に絡みつき、この中にペニスを挿れたらどれだけ気持ちいいのかと想像をかき立てる。
「ミリカ、痛くないか……?」
「だい……じょぶ……だけど、変な感じ……何か入ってる感じがする……」
 実際に入ってるのだから当然だが、ミリカにとっては初めての異物で違和感が気になってしまう。
 しかし充分に濡れていることもあり指を動かすことはできるため、ゆっくりと出し入れし、中の肉壁を捏ねていく。
 にゅくっ……ぬるっ……にゅぐっ……。
「ん……ふぅっ……っあ……! あ……そこっ、気持ちいいかも……」
「ここか? Gスポットってやつかな……?」
 そのままつぶつぶとした部位をこすってやるとミリカの腰が小さく跳ねる。
 反応のいい様子から、どうにかもっと気持ちよくさせようと、ナルヤはもう一方の手でクリトリスを擦って刺激する。
 くりゅっ、にゅぐっ、ちゅくっ、くりっ……。
「んんっ、ナルにぃっ……! 一緒にしたら……あ、ふぁ、あぁっ……!」
 すると、突如膣奥からぬるりと愛液が溢れ出た。
「んぁっ……? ぁ……はぁっ……今の、何ぃ……?」
 初めての軽い中イキに、ミリカ自身はよく分かっていなかったものの、身体の方はしっかりと準備を整えつつあった。
 ナルヤの方はといえば、妹のいやらしい反応と、膣内の感触を知ってしまったことでもはや我慢の限界になっていた。
「ミリカ……俺、もう……」
 切羽詰まっている兄の様子に、ミリカも察して頷く。
 駆け落ちをした時から、ナルヤと結ばれることを想定していたミリカ。
 想像していたよりずっと色々なことが起きたが、今二人は裸で向かい合い、互いのあそこはいつ挿れても挿れられてもいいように準備が整っている。
 見つめ合う二人の心臓の鼓動が加速していき、同様に距離が近づいていく。
「んっ……」
 そっとキスをすると、そのままミリカの身体に覆いかぶさる。
「俺たち……ここでなら許されるから……今度こそ、一つになろう」
 ミリカはそんな本気の告白を前にふわりと微笑むと、ゆっくりと頷いた。
「うん、勿論……私も、ナルにぃと一緒になりたい。だから……来て?」
 そっと両腕を、ハグするかのように兄へと伸ばす。
「いくぞ、ミリカ……」
 ぐっちょりと濡れそぼっている花弁へと、そっと亀頭の先端をあてがう。
 くちゅっ……。
 先端がそっと触れた瞬間、陰部同士が触れ合ったごく狭い面積から強烈な刺激が流れると、二人の腰がビクンと跳ね上がった。
「「つぅっ……!」」
 ただ触れただけでこんなに気持ちいいのに、もっと膣内へと入ってしまったら、どんなことになるのだろうか。
 そんな興味と期待の入り混じった感情が、二人の鼓動をさらに加速させ、腰を前へと押し進めさせる。
「こ、このまま挿れるから……」
「うん、うん……!」
 ナルヤが意を決して腰を前へと押し出すと、秘裂に押し当てられ、表面を滑っていただけだった亀頭が、ゆっくりと膣内へ潜り込んでいく。
 ぬちゅぅ……ぐちぃっ……。
「ひっ……!」
 まだ亀頭だけだというのに、ミリカが小さく悲鳴を上げた。
 だがここでつらそうな表情を浮かべては、兄が行為を中断してしまうのではないかと、必死に笑顔を浮かべるように努力する。
「っ……んく……うっ……!」
 しかしさすがにその痛みに耐える姿は隠し通せなかったのか、ナルヤが一度腰の動きを止めると、心配そうに話しかけてきた。
「ミリカ、だ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫……ナルにぃと繋がれて嬉しいからっ、だから、最後まで……」
 痛みに耐えながらそう言い繕うと、どうにかにっこりと微笑む。
「分かった、無理そうだったらちゃんと言うんだぞ……」
 ミリカの反応を窺いながらじわじわとと膣内を分け入っていくと――
 ぷつっ……ぷちぷちっ……。
「っ……! ふぇぇぇぇっ……いたいぃぃ~~~~……っ!」
 処女膜が引き裂かれ、先ほどまで笑顔で受け入れてくれたミリカが、ついに取り繕うこともできずに泣き出した。
「ミ、ミリカっ?」
 慌てて腰を引こうとするナルヤの腕を掴み必死に繋ぎ止めるミリカ。
「ぐすっ……ダメ……抜いちゃやだぁ……!」
 そう言いながらも涙を流しているのだから、これ以上続けられるはずもない。
「でも痛いんだろ……?」
「痛いけど……ぐすっ……全部挿れてほしいの……っ」
 駄々っ子のように泣くミリカに折れてさらに少しだけ奥へと進む。
「ひぐっ……ううっ……おっきすぎぃ……バカにぃぃ~~……!」 
 大きいと言われることは満更でもないが、本気で痛そうな様子を見て、さすがにこれは無理だとナルヤは腰を止めた。
 掴んだ腕を揺らし挿入を急かすミリカを見下ろす。
「ミリカがそんなガチ泣きするの、久々に見たな……」
 大粒の涙をこぼしながら我儘を言う姿はなんだか懐かしく、可愛らしくも思えてくる。
「ふぇ……ひっく……ナルにぃのバカ……笑ってないで挿れてよぉ……」
 子供の頃のような泣き方をするミリカの頭を撫で、ナルヤは一つ提案をする。
「じゃあ今日は挿れるだけのところまでするから……そこまで頑張れるか?」
「うん……ぐすっ……」
 兄の真剣な表情に、ミリカもボロボロの顔でこくりと頷く。
 涙を拭ってやり、少しずつ挿入を再開する。
 ずっ……ずずっ……。
「んっ……ひぅっ……」
 ミリカの反応を窺いながらゆっくりと膣内を分け入ってくる陰茎。
 自分の膣内に侵入してくる異物による痛み。
 しかしそれが最愛の兄のものだという喜びが、ミリカの全身に満ちてゆく。
 ナルヤは少しでもミリカの痛みを和らげられるよう様子を見ながら挿入を進め、何度も声をかけ軽いキスを繰り返す。
 どれほどの時間をかけたのか、ナルヤが荒い吐息をつくのと同時に、ミリカの膣奥がぐりっと押し上げられた。
「ミリカ、よく頑張ったな、最後まで入ったぞ……」
 それがペニスによる膣奥への圧迫だというのを、その言葉を聞いて初めて気付く。
「は、入ったんだ……全部……」
 肩で息をするミリカの身体をそっとナルヤが抱きしめる。
「あぁ、俺たち、初めて一つになれたんだ……!」
 耳元でそう囁く言葉に、未だ下腹部からはズキズキとした痛みが響いてくるが、同時に全身を多幸感が包み込んでいく。
「う、嬉しい……やっと、やっとナルにぃと一つに……んっ……」
 繋がり合ったまま抱きしめ合い、二人は恋人としてようやく一つになれたという事実を噛みしめる。
 どれほどの間そうしていたのか、ミリカはそっとナルヤの耳元で囁く。
「ナルにぃ、まだイッてないよね……? 最後までしていいよ……?」
 その気遣いに感動しつつ、ナルヤは躊躇していた。
 挿れたばかりの時よりは落ち着いたようだが、ちょっとペニスを動かすだけでも痛むようでどうしても気にかかる。
「さっきも言っただろ、今日は挿れるとこまでだって」
「でも……! もう大丈夫だから……た、多分……」
 本当に痛かったのだろう、素直に尻すぼみになっていくミリカの声に思わず笑ってしまう。
「いいんだよ。まだまだ明日だって明後日だって、時間はあるから」
「そっか……そうだよね……」
 そう言って微笑むナルヤの言葉に納得したのか、ミリカも表情を和らげた。
「それじゃあ、抜くぞ……」
「うんっ、あっ……ひぅっ……!」
 勃起した肉棒が陰部から引き抜かれると、ミリカは一瞬顔をしかめ痛みを耐える。
 ナルヤは破瓜の血と愛液に濡れたヴァギナと引き抜いたペニスを拭きながら、あやすようにミリカに話しかける。
「俺、イケはしなかったけど、ミリカと繋がれて……今までで一番幸せかもしれない」
「そっ、それは私もっ! ちょっと痛かったけど……やっと私、身体まで全部ナルにぃのものになれたんだなって……!」
 そこまで言うと自分が恥ずかしいことを言っているのに気付いたのか、ミリカは赤面しながら俯いてしまう。
 朝から始発に乗り駆け落ちし、気付けば異世界に転移していた二人。
 語りきれないほど色々なことがあった一日だが、その中でも今、初めて一つになれたこの瞬間は二人にとって何よりも忘れられない大切なものだった。
「ナルにぃ、私……今、幸せ……」
 幸せそうにナルヤの肩に寄りかかってきたミリカだが、ここまでの緊張の糸が切れてしまったのか、気を抜けば寝てしまいそうだった。
「あぁ、俺も幸せだよ。だから今日はもう寝ようか……」
 そう言ってミリカの身体に毛布をかけると、一緒に横になろうとしたところで、ナルヤはふと身体を起こして立ち上がる。
「ふぇ……ナルにぃ……?」
「あ、ミリカは先に寝てていいよ。俺ちょっと寝る前にトイレ行ってくる」
 寝ぼけ眼で見上げるミリカにそう声をかけ、そそくさと屋根裏部屋を出てトイレへと急ぎ移動するとナルヤは慌てながらパンツをずり下ろした。
 するとそこから飛び出すのは、未だガチガチに勃起したままのペニス。
「くっ……俺もそりゃ……最後までしたかったけど……!」
 トイレにて深夜、一人限界まで高まった性欲を処理するナルヤの独り言が悲しく響くのであった。

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