【2020年10月17日】

原作:サークル アットホーム酒家 たくのみ『援助交配 夢の亜人少女ハーレム』葉原鉄 プロローグ&第一章

プロローグ とある学園の日常
 二年四組に息づまる空気が充満していた。
 教室にいるのは男子のみ。登校にはまだ早い時刻だが眠たげにしている者はいない。だれもが成長途上の若々しい顔を引き締め、で真剣に黒板を眺めていた。
 ――都立方舟学園中等部二年四組女子人気投票。
 アイリス、正正一。※造字
 イージス、正一一一。
 ウルスラ、正一。
 エリオ、正正。
 開票作業なかばにして二年四組男子の総数を超える票が集まっている。他クラスや上下級生からの投票だろう。
 二年四組の女子は全校生徒の注目を集めてやまない。
 より正確には、たった四人の美少女が思春期の男子を虜にしているのだ。
「やっぱりこの四人の勝負になるよなぁ」
「不可抗力だよね……」
「俺、このクラスでよかった」
 男子一同それぞれにお目当ての女子を想って、恋慕の吐息を漏らす。
 かか、と楽しげな笑い声が響いた。
 声変わりの時期の少年たちに混じって、その声はひときわ甲高い。
「小童が集まってなにをしているかと思えば、一丁前にメスを値踏みとはのう」
 全生徒の視線が最後列に集中する。
 それまで気づく者はひとりもいなかった。男子しかいないはずの教室に、いつの間にか女子が混ざっていることに。
 スラリとした脚を机に放り出し、尊大な微笑でふんぞり返る少女。
 小麦色の健康的な肌のためか、銀色に輝く長い髪のためか、年齢不相応な傲岸さが不思議と様になる。あるいは側頭部から伸びた鋭い二本角のためだろうか。
「どうした、なにを呆けておる? ドラゴンの長たるウルスラ・ア・ズライグが命じる、つづけろ。くだらん授業よりよっぽど興味深い」
「いいんですか……?」
 教壇のクラス委員が畏縮して顔色を窺う。
 秘密裏の女子人気投票など当の女子に怒られてしかるべき企画だ。とくにウルスラは渦中のトップ4であり、同級生ながらドラゴンの皇。逆鱗に触れれば炎の一吹きで男子一同が消し炭にされてしまう。
「かかっ、競い奪うは生物本来の姿じゃろう。オスの心を奪うもメスの器量。ゆえに、ほれ、つづけよ」
「は、はあ、では……あ、ウルスラ・ア・ズライグ、一票」
「ほう、なるほど――」
 ウルスラは席を立ち、廊下側最前列の机に腰を下ろした。
 突如机を奪われた男子はウルスラの端整な顔をおそるおそる見あげる。
「あ、あの……なにか……」
「儂のどこがそんなに気に入った?」
「え、えええええッ……? な、なんで僕が入れたって……」
「人間は感覚が鈍いのう、紙切れから香る体臭もかぎ分けられんのか」
 ニヤニヤしながらの発言に教室が凍りつく。
 匿名性に立脚していた安心感が奪われてしまった。
「どこが気に入ったのじゃ? 顔か? 胸か? 腹か? それとも腹の下の……」
「あ、脚! 脚が綺麗だなって思ってました!」
「ほう、脚か。地を踏みしめ蹴りだすためのものがそんなにお好みか」
 あからさまに脚を組んで見せるウルスラ。男子が顔を真っ赤にしてうつむくのを見て、獲物を弄ぶ猫のごとく獰猛に笑う。
 彼女がクラス委員に顎をしゃくって促し、開票作業が再開した。
 手製の投票用紙が開かれるたびに個人情報が晒される処刑タイムだった。
「アイリス・ティア・エーデルリンド、一票」
「ふむ、そこの貴様。あの耳長の姫のどこに惹かれた?」
「え、えっと……このあいだ廊下ですれ違ったとき、笑顔で挨拶してくれて……気さくでお行儀よくて、髪からすっげぇいい匂いがして……」
「たしかに可憐な花のような香りがするが、アレはアレでなかなかどうして、食肉花のような気性を隠し持っておるぞ?」
「イージス・ティア・エーデルリンド、一票」
「でかい方の耳長か。そこの短身の眼鏡、言え」
「は、はい! イージスさんは胸がおっきいし、背が高くてスタイルいいし、素っ気なくてニコリともしないところもクールでかっこいいし、あと胸デカいし、アイリスさんと一緒にいると絵になるし胸が大きいのが好きです!」
「かかっ、わかりやすい! ま、あの愛想なしのどこに男が惹かれるかと言えば、一も二もなく乳じゃろうな――」
 ウルスラは目を細め、教室のドアを見据えた。
「のう、乳デカ女」
 指をすっと横に滑らせれば、ドアがひとりでに開かれる。
 教室の空気がますます凍りつく。
 廊下には金髪耳長のエルフ少女がふたり立っていた。
「みなさん、おはようございます」
 花開くように笑う、華奢で上品な姫君――アイリス。
「下劣な物言いだな、俗悪なトカゲめ」
 姫君を守るべく一歩先んじる豊乳の女騎士――イージス。
 体つきこそ正反対だが、どちらも顔立ちは恐ろしく繊細で美しい。エルフ特有のガラス細工のように透明感のある造作だ。その美貌も今回ばかりはときめきでなく絶望感をもたらすものだった。
「あ、あの、アイリスさん、イージスさん、これはですね……」
「お邪魔して申し訳ございません。私のことは気にしないでいただければ」
「殿下がそうおっしゃるのでしたら、私も構いません」
「だ、そうだ。そら、つづけるがよい」
 エルフ二名とウルスラが自分の席につく。
 クラス委員は泣きだしそうな顔で開票した。
「エリオット・レウコシア、一票」
「そこのデブ、思いの丈を吐き出せ」
「エ、エエ、エ、エリオちゃんってアイドルやってるじゃないスか! 学校だといつも縮こまってるけど、ライブだとキラッキラに輝いてて、でもどっちも魅力的で、人魚だけどマイエンジェルだと思います……!」
「天使ときたか! どうじゃヒレ娘、アイドルならば言われ慣れておるか?」
 ふたたびウルスラの指先ひとつでドアが開かれた。
 水色髪にヒレ耳の人魚少女が肩を縮め、小柄な体躯をますます小さくする。
「え、えと……あの、どうも、です……」
 顔を真っ赤にしてうつむくエリオの姿に、ふとっちょ男子は失神した。可愛すぎるものを見ると、ひとの心は焼き切れてしまうのだ。
 アイリス、イージス、ウルスラ、エリオ。
 人気の女子が勢揃いし、教室は地獄の様相を呈してきた。
 だが、さいわいというべきか――
「最後の一票です」
 終幕を前にして、黒板に記された票数は四人横並び。
「次で決まるな……だれがもっとも魅惑的なメスであるか」
 竜皇ウルスラは余裕綽々に、しかし挑発の目をほかの女子に向ける。
「くだらない。たかだか数十名の意見などいくらでも偏るだろう」
 騎士イージスは腕組みでたわわな胸を押しあげ、冷淡な視線を竜皇に返した。
「やっぱり人気投票ってドキドキするね……」
 アイドル人魚エリオはうつむきがちだが、興味にヒレ耳をヒクヒクさせる。
 そして。
 エルフの姫アイリスは清楚な微笑をたたえていた。
「だれが勝っても恨みっこなしのオフサイドでお願いしますね」
 言葉と裏腹に、女子間の空気は重みを増して教室全体を覆っていた。
 一触即発の空気のなか、クラス委員が固唾を呑む。
 ゆっくりと、焦らすように、票が開かれていき――すぅ、と息を呑む。
 もはや呑みきれぬものを、クラス委員は声に変えて解き放とうとした。
「こんな朝早くになにをやってるんだ?」
 ガララ、と派手に音を立ててドアが開かれた。
 決戦の場にためらいなく踏みこんできたのはクラス担任の男性教師だった。
 黒縁眼鏡に地味なネクタイが似合う、あまり冴えない青年である。
 彼は黒板を見て、生徒に目をやり、小さくため息をついた。
「没収」
 すべての票を投票箱に入れ直し、まるごとゴミ箱に投下する。
「気をつけろよ。女子に見つかって痛い目を見るのはおまえらだからな」
 はーい、と気のない返事を背に受けて、教師は教室を出た。
 男子は次々と机に突っ伏し、あるいは椅子の背もたれに全体重を預ける。開票の妨害など本来ならブーイングものだが、今回ばかりは救済に等しい。少なくとも男子一同にとっては。
「……あれ、アイリスちゃんたちは?」
 いつの間にか女子勢の姿が見当たらない。
 男子たちはその理由を気にするよりも、解放感に胸を撫で下ろした。
「た、助かったぁ……危なかったぁ……」
「もし最後の一票がウルスラさんに入らなかったら、怒ってなにするかわかったもんじゃないからな……」
「あの先生いつも存在感薄いのに、今日はマジいい仕事したよな」
「えっと、なに先生だっけ」
「鈴木とか山田じゃなかったか?」
「佐藤かも」
 男同士の気楽な談笑が教室を満たした。意中の相手に想いを知られてしまった者も、束の間の平和に身を委ねている。
「結局、最後の一票はだれだったんだ?」
「そりゃアイリスさんだろ。お姫さまだぞ、いまどき貴重な清純無垢だぞ」
「は? 清純無垢ならエリオちゃんも負けてないうえにアイドルですが?」
「むしろガンガン攻めてくるウルスラさんだろ。弄ばれたい……」
「今日もイージスさん大きかったなぁ……」
 先刻のトラブルも喉元過ぎればなんとやら。あるいは逃避のごとく恋バナに耽る男子たちは、しかし。
 がらりとふたたび開かれたドアに視線を集中する。
「失礼いたします。本日より二年四組でお世話になります――」
 彼女は長い黒髪をかすかになびかせて。
 ちらり、と黒板を見て、涼しげな目元を激烈にしかめた。
 そこには男子の愚行がまざまざと残っている。
 女子を鑑賞物扱いで善し悪しを決めつける催し事だ。
「――穢らわしい」
 吐き捨てる声に男子一同は地獄の再来を予感した。


 地獄があれば天国もある。
 時おなじくして保健室に見目麗しい少女たちが集っていた。
 清楚なるエルフの姫君、アイリス。
 冷静沈着なエルフの守護騎士、イージス。
 天衣無縫の竜皇、ウルスラ。
 可憐なアイドル人魚、エリオ。
 高嶺の花が勢揃いだ。男なら見ただけで至福を感じるだろう。
 そこに異物が混ざっていなければ。
「なあ、みんな……今日の援助は控えたほうがよくないか?」
 華やかな園にこぼれる低い声。密集した美少女たちのあいだから突き出す頭は、紛れもなく男のものだ。
 つい先ほど二年四組の人気投票を潰した担任教師そのひとである。
 男らしく厚みのある体は、あろうことか――教師には許されざることであり、男子生徒からは嫉妬と羨望と敵意の目を向けられることだろうが――教え子の少女たちに密着状態で絡みつかれていた。
「逢い引きの場に教え子がいて気後れとは、肝の小さい公僕じゃのう」
 竜皇ウルスラは背伸びをし、教師の太い顎に甘い吐息を吐きかける。
「人除けの結界を張っているので心配は無用だ、教諭」
 騎士イージスは後ろから抱きつき、年齢不相応な巨乳を背に押しつける。
「コーチ、ドキドキしてる……本当はボクたちに援助したくて仕方ないんだね……」
 人魚エリオはヒレ耳を胸板に当て、恥ずかしげに頬を染める。
 そしてエルフの姫君アイリスは。
 教師の股のこわばりを、ズボン越しにか細い両手で優しく揉みあげていた。
「不安なんて感じなくていいんです……だってこれは、種の未来を救うための立派な支援活動なんですから」
 ハチミツのように甘い目つきだった。人形のように整った童顔でとろけるようにほほ笑み、無邪気に誘惑する。もちろんそれはクラスメイトたちが見たことのない表情だし、男の逸物をにぎにぎする様など想像を絶することだろう。
「ちょっ、おぉ、アイリス、待ってくれ……!」
「いつものように援助してください……私たちのなかに先生の熱いものを」
「おぬしもしたいのじゃろう、儂らのこの身に濃い援助を」
「そのために今日は朝から都合をつけてもらったのだからな……」
「コーチ……ホームルームがはじまる前に……ね?」
 アイリスにつづいて、ほかの三人の手が教師の股ぐらに群がる。手早くファスナーが降ろされ、逸物が引きずり出された。
 教師の股ぐらは言い訳できないほど隆々と屹立している。
 はぁ、と少女たちは口々に息をついた。その肉棒がどれほどの快楽をもたらすのか、知るがゆえの甘いため息である。
 じかに触れるや、少女たちの手つきは積極的になっていく。
 愛しげに撫で、悪戯っぽく突っつき、大胆に握り、怖々とさする。
「くぅ……みんな、俺は……うぅ、ああッ!」
 教師の言葉は意味をなす前に愉悦のうめきへと変化した。
 言い訳不能の淫行だった。ひとまわり年下の教え子に性器を弄ばれて、股ぐらから全身へと熱が広がる。男の本能が罪悪感を塗り潰していく。
 だとしても、実のところ、この淫行は許されてしかるべきものだ。彼女たちが自分から望んでいるから、などという言い逃れではない。特例をもって法的に許可されている立派な援助行為である。
「だれから援助してくれますか、先生」
 王女アイリスのささやきに触発され、彼は教師であることを捨てた。
 目の前にいるのはもう教え子であって教え子ではない。体の芯から子種を求めてやまない一人前のメスである。
 肉欲には肉欲で応えるのがオスの役目だ。

 魔術的な結界に守られた保健室は背徳と淫奔の舞台となった。
 一匹の獣と化した男が禁断の青い果実を味わいつくす。
 清楚な姫君アイリスは正常位で、小さな唇と舌をしゃぶりながら。
「んっ、あむっ♡ 先生っ、ちゅっ♡ んんーッ、せんせえっ……♡」
 奔放な竜皇ウルスラは後背位で、獣のように荒々しく。
「そうじゃっ、あひっ♡ 食い殺すつもりで抱けッ……♡」
 小柄な人魚エリオは対面で抱きあげ、透きとおるような喘ぎを間近で聞く。
「あんっ♡ あぁー♡ コーチすごいよっ、ボクもう、もう……♡」
 すこし疲れたところで、騎士イージスが騎乗位で腰を振ってきた。
「好きな、ときにッ、アッ♡ 出してくれ、ぁあッ……♡ 私のなかに……♡」
 乱交だった。
 淫行だった。
 夢中になっていた。
 授業中はけっして見せない顔。ほかのだれにも聞かせない声。何者も触れることを許されない素肌。熱くとろけた情熱的な粘膜。それらすべて《援助》の名目があれば好きなだけ我が物にできる。
「イクぞッ、出るッ、出す……!」
 獣はオスの歓喜の果てに射精した。もちろん彼女らの求めるまま子宮に注ぎこむ。避妊具も用いない生中出しというやつだ。
 国が許可し、推奨している種付け行為である。
(本当は教師にあるまじき行為なのに……!)
 どうしようもなく幸せを感じてしまうのは男の性と言うべきか。快楽の余韻で脱力している少女たちを見ると、なおさら充実感を覚えてしまう。
 絶頂後の弛緩した空気は、しかし。
 直後に破断した。
 少女たちの顔が緊張、あるいは驚愕に一変したのだ。
「人除けの結界が壊れた……!」
「え、なに?」
 困惑する教師の前でドアが開かれた。
「失礼します」
 慌てて体を離す時間もない。
 念のため引いておいたベッドまわりのカーテンも開かれてしまう。
 目が合った。
 艶やかな黒髪を伸ばした長身の少女である。
 額から伸びた二本の角は鬼族の証。
 大人びたスタイルに紅白の巫女装束を身につけているが、紛れもなく方舟学園の生徒である。正確には今日から生徒になった転校生だ。
「お……桜花?」
 教師は名を呼んだ。
 檻ヶ峰桜花――転校生の資料は担任として当然目を通している。
 だがその名は以前からよく知っているものだ。
 かつて親しくしていた幼い少女の面影が残る端麗な顔は、裸身の女子生徒に囲まれた男性教師を一瞥して、ギ……と、憤激に歪んだ。
「穢れています……!」
「ま、待ってくれ、桜花……!」
 言い訳の余地は与えられなかった。
 まわりの少女らも絶頂の余韻で出遅れてしまう。
 桜花が懐から呪符を取り出し、術を使うほうが一足早い。
「封印!」
 怒気交じりの呪力が教師の股間へと渦巻き、絡みつく。

「な、な、なんじゃこりゃああああッ!」

 この日、ひとりの男性教師は呪術によって射精を禁じられた。
一章 鬼巫女生徒会長の秘密
 俺は私立方舟学園の教師として収入を得ている。
 中等部二年四組の担任として、生徒には誠意ある対応をしてきたつもりだ。
 結果は、なんとなく地味で影が薄い教師という悲しいレッテルである。
 まあ、教師が変に目立っても仕方がない。生徒が健全な人間関係を築くための潤滑油にでもなれれば充分だ。
 ……そんなふうに考えていた俺にとって、頭痛の種はふたつある。
 ひとつは一部生徒との援助行為。
 もうひとつは、檻ヶ峰桜花という少女の動向だ。
 差し当たって問題なのは後者である。
 彼女に対する周囲の評価は転入後すみやかに統一された。
 ――おっかない美人。
 角の生えた鬼だから、というわけではない。
 人間を片手でひねる亜人など枚挙に暇がない。いまどき異種族を過剰に恐れては人権問題にもなるだろう。
 ただただ、檻ヶ峰桜花という個人がおっかないのだ。
 はじまりは転入直後、女子人気投票に参加した男子への説教地獄。
 揺るぎない正論と苛烈な態度はクラスに留まらず、全校生徒に向けられる。
「穢れた風紀を正すには、正せる立場になるしかありません」
 彼女がそう決意したのは転校二日目。
 三日目の昼休みには生徒会に入り、放課後には生徒会長になっていた。元生徒会長は徹底的に論破され、涙ながらに会長の座を譲ったという。
 四日目には教師も泣かした。校長は半泣きで耐えた。
 中学生らしからぬ胆力は鬼の一族を束ねる武門の次期当主ゆえかもしれない。男子平均を上回る長身も威圧感を助長している。
 もはやだれも逆らえない。助言すらできない。
 烈火のごとき鬼の転校生に学園は焼きつくされたのだ。
 ……もっとも、である。
 俺の記憶にある桜花はすこし、いやかなり違う。
 烈火というより、バースデーケーキの小さなロウソク。
 あるいは名前のとおりサクラの花びら。
 少なくとも、小学校のころはそういった可愛らしい印象だった。
 檻ヶ峰家は鬼の一族を束ねる武門の家系だ。広い屋敷には種族を問わず多くの人間が住み込みで雇い入れられている。俺の父親もそのひとりで、家族まとめて世話になっていた時期があった。
 そのときに出会ったのが次期党首である桜花だ。
 比較的年が近いこともあり、俺たちはすぐに仲良くなった。
 俺が成人して家を出てからは会うこともなくなった、けれど――
「おにいちゃん……待って、私もいっしょに……」
 実の兄妹のように懐いてきた女の子のことを忘れたことは一度もない。
 いまでも俺のことを兄のように思ってくれているだろうか。
 俺のことなど忘れて年相応に恋愛などしているのだろうか。
 どちらでもいい。病気もせず元気でいてくれれば、俺のことなんて忘れてくれても構わない――などと殊勝に思っていられたのは先日までのこと。
 ……アイリスたちとの援助、思いっきり見られちゃったからなぁ。
 俺のことを覚えていてくれたのはいいとして、いや覚えているからこそ、そりゃあ怒るだろう。軽蔑もする。ゴキブリ同然の害虫に見えてもおかしくない。
 桜花は外見こそ大人びているが中身は思春期の女の子なのだ。

「でもな、桜花……アレはれっきとした、合法的な援助行為なんだ」
 俺は気まずさを抱えて事情を説明していた。
 ふたりきりの生徒会室。
 ソファに座った俺と、生徒会長の机で書類仕事を片付けている桜花。
 情けないことに、教師である俺のほうが冷や汗にまみれている。
「知っています。多種族化社会の繁殖問題対策として政府が実施している交配マッチングシステムでしょう」
「ああ、それだ。同種間の生殖に問題を抱えている種族に対して、遺伝子や社会性など総合的な審査にパスした人間を《サポーター》として紹介し、繁殖期において援助を行うという正当な目的があってだな」
「本来は生殖可能な男性の存在しないエルフのための施策であったと聞いています」
「ああ……サポーター制ができるまでは、繁殖期のエルフ女性を騙して多人数で暴行を働くなんて事件もあったらしい」
「……穢らわしい」
 ざわり、と空気が毛羽立つ。
 桜花の怒りが黒い波動となって漏れ出している気がした。これも呪力というものだろうか。檻ヶ峰家は符を使った呪術を代々受け継いでいる。次期当主たる桜花はとりわけ強大な力を秘めているらしい。
「だ、だからな、あの行為もけっして無法な行いではなく……」
「学園内での性行為が不埒でないとでも?」
 ぐうの音も出ない。
 いや、出る。出さないといけない。そのために気後れしながらも生徒会室のドアを開いたのだから。
「たしかに校則的にはアウトかもしれないが、仕方のないことなんだ」
「事情はうかがっています。回数をこなさなければならないと」
「そういうことだ……実際、アイリスたちからは不満の声が上がってる」
 エルフの繁殖期は短く、間隔が非常に長い。一度逃せば以降何十年、あるいは何百年先になるかもわからない。おまけにエルフは受精の仕組みが人間と違う。同一の遺伝子情報を長期間子宮に染みこませなければならない。
 繁殖期を迎えたエルフ二名にとって、集中的な繁殖活動は急務なのだ。とりわけ世継ぎの誕生が種の未来につながる次期女王、アイリスにとっては。
「ウルスラなんかはいつ爆発してもおかしくない状態だ」
 ドラゴンは絶大な力を持つ一方で個体数が少ない。先の大戦で多くの同胞を失ったいま、長であるウルスラが子をなすのは大義と言えるだろう。
 ……俺がサポーターに選ばれたのは、複数のエルフを援助可能な精力が評価されたからだという。いずれは一族みんな孕ませるべしとかなんとか。殺す気か。
「エリオの転換も心配だし……」
 人魚はみな等しくメスとして産まれてくる。群れでもっとも魔力の高い個体が成人時にオスへと転換し、ほかのメスに種をつける――のだが。
 エリオは若くして転換期を迎えつつある。魔力の強さのためか、魔力を持たない人間に囲まれて体が勘違いしたのか。理由はともあれ、オス化を止める手段はただひとつ、妊娠して強制的に女の体になることだ。
 以上のように、援助行為は下劣な欲望のためではない。
 俺だって国に選ばれたサポーターとして当然の責務を果たしているだけだ。
 ただ、しかれども。教師として情けない話だが。
「それに俺自身も……言いにくいことなんだが……その……」
 訥々と個人的事情を語った。
 彼女に射精を禁じられて以来、なにがどうなっているのかを。
「……欲求不満で仕事に身が入らない……と」
 桜花は冷たい目で俺の情けない話を要約した。そのとおりです。
 俺だって男である。むしろ普通の男よりもずっと性欲が強い。自慢じゃないがドラゴンの長に目をつけられたぐらいである。
「それをわざわざ直談判しに来るとは、恥ずかしくないんですか、兄さん」
「うぐ……ッ、その……援助はあいつらの種族全体にとっても大事なことで」
「保存容器を介しての精液の受け渡しは許可しているはずです。それで不満と言うならそれは単純に個人の肉欲の問題。論ずるべくもありません」
 額の角もかくやの鋭い舌鋒に、俺はうめくことしかできなかった。
 射精禁止の呪は限定的な状況で解除される。保存容器に対する自慰射精であればいちおう可能ではあるのだが。
 異を唱えているのは俺以上に女性側なのだ。
 ウルスラいわく、出したての熱い種でなければ意味がない。
 アイリスいわく、スポイトで注いでも卵子が反応しない気がする。
 イージスはアイリスの言葉に無言で深くうなずいていた。
 エリオいわく、男性との交配自体に転換を遅らせる作用がある、と。
「すべて憶測です。エリオさんの場合も、遅らせるまでもなく妊娠すればいいだけの話。ゆえにスポイトで充分。論ずるべくもありません」
 桜花は鉄壁だった。
「用が済んだのなら出ていってください。生徒会業務の邪魔です」
「業務と言えば……他の役員は?」
 俺は苦しまぎれに話を逸らした。
 がらんとした生徒会室にほかの生徒はいない。俺のサポーター活動は秘密事項なのでちょうどよいのだが。
「追い出しました。口を開けば気になる異性がどうだのと鬱陶しかったので」
 生徒会長とはいえ一生徒がとんでもないことを言う。
 桜花が烈火のごとき厳格さを発揮するたび、周囲から人が消えていく。そのことを苦にするでもない姿が、俺にはかえってもの悲しげに見えた。
「変わったな、桜花。俺がおまえの家に居候してたときは、もっとこう……」
「昔の話です。いまの私は先祖から受け継がれてきた鬼の力をこの身に降ろす姫巫女。規律と秩序を司る鬼族の当主です」
 彼女が身につけたノースリーブの巫女装束は当主の証。もちろん校則違反ではない。我が校において民族衣装のたぐいは制服の代用品と認められている。
 鬼の長として、生徒会長として、彼女には譲れないものがある。
「性欲や色恋など幼稚な衝動を慮る気はありません」
「……そうか」
 正攻法で説得するのは不可能。となれば、少々ずるい手を使うしかない。
「これはあまり使いたくなかったんだが……」
 俺はおもむろに胸ポケットから水色の宝珠を取り出した。
「なんです?」
「エリオの髪留めだ。なんでも、聞いた音を閉じこめておける機能があるらしい。これは偶然聞こえてしまった、とある部屋の音声だそうだが……」
「音声……? いったいなにを……」
 桜花は想定外の事態に戸惑っているのか、顔から険が抜けていた。呆けていると言ってもいい。ほんのすこし、出会ったころのあどけなさを思い出す表情だ。
 ちょっと胸が痛むけど、俺は宝珠にこめられた音声を再生した。
『あんっ……』
 吐息交じりの甘い声。
『ん……っ、あっ……♡』
『あ……っ』
『あっああッ……んん……っ♡』
 聞いているだけで鼓膜がとろけそうな嬌声だった。
 ちゅく、ちゅく、くちゅ、と粘っこい水音まで流れてくる。
 なにをしているのかは語るまでもない。赤面で凍りついている桜花を見るかぎり、彼女もしっかり理解しているのだろう。
 直後には決定的なセリフが出てきた。
『兄さん……にいさ……んッ、あっ……あっ♡』
 こう言ってはなんだが、幼いころの彼女が懐いてきたときの無警戒な声を思い出す。無垢なだけでは終わらず、その声はさらにヒートアップしていく。
『こんな……っ、自分の指なんかじゃ全然足りない……ッ』
『兄さんのが……奥まで欲しいのにぃ……っ』
『あ……っ♡』
 桜花がプルプルと震えだした。目を見開き、瞳を揺らし、言葉にならないうめき声を舌先で震わせている。
「生徒会長が校内でこういったことをするのは……とか、そんなのは俺が言えたことじゃないんだけど。ただ、抑えられない欲求はだれにでもあるってことで……」
 性欲を抱えながら否定するのも、思春期のひとつのあり方だろう。
 あの小さかった桜花もすっかり年ごろの少女になっちゃったんだなぁ。
 いや感傷に浸ってる場合じゃない。
 スッ……と、桜花が腕を振りあげたのだ。
 ズンッ! 
 殴りつけられた机が一瞬たわむ。強烈な威力に俺は思わず身をすくめた。
「どういうつもりですか……これで私を脅そうとでも……?」
 彼女は憤然と目の前に立ちはだかった。
 立ちのぼる蜃気楼めいた揺らめきは、怒気と呪力がもたらすものか。
「ま……待て待て! そんな悪質な意図はない!」
 交渉材料にする気はあったが、脅しまでする気はない。大差ないかもしれないけれど、俺だって顔馴染みの桜花を苦しめたくはないのだ。
「俺のことを口にしてたことも別に言及する気は……」
「もう黙ってください!」
 うん、いまのは失言だった。年ごろの女の子に悪いことをしたと思う。
 桜花が殺意全開で呪符を構えるのも致し方ないこと。
 無力な俺は反射的に平手を突き出して我が身を守ろうとした。
「そんな玉、兄さんの記憶もろとも完全に封印し……て……」
 俺の手に、なぜかむにっと柔らかな感触があった。
 蜃気楼めいた揺らめきのせいで距離感が狂っていたのだろう。俺が突き出した手は、中学生らしからぬ特大の乳房にずっぷりと埋まっていた。
 すぐに手を引いたが、柔らかな感触は掌中にむんにりと残りつづける。
「すっ、すまん! わざとやったわけ……じゃ……?」
 このまま上に直訴されて懲戒免職か、警察直行で懲役コースか。
 やがて訪れたのは、想定外の三択目だった。
「くっ……う……っ」
 桜花はビクビクと震えるおのが身を必死で抱きしめていた。噛みしめた歯から漏れる声は、録音されていたものとよく似た響き。美しく伸びていた姿勢は崩れ、尻を突き出して媚びるかのようにしなを作る。
 その様子を一言で表すならば――発情。
「だ……だいじょうぶか?」
「触らないでください!」
 俺が伸ばした手は払いのけられたが、そこに力はこもっていない。彼女の手は震えていて、汗ばんで、ほのかに熱かった。
「……鬼の姫巫女の持病のようなものです。周囲の穢れ……とくに淫気を体に取りこんでしまう。それが溜まりすぎるとすこしのきっかけで先ほどのようなことに……」
 そう言えば、姫巫女の体質については居候時に聞いたことがある。
 つまるところ。檻ヶ峰桜花は年ごろの女の子の何倍も何十倍も強烈な性欲に苦しめられている、ということだ。事によっては、俺の欲望より大きいかもしれない。
「じゃあ……俺は部屋を出てるからそのあいだにまた」
「し、しません! このくらい……精神力で抑えこみます! あんなことは、もう二度とは……」
 強がってはいるが、ひどく悲痛な声だった。これまでずっと暴れまわる性欲と必死で戦っていたのだろう。そんな彼女に対し、俺はどうしようもなく卑劣な手段で追いこみをかけようとしていた。
「……すまん桜花」
 背を向けて耐える桜花に、俺は背後から抱きついた。
 え、と彼女が困惑する間に覚悟を決めて、巫女装束の脇から手を差しこむ。ノースリーブの切れこみが深いので、開いているのはちょうど胸の横。
 当然、乳房をむにぃっと揉みあげることになった。
「にっ、兄さん、なにを……!?」
「罵倒なら後でいくらでもしてくれていい。いまはおとなしく、俺に体を預けてくれ……!」
 とは言ったものの、俺も大概追いつめられている。
 桜花のバストは大人顔負けの大きさだ。奥深い柔らかさに指が埋もれ、人肌のぬくもりがじんわりと伝わってきた。理性を揺さぶられ、こちらの体も熱くなってきたが、爆発しそうな本能をねじふせて愛撫に集中する。
 丁寧に全体をさするだけで柔らかに変形して指が食いこんでしまう。
 ていうか、ブラつけてないのか? 和装だからって大胆だな……
「ふっ……んっ♡」
 桜花は随喜の身震いを起こしていた。
 その震えに応じて豊乳が装束の脇からこぼれ出る。
 赤面して言葉も失う桜花に対し、俺はさらなる責めを続行。狙うのは乳房中心の赤い部分。肉量に反して乳首は控えめだが、乳輪はしっかり盛りあがっている。
 くりっ、くりっ、と優しくこねれば、突端も物欲しげに勃起した。
「んんっ、んんっ♡」
 本当にまだまだ序の口程度の愛撫なのだが……淫気のせいにしても感度がいい。よすぎると言ってもいい。男に抗う力はすっかり快楽に溶かされている。俺はたやすく彼女をローテーブルに組み伏せた。
「やっ……やめてください! 兄さんの手を借りる理由なんてありません!」
「周りから性欲を取りこんだってことは、俺のもなんだろ? なら、俺にも責任がある……!」
 たぶん俺の性欲は学園一だ。オークだった祖父から受け継いだ呪いのような本能。人間とオークの血が混じると繁殖力があがるという話もある。
 桜花がその影響を受けているなら、自慰などで収まるはずがない。
「あッ♡」
 俺が剥き出しの乳首に舌を這わせると、桜花の体が浅く反った。芯の通った桃色突起をしゃぶり、転がせば、少女の呼吸は際限なく乱れていく。これまでの援助経験と照らしあわせるかぎり、ちょうどいい頃合いだ。
 袴をまくりあげ、むっちりした太腿のあいだに手を差しこむ。
「責任なんて……ッ、ダメ……兄さん、そこ、は……っ」
 飾り気ゼロのシンプルな白ショーツに指をあてがう。案の定、ぬちゅりと湿りきっていた。優しくさすると、ますますぬめつきが増す。
「ん♡ あッ♡」
 桜花は目を白黒させていた。想定外の快感に翻弄されているのが見ているだけでわかる。これまでずっと自慰しか知らなかったのだから無理もない。
 俺は濡れて引っかかるショーツを横にずらした。
「はっ……ああッ……!」
 愉悦に翻弄されてばかりの彼女に、俺を押しのける力はない。俺の腕に手を添えているが、押し返そうという意志も感じられない。むしろ自分の股に引き寄せようという熱すらある――というのは、俺の考えすぎだろうか。
 ちゅく、と裂け目に指を押し当てる。
 チュクッ、チュクッ、と肉欲の裂け目を上下になぞる。
 コリ、と上端部の硬い豆粒に触れた瞬間、彼女は決壊した。
「~――~~~ッ♡ あッ♡」
 俺が手を離すのと同時に、股から透明な潮が噴き出す。
 桜花は忘我の境地にとろりと呆けた。半開きの口からは悦びの嗚咽が漏れつづける。舌鋒鋭い生徒会長にあるまじき姿だが、とびきり艶っぽく、清々しいほどの解放感すら伝わってきた。
 しばしなにもせずに待つ。桜花には絶頂に浸る時間が必要だ。そうすることで溜めこまれた欲望が抜けていく――と、思う。
「……鬼の姫巫女の体質のことは居候してたときに聞いて知ってるんだ」
 彼女の呼吸が落ち着いてきたころに話かけた。
「本来ひとりで抑えられるものじゃない。溜まった性欲を処理するサポーターを雇うのが普通だって……」
「そんなものに頼っていては当主失格です」
 桜花は立ちあがった。いまだ呼吸は熱を持っているが、言葉には彼女らしい節度が戻っている。
 でもそれは転校してきてからの「彼女らしさ」でしかない。
 俺が知る小さかった桜花とはかけ離れた、彼女らしくない口調。
「当主当主って……自分の立場がそんなに大事か? 俺にはおまえが『理想の当主』になろうと無理して自分を偽ってるようにしか見えない」
「……兄さんは知らないんです」
 厳しげな声がかすかに揺らぐ。
 自分の言葉に興奮したかのように揺り戻して、声が大になっていく。
「母が早逝して……周りがどれだけ私に期待と重圧を押しつけたか……! 唯一の拠り所だった『優しいお兄ちゃん』すら失った私がどうやって生きてきたか……!」
 桜花の言葉は震え、目の端には涙すら浮かんでいた。
「私は一日でも早く立派な大人に……! 厳格な鬼の当主になるしか道がなかったんです……!」
 つまり――すべては自分自身に言い聞かせるためだった。
 攻撃的なまでに厳格な言葉も、他者を寄せつけない態度も。
 桜花はなにも変わってはいなかったんだ。泣きべそをかきながらも俺の後を必死になって追いかけてきたあの頃と。
「……大変なときにそばにいてやれなくて本当にすまなかった」
 俺は心のまま、柔らかな手つきで彼女の頬に触れた。あふれ出る涙を親指でぬぐい、幼子に言い聞かせるように優しく言葉を紡ぐ。
「でも、もうそんなに気を張らなくてもいい。ここいるあいだはまた妹分として……そして大事な教え子として、俺がおまえのことを守ってやれる」
「兄さん……!」
 ぬぐったばかりなのに、大粒の涙が次から次へとこぼれてくる。
 それはたぶん、淫気とはべつに溜まっていたものが解放されている証拠だ。
 押し殺してきた本当の自分を吐き出すための――
「兄さん……ッ!」
「んむッ!?」
 ふいに抱きつかれた。
 たちまち唇を奪われた。
 感極まった桜花は舌までねじこみ、俺の粘膜と唾液を貪りだす。
 桜花の背は高い。成人男性の平均値よりすこし高めの俺とも、背伸びをせずにキスができる。そればかりか、彼女の腕力なら俺の首の骨ぐらいたやすくへし折れるだろう。脅威と言ってもいい状況なのだが……
 力いっぱい抱きしめられても怖いとは思わない。
 俺の体は傷つけたくない、でもどこにも行かせたくない。そんな桜花の必死の気持ちが伝わってくる。
「桜花……こんなことしたらまた……」
「わかってます……ですから……」
 桜花がズボンのベルトに触れてきた。慣れない手つきで金具を外すと、今度はファスナーに指を沿わせる。ためらいがちにつまみを探り当て、降ろしていき――
 ブルンッと勢いよく肉塊が飛び出した。
 呪符がまとわりつき、射精がせき止められた強制禁欲中の逸物が。
「いま、封印を解きます。兄さんの、で……私のなかの穢れを祓う、え、援助を、お願いします……」
「それ……は……」
 どくん、と心臓が跳ねて、大量の血流が股間に流れこむ。ただでさえ限界だった男根が、期待感から痛いほどに張りつめる。
 桜花が指印で念をこめれば、しゅるりと呪符が剥がれ落ちていく。
「……いいのか? 俺で……」
「野暮なことは聞かないでください。私は……兄さんが家にいたころから……」
「……わかった」
 頭の片隅で「おいわかるな」と止める声がした。教師としてどうなんだとか、まだ正式なサポーター契約を結んでないだろとか、相手は妹みたいな女の子だぞとか。
 うるさい。黙れ。ここに来てなにを言う。
 理性や正論はかならずしも救いになるとはかぎらない。感情と感情をぶつけあうことでしか助けられない相手もいるんだ。
 なにより、俺自身がもはや爆発寸前なのである。
 俺は今日、妹のように思っていた少女を、生徒会長を務める教え子を、援助の名の元に抱く。
 罪悪感はあれども止まれなかった。

 桜花は生徒会長専用の椅子に浅く腰を下ろし、脚をM字に開いた。
「痛かったら無理せず言えよ?」
「はい……」
 俺はのしかかるように腰を進め、とろみを垂れ流す秘裂に竿先を押し当てる。
 柔穴は熟しきった果肉のようにたやすく咲き崩れた。
「はっ……♡ あ♡」
 入っていく。すこし力をこめただけで、桜花のなかに。待ち構えていたかのようにトロトロと柔らかな襞肉の隘路に。
 ただ柔らかいだけでなく、激しく絡みついてくる。
 どくん、どくん、と蠢動して、俺のモノにしがみついてくる。
 はっきり言って、つらい。つらすぎる。長いあいだ射精を禁じられて敏感になっている俺に、この刺激は耐えがたい。暴力的な気持ちよさだ……ッ!
 だけどそれは、初めての交合を体験した桜花にしてもおなじこと。
「あ♡ あ……♡ あっ♡」
 熱に浮かされた顔で愉悦に鳴く。もはや当主としても生徒会長としても節度を忘れた表情が、あまりにも色っぽくて。
 俺は白く長い脚をつかんで支えとし、リズミカルに抽送した。
 パンパンッ、パヂュッ、パチュッ、パンッ!
 ピストン運動にともなう音が、ほかの生徒たちよりすこし大きい。尻腿がむっちりと肉づいているためだろう。突くたび沈みこむ柔らかさと、押し返す弾力に、俺の動きが徐々に加速していく。
「あっ♡ あッ♡ はっ♡ あ♡♡」
 それに応じて、ふたつの凶器が恐ろしい振り幅で弾んだ。
 重量感たっぷりに肉を揺らして、初体験とは思えないほど喜悦する。
「あッあ♡ あっ♡」
 開ききった口から濡れた舌が物欲しげに揺れていた。
 俺は吸った。唇を重ね、桜花の味をねっとりと確かめる。
 桜花も自分から舌を絡めてきて俺を味わった。
 もう教師と教え子でも兄と妹でもない。男と女だ。
 ぎゅうっ……と、俺たちは手を握りあった。
 たぶん、気持ちはおなじだったから。
「んっ♡ ふっ♡」
 口の隙間から漏れる喘ぎが媚薬のように俺の脳を染めあげた。
 ラストスパートに入る。ひたすら腰を振り、粘膜と粘膜をぶつけあう。ふたりの快楽を高めあうためにキスをますます深く、粘着質に。
 限界はとっくにきていた。
「もう……出る……ッ!」
「はっ♡ あぁ~――――~~ッッ♡」
 叩きつけ、すべてを解放した。
 ドプッ、びゅくッ、びゅるっびゅるッ! ビュルるルルッ、びゅうぅううーッ!
 溜めこんだ精液が下半身ごと溶けだすような射精だった。
「はっあぁ……っ」
 気持ちよすぎる……! ぜんぜん止まらない……!
 出しても出しても終わらない。脳まで溶けていく。蛇口をひねったかのように噴き出す粘濁で、妹のような女の子の内側を満たしていく。
「はっ♡ んッ♡」
 同時に桜花も長い長い絶頂に達していた。雄汁の熱さに浮かされたかのように、角を突きあげ身悶える。
 幸せそうにうっとりした顔を見ながら、さらに子種を注ぎこんだ。
 俺もさぞかし幸せな顔をしているだろう。快楽に腑抜けた阿呆のような顔。
 どれほど理屈をつけて正当化しようと、この援助行為は結局セックスだ。女のなかで思うまま射精する快楽には逆らえない。
 それどころか、放出が止まってからも余韻が抜けず、阿呆のままでいた。
 ぬぷん、と肉棒が抜け落ちて、ようやくわずかに覚醒する――が。
「兄さん……」
 桜花が姿勢を変えた。
 机に手を突き、丸みを帯びた豊かな尻を押し出してくる。
「私が援助を禁止していたあいだ、ずっと我慢していたんですよね……? なら、きっとまだ満足できてないと思うんです……」
 コプッ、と白濁汁が肉穴から吹きこぼれた。
「兄さんさえよければ……溜めこんでしまった兄さんの穢れ……空っぽになるまで私に……あっ」
 言葉が終わる前に俺は後ろから挿入していた。
「あっ♡ あぁ――~~ッ♡」
 もう言葉を交わす必要さえ感じなかった。
 溜まりに溜まった獣欲を、鬱憤を晴らすように叩きつける。
 パンパン、パンパン、と響く肉音が小気味よい。手加減をする気はない。桜花の恵まれた肉体には本気をぶつけて問題ないはずだ。
「あッ♡ はっ♡」
 実際、桜花は痛がるどころかよがり狂っている。
 反応が大きいと弱点もわかりやすい。どういう角度でどこを責めればいいのか簡単に把握できた。
 膣壁の一部を擦り潰すように角度をつけ、最奥まで突きあげる。
「そこ……やっ……あ……♡ にいさ……あッ♡」
 桜花は乳房を振り乱して背を反らせた。浅い法悦に達し、ビクビクと柔膣を収斂させる。子種を搾り取ろうとする女の本能的な蠕動だ。
「くッ……うぅ、まだ、だ……!」
「ッあ♡ ま、待っ、ぁあー~ッ♡ 私、イッて……♡」
 浅イキで終わらせるなんて、もったいない。
 桜花にはもっと知ってほしいんだ。男女で交わることの本当の悦びを。
 そうして乱れゆく姿をもっと見てみたい。
 一心不乱に突いた。
 柔腰を引き寄せながら、腰を叩きつけた。
 出しては入れるだけの単純動作だが、強弱の角度調整を微妙に入れるだけで、快感は何倍にも高まっていく。桜花の浅イキに浅イキが重なっていく。
「あっ♡ んっ♡ ん♡ ッあっ♡ あんっ♡」
 後背位で顔は見えずとも、声のとろけ具合で表情の崩れかたも想像がついた。肉穴の水音もますます大きく。膣肉の蠢きは千々に乱れて、男根に噛みつくかのよう。欲しくて欲しくたまらないと彼女の全身が訴えている。
 窓の外からは部活動に勤しむ生徒たちの声が聞こえてきた。
 部屋に響く桜花の嬌声がそれらと交じり、背徳感を加速させる。
 生徒の模範であるべき教師と生徒会長が、欲望のままに校内でおたがいの体を求めあう。こんな行為は、桜花の言葉を借りれば「穢れて」いるのだろう。
 ただ……もうおたがいに理解していた。
 ――こんなことしてはいけない。
 そう思えば思うほど、穢れれば穢れるほど、最高に気持ちいい……!
「桜花、一緒に……!」
「あぁっ♡ 兄さんと、いっしょ……ッ♡」
 俺たちは想いをこめて腰をぶつけあった。
 即座に放つ。昂揚と快感の頂点で煮詰まった欲望のエキスを。
「あぁー~~ッ♡ イッく……んあッ、はあぁあ~――――~~~ッ♡」
 桜花は白い肌を赤く染めて深い愉悦に打ち震えた。ここぞとばかりに柔壺がうねって、肉棒を咀嚼する。絶頂を彩る最高の刺激だった。いくらでも射精できると思えたし、実際に驚くほど大量の粘汁が出つづけた。
 ふたりでしばし肉の悦びに浸り、熱い吐息をくり返す。
 放出が止まっても、執拗に腰と腰を擦りつけあった。
「桜花……」
「兄さん……」
 呼びあう理由はひとつだ。
 結局、俺たちはこのあと学校が閉まるまでおたがいの体を貪りあった。
 暗くなるまで遊びまわった子ども時代のように。

 数日後、生徒会長の物腰が柔らかくなったと噂が流れてきた。
 一時は追い出した生徒会の役員たちも呼び戻したらしい。
 俺から見ても、張りつめていたものがゆるんで取っつきやすくなった感がある。厳しくも優しい生徒会長として慕われる日も遠くないだろう。
 援助活動についても態度が一変した。
 淫気を晴らすサポーターとして正式に俺を指名したのだ。もちろんアイリスたちへの援助も許容してくれた――のだが。
「封印していた期間の回数を取り戻すには今週あと八十回は必要ですね」
 恐ろしいことを言いだした。
「迷惑をかけた分、これからは兄さんの援助は私がきっちり管理しますから安心してください」
 真面目な者ほど極端から極端に走りやすい。
 俺は桜花の管理下で週八十回の援助を成し遂げ、軽く腰を痛めたりもした。

 その後もいろいろなことがあった。
 修学旅行でも一悶着、いや二悶着、三悶着ほどあったか。
 ともあれ、桜花もほかの娘も援助行為に積極的だ。俺も大いに張り切って応じてしまう。一教師としては褒められたことではないかもしれないが――それでも事実として、援助交配を通じてしか生徒を救えないこともある。
 なにより、ひとりの男として求めずにはいられない。
 見目麗しい美少女との甘く熱烈なひとときを。
 尽きることなき獣欲を「オークの血を引いているから」と言い逃れるのは卑怯だ。決断しているのも流されているのも俺の意志だから。
 俺は俺の意志で清らかなお姫さまと睦み、気高い騎士を犯し、傲岸な竜皇と貪りあい、可憐なアイドル人魚に精を注ぎ、妹のような鬼巫女を抱いている。
 もし他者に責められることがあれば、堂々と非難されよう。
 ただ――
 オーク由来の性欲もいまだどろどろと俺の内側で渦巻いている。
 ときに俺の意志を黒く染めあげるほどに。

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