【2021年3月5日】

うちのメイドの第一章

うちのメイドはなんでもできる。―私の可愛すぎるご主人様― 

わかつきひかる 

第一章先行公開です 

プロローグ
 羽住莉緒は困っていた。
「君、捨て猫よね?」
 胸に抱いた子猫に話しかけるが、猫は小さな頭をすりつけて甘えるばかり。
 段ボール箱に入って捨てられていた黒い子猫。かわいくてかわいそうで、つい抱きあげてしまったが、飼えるわけがない。大学の寮住まいなのだから。
 ――ダメ元で寮母さんに頼んでみる? 無理よね。
 猫を段ボール箱に戻して、知らないふりで通り過ぎていけばいい。そして、ジョギングの続きをして、寮に戻ればいい。
 猫がにゃーんと鳴いた。金色の瞳が、莉緒をまっすぐに見つめてくる。
「ごめんね。君は何も悪いことをしてないのにね。人間って勝手だね」
 手のひらに乗る大きさで、しっぽなんて、莉緒の人差し指ほどしかない。温かくて柔らかくて小さくて、ミルクの匂いがした。
 胸の奥がきゅっとなる。
「なんとかするから、待っててね」
 すぅっと息を吸いこむと、競技で鍛えた腹式呼吸で、声をあげた。
「猫いりませんか?」
 道行く人がぎょっとしたように足を止めて莉緒を見る。
 スーツ姿の会社員、犬の散歩をしているおじいさん、ネギとゴボウがはみ出たエコバッグを提げている中年女性。皆、春の夕日に照らされて、くっきりとした黒い影を従えている。
「捨て猫なんです。誰か飼っていただけませんか?」
「ごめんね。犬がいるから飼えないわ。かわいい猫ね」
 おばさんが猫の頭を撫でてから通り過ぎていった。
「猫飼ってください。捨て猫です」
「黒猫かぁ。インスタ映えしないからなぁ。どうせ飼うならSNSでイイネがつく猫がいいな」
「マンションだから無理」
「保健所に電話すればいいんじゃないの?」
「いやそれは……」
 春の強い風に晒されて、猫を抱きしめながら困っていたとき、詰め襟の男子生徒が進み出た。
「僕、飼いたいです」
 育ちのよさそうな少年だった。整った顔立ちに色素の薄いさらさらの髪。垢抜けた雰囲気なのに、どこか純朴で、すれてない感じがする。身長は莉緒よりちょっと低い程度だが、ずっと年下だ。
 莉緒の周囲には、ちょっといないタイプの少年だった。
 ――なんてかわいいの。ウィーン少年合唱団みたい。
 ぼうっと見とれていた莉緒は、彼が手を伸ばしてきてはっとした。思わず渡しそうになったが、猫をきゅっと抱き直す。預けるのはまだ早い。猫が飼える家なのか、確認してからだ。
「飼っていた猫が死んでしまったばかりなんです。いただいてもいいですか?」
「いいけど、お家の方の承諾をいただきたいの」
「承諾はいりません。僕が当主ですから」
「投手? ごめんね。なんのことかわからないの。君のお家に猫を連れていってもいい?」
「はい。どうぞ。来てください」
 二人で肩を並べて歩き出す。
「その制服、黎英よね。やっぱり帝王大とか目指しているの?」
 詰め襟と学帽の鳳凰のエンブレムは、黎英大学附属中等部の学生であることを示している。偏差値七十五以上でないと入学できないと言われている、中高一貫の男子校。帝王大学の合格者数最多を誇る、エリート養成学校だ。
「まだわかりません。入試まであと四年ありますから。お姉さんは北斗体育大学ですか?」
 ――お姉さんですってぇっ!
 きゅんと来たが、平然とした表情を繕う。
「どうしてわかるの?」
「ウエアに書いてあります」
「うん。北体大の三年生。寮住まいでね。困っていたの」
「こちらです」
「へ?」
 黒くて四角い大きな車に案内されて面食らう。センチュリーだ。偉い人でないと乗れない車ではないのか。
「中村さん。お客様です」
「どうぞ」
 黒いスーツの男性が後部座席のドアを開けてくれた。運転手だろうか。執事さんだろうか。革張りのソファに腰を下ろす。
「坊ちゃん。お屋敷でよろしいですか?」
「はい。お願いします」
 センチュリーは滑るように動き出した。身の置き所がない感じがして、後部座席で猫を抱きしめながら身体をすくめる。
 すぐにお屋敷に到着した。
 大学のすぐ近くだ。
 執事さんが車のドアを開けてくれた。
 お姫様になった気分だが、ジョギングウエアにウエストポーチで猫を抱いているなんて、場違いにもほどがある。
 表札には四月一日とある。
「君はわたぬきくんなのね」
「すごい。読める人、めったにいないですよ」
「だってほら、野党の政治家に同じ苗字の人がいるもの。衣替えのことでしょ?綿入れの半纏から綿を抜いて春服にするから綿を抜くっていう」
「その通りです。申し遅れました。僕は四月一日冬馬と言います」
 名前もすごい。トーマなんて外国人のようだ。とんでもなく二次元だ。こんな男の子が実在していたのか。
 門をくぐってお屋敷に入ると、二人のメイドにおじぎされた。
「お帰りなさいませ。坊ちゃん」
 ばあやさんという感じの年配メイドと、四十歳ほどの優しそうなおばさんだ。
 黒のロングワンピースに白いエプロンがステキだった。
 メイドさんは優しげに笑った。
「お客様ですか? お茶の用意をして参ります」
 広くて瀟洒なお屋敷なのに、キャットタワーがあり、猫トイレが置いてある。からっぽの餌皿が寒々しかった。
 猫を飼っていたというのはほんとうらしい。
「すぐ帰ります。おかまいなく」
 莉緒は胸に抱いていた子猫を少年に渡した。
「四月一日くん。この子をよろしくお願いします」
「ありがとうございます」
 少年は笑みを浮かべると、黒猫にずりをした。
 ――ああ、かわいい。四月一日くん、なんてかわいいの!! 美少年に黒猫って、絵になるわぁっ。
「かわいいなぁ。ふわふわだ」
「名前つけていいかな?」
「いいですよ。お姉さん。どんな名前ですか」
「ザンシン。心を残すっていう意味なの」
「わかりました。君はザンシンだ」
「失礼するわね」
「中村さんに車で送らせますよ」
「近いから大丈夫」
「じゃあ、お礼にこれを。あっと、寮住まいですよね。たくさんだと迷惑ですね」
 四月一日少年は花瓶から薔薇の花を一輪取り出すと、莉緒に渡した。
「どうぞ。お礼です」
 顔がかっと赤くなった。
 深紅の薔薇の花を一輪プレゼントするなんて、まるでプロポーズではないか。
 ――この子って、この子ってぇっ! 
 いったいどういう育ち方をすれば、こういう男の子ができるのだろう。ショタキャラのくせに。無自覚イケメンぶりにクラクラする。
 ――ああ、かわいい。すっごくかわいい! 王子様みたいっ。
 莉緒は、緩むを意志の力で引き締めると、薔薇の花を胸に抱いて屋敷を出た。


第1章
「はじめまして。坊ちゃん。莉緒と申します。よろしくお願いします」
 四月一日冬馬は、ばあやと一緒にやってきた新任メイドを見て、どぎまぎしていた。四月一日家のメイドは中年女性が多い。ばあやは技量で選ぶからだ。
 だが、この新任メイドは若くて美人だ。四月一日家伝統のクラシカルなメイド服を、こんなにもおしゃれに着こなす人をはじめて見た。
 すらっとして背が高く、それでいて出るところは出た体形で、メイド服がよく似合う。冷たいほどの美貌をメイドカチューシャが引き立てている。クールで綺麗なお姉さんという感じだった。
「どうかされたのかですか? 坊ちゃん。お顔が赤くていらっしゃいます」
 ばあやが聞いた。
「莉緒さんが綺麗だから、見とれていたんです。これからよろしくお願いします」
 握手しようとして差し出した手は、空をつかんだ。
 メイドはおじぎをして、さりげなく握手を拒んだからだった。
「握手はいやなのかい?」
 ばあやが聞く。
「いえ、そういうわけでは。立場をわきまえているだけです」
「僕は莉緒さんと握手したいんです。ダメですか?」
 ばあやが目で合図をした。莉緒が小さく頷いて、手を差し出してきた。
「よろしくお願いします」
 冬馬は新任メイドの手を握った。小さいが、豆だらけの硬い手だ。
「僕は四月一日冬馬です。世話になります」
「こちらこそよろしくお願いします。誠心誠意お仕えさせていただきます」
 鈴の音とともに、黒猫がやってきた。冬馬の足に頭をスリスリして甘えている。冬馬は猫を抱きあげた。
「ザンシン。いつもかわいいね」
 猫にちゅっとキスをすると、莉緒が驚いたように息を呑み、目を伏せた。
 クールな新任メイドに動揺が走ったことを、冬馬は敏感に感じ取った。
 莉緒の、ほんのりと赤くなったに、記憶を刺激する何かがあった。
「僕、君と、どこかでお逢いしてますよね?」
「…………」
 メイドは否定も肯定もしなかった。目を伏せて黙りこんでいる。勘違いだろうか。記憶力はいいはずなのに、どこで逢ったのか思い出せない。
「あっ。猫にキスなんて、気持ち悪かったですか?」
「いいえ」
「男子校ですし、僕をかまってくれる女の子って、ザンシンぐらいですから」
「制服ではないのですね?」
 クールメイドの顔が聞いた。
「はい。高等部は私服なんです。ザンシンの世話は僕がしています。莉緒さんの部屋に入ってきたときはそっと追い出してあげてくださいね」
「かしこまりました」
「ばあやは腰が痛いから、莉緒さんが助けてあげてください」
「明日から湯治に行きますから、元気になって戻ってきますよ。ばあやがいない間は、秋子さんが通いで来てくれます」
 ばあやが言った。
「下がらせていただきます」
 ばあやとメイドが勉強部屋を出ていった。
 冬馬は目を閉じて考えこんだ。確かに莉緒とはどこかで逢ってる。どうして覚えていないのだろう。
 ――こんなに綺麗な人、一度逢ったら忘れないはずなのに。


 ――あーんっ。冬馬くんっ、かわいい なんてかわいいのっ!! 尊い!
 莉緒はベッドにうつ伏せになってじたばたしていた。メイド部屋なのに、六畳ほどのフローリングの個室で、シャワールームもトイレもある。クローゼットと勉強机に冷蔵庫まである。まるでビジネスホテルの一室だ。大学の寮よりも豪華だった。
 ――どこかでお逢いしてますよね。……だって。きゃーっ。
 ――莉緒さんが綺麗だから、見とれていたんです。……ああああっ。もう、私のほうがドキドキしてるわよっ!
 一年前より人たらしスキルが上がっている。背も伸びている。高等部はしかも計算ではなく天然だ。息をするように甘い言葉を囁くなんて、無自覚イケメンはこれだから困る。一生懸命冷静なふりをしているのに、顔が崩れてしまうではないか。
「冬馬くんって、かわいいなぁ……」
 にゃーんと鳴き声がして、鈴の音と共に黒猫が入ってきた。
「ザンシン、大きくなったねぇ。あんなに小さかったのにね」
 猫を抱きあげてキスをしようとしたが、猫はするりと逃げてしまった。間接キスをし損なってしまった。
「冬馬くん、君の世話、ちゃんとしてくれてるんだね。君が女の子なんて知らなかったよ」
 黒猫はシャープで強そうなイメージがあるから、雄だと思いこんでいた。女の子だと知っていたら、もっとかわいい名前をつけたのに。
 今からちょうど一年前のこと。
 ジョギングの最中、捨て猫を拾って困っていたら、「僕が飼います」と申し出てくれた男の子。執事さんの運転で、センチュリーでお屋敷に行った。お礼にと、深紅の薔薇をいただいた。
 それっきりになるはずだったのに、つい先日、状況が変わった。
 内定先が倒産したのである。奨学金の支払いもあるし、住むところもなくなってしまう。
 困り果てて大学のリクルートセンターに行くと、「メイド募集」の求人を見つけた。詳細を確かめると、大学のすぐ隣の四月一日家だった。
 給料は安いが、住みこみでまかないつき。福利厚生がばっちりだ。
 料理と掃除洗濯が得意なこと、体力があること。莉緒は募集条件に当てはまる。応募したら採用された。
「これはもう運命だと思うのよ。ザンシン」
 猫を抱きあげて股間を見ようとしたら、力いっぱい引っかかれた。
「痛っ……ひどいな。君を拾ってあげたの、私なのに」
 ザンシンはひらりと降り立つと、つんとしっぽを立てて、メイド部屋を出ていった。
「あっ。もしかして、ザンシン、嫉妬してる? 大丈夫よ。君のご主人様は盗らないわよ。だって、私はメイドだし。独占したらバチが当たるわ。冬馬くんは日本の宝よっ」
 部屋を出ていくザンシンに声をかけたときのことだった。
 メイド服のポケットでトランシーバーが振動した。
「莉緒さん、晩ご飯を作る時間だよ」
 メイド長の声が響いた。
「はーい。すぐに行きますっ」
 莉緒はメイド部屋を出ていった。

 冬馬はドアの裏側で、猫を抱いて顔を赤らめていた。
「冬馬くんって、かわいいなぁ……」
 猫を追ってきたら、莉緒が猫に向かって話している声を聞いてしまったのだ。
 これでは立ち聞きだ。立ち去るべきだと思うのに、好意を向けられるうれしさに足が止まってしまう。
「ザンシン、大きくなったねぇ」
 ――どっかで逢ったような気がしてたけど、勘違いじゃなかったんだな。
 猫をくれた女子大生。ジョギングウエア姿だった。
 冬馬は一度逢った人は忘れない。
 メイド部屋から出てきた猫を抱きあげる。
「はーい。すぐに行きますっ」
 ドアが冬馬に向かって迫ってきて、ひやりとした。ザンシンをきゅっと抱きしめる。都合よく姿が隠れた。
 廊下を小走りに急ぐ莉緒の後ろ姿を見てから、冬馬はそっと部屋に戻った。

 冬馬はポークステーキを一切れ食べて目を見張った。
「おいしいです」
 見た目は普通のステーキなのだが、口の中でホロホロと崩れるぐらいに柔らかく、豚肉特有の香ばしさがある。奥行きのある味わいだ。
 プロの料理人の作る洗練された盛りつけではなく、あくまで家庭料理だが、それがむしろほっとするようなおいしさになっている。
「さすがばあやの料理ですね」
「莉緒さんが作ったんです」
 新任メイドが頷いた。
 冷たいほどにクールな美貌の女性だが、ほんの少し眉が上がり、機嫌がよいことがわかる。
 莉緒が部屋でザンシン相手に話していたことを聞いてしまったが、莉緒は涼しげな様子で立っていて、あれは夢だったのではないかと思うほどだ。
「味付けがいつもと違います。どうやって作ったのですか?」
「塩麹で漬けてバターで焼きました」
「へえ」
「塩麹は、肉を柔らかくして、味に深みを出します。バターとの相性もいいんですよ」
「うん。おいしい。付け合わせのサラダも、スープもおいしいです。ご飯に合う味ですね」
「よかった。ばあやがいなくても大丈夫そうですね。莉緒さん。明日から頼んだよ」
「はい。メイド長。一生懸命お仕えさせていただきます」
「莉緒さんは、若い子にしては落ち着きがあってしっかりしているんです。料理も掃除も上手いです」
「ばあやのおメガネにかなっただけありますね」
「ありがとうございます」
 クールメイドの顔がほんの少し赤くなる。
 水差しを持って待機していたばあやが、コップに水を入れたときのことだった。
 ふいに顔をしかめ、しゃがみこんだ。
「あっ、っつ、痛っ」
 莉緒が水差しをすぐさまキャッチし、腰に手を当てて前のめりになっているばあやを支えた。
 冬馬は思わず立ちあがった。
「だ、大丈夫です。坊ちゃん。湯治に行けば直りますよ」
「ばあやさん。おぶさってください」
 莉緒がしゃがんだ。
「僕がします。女の人に力仕事をさせるわけには」
「坊ちゃんには無理です。失礼します」
「すまないねぇ。莉緒さん」
 莉緒は軽々と立ちあがると、ばあやをおんぶしてリビングを出ていった。
 冬馬はぽかんとして後ろ姿を見つめた。
 ――莉緒さんって、力持ちなんだ……。
 ばあやは初老だが、大柄だ。ほっそりしている彼女のどこに、そんな力があるんだろう。


 莉緒は戸締まりを確認しながら歩いていた。これが終われば今日の仕事は終わりだ。
 メイド長は、今頃星空を見上げながら露天温泉を楽しんでいることだろう。
 通いで来てくれる代理メイドの秋子さんは、おだやかな中年女性だった。前にメイドとして勤めてたが、ご両親の介護で仕事をやめたそうだ。
 執事の中村さんも、メイド長も秋子さんも優しいし、いい職場だ。
 中村さんは本家の執事だそうで、冬馬邸には常駐せず、車の運転と事務仕事をしているという。
 つまり、今日から……。
 ――夜は坊ちゃんと二人きり! きゃあああっ。
 顔がふにゃっと歪んでしまったが、を両手のひらでペチペチと叩いて、にやけた表情を取り繕う。
 ――私はクールメイド! 大人の女っ! 坊ちゃんはご主人様っ。冷静にっ。
 自分に言い聞かせているときのことだった。
 ガチャンと金属音がした。
「うーっ」
 うなり声もする。
 聞き慣れたこの音は……。
 莉緒は音を辿って廊下を歩いた。この部屋から聞こえてくる。ばあやさんから掃除をしなくていいと言われていた秘密の部屋。
 はぁはぁという息づかいに、金属の匂い。
「うわぁっ」
 ガッチャーン!
 莉緒は耐えきれずドアを開けた。
「坊ちゃん。大丈夫ですかっ!?」
 床に転がったバーベルと、尻餅をついている体操服姿の冬馬、それにバーベルラック。手前にはストレッチマット。たくさんのダンベルが、ダンベルラックに並んでいる。
 秘密の筋トレ部屋だった。
「莉緒さん。こ、これは、そ、その……」
 冬馬がおろおろと立ちあがった。
 顔が赤くなっている。
「かっこよくなりたくて……中村さんに頼んで……作ってもらったんです……。スマホで筋トレ動画を見て、内緒で、その、筋トレしてる、んだけど……。う、上手くできなくて……。プロテインも飲んでるのに……」
 しどろもどろで言うところがかわいい。胸がきゅうっと疼いてしまう。
「すばらしいですわ。坊ちゃんはショ……」
 ショタキャラと言いそうになって、あわてて言い直す。
「爽やか系でいらっしゃるのに、トレーニングするなんて、前向きでいらっしゃいますね。ですが坊ちゃん。自宅筋トレするなら、パーソナル・トレーナーを雇うべきです。自己流だとケガの元ですから」
「その通りですが、なんというか恥ずかしくて」
「サイドバーを高くしましょう。サイドバーは、バーベルを落としそうになったときの安全装置なんです」
 莉緒は説明しながらバーベルを持ちあげてラックに戻し、サイドバーの位置を調節する。
 ――やっぱりバーベル持つと燃えるわっ!
 体育会系の血が騒ぎ、クールメイドから筋トレ女子へとシフトチェンジする。
「バーベルスクワットは正しい姿勢が大事です。ちょっとやってみますね」
 肩にかついでゆっくりとスクワットをしながら説明する。
「お腹に力を入れると背筋が伸びます。姿勢が悪いと膝を痛めてしまいます。膝はつま先より前に出してはいけません。太腿の角度は床と平行です」
 メイド服は動きやすく筋トレだってできてしまう。働くための作業服なのだから当然だ。だが、これでは膝が見えない。メイド服では太腿の角度はわからないだろう。ご指導させていただくならウエア姿でやるべきだ。
「手幅はバーについている印のところが標準ですが、坊ちゃんは印より指一本分内側のほうがいいですね」
 十回ほど繰り返してからラックに戻すと、冬馬がじりじりと後ずさっていた。逃げ腰になっている。
 ――私、また、やりすぎてしまった!? せっかく猫を被っていたのにっ。
「ちょっと待ってください! どうして莉緒さんが上げられるんですかっ? 四十キロあるんですよっ。莉緒さんの体重ほどあるじゃないですかっ」
 莉緒は体重五十三キロだ。さすが無自覚イケメン。女は体重が軽く思われるほうが喜ぶということを、天然で理解している。
「私は八十キロまで上げられますよ」
「八十キロ……」
「メイド長から聞いてらっしゃらなかったのですか? 私は北体大を卒業しています。スポーツジムに就職する予定だったのですが、研修がそろそろ終わるかな、というときにジムが倒産したんです」
「ええーっ」
「研修中に偉い人がいきなり入ってきて、倒産だー、今すぐ帰ってくれーって言われて。教官も新入社員も、みんな呆然としてました。もう笑うしかないですよね」
「そ、それでうちのメイドになってくれたんですね。莉緒さんは、トレーナーだったんですね」
「だったというより、なるはずでした」
「じゃあ、その、教えていただけませんか? 僕のパーソナル・トレーナーになってください」
「坊ちゃんってすごいです」
「何が?」
「使用人に向かって、教えてくださいと言えるご主人様なんていませんよ。喜んでご指導させていただきます。……ちょっと失礼」
 トレーナーモードに入ってしまった莉緒は、メイド服を脱ぎ捨てた。


「わーっ。わわあーっ。わーっ」
 冬馬は悲鳴をあげた。
 二十二歳の綺麗な女性が、目の前でエプロンを外し、サバサバした様子でメイド服を脱ぎ捨てたのだ。動揺しないほうがおかしい。
 甘い肌の匂いがふんわり香る。
「ご安心ください。下にウエア着てますから」
 メイド服の下はブラとショーツではなく、丈の短いタンクトップと、ショートパンツだった。陸上の選手がよく着ているウエアで、胸のところにHokuto Sports Universityの文字がある。お腹が丸出しになっていて、割れた腹筋が見えている。
 筋肉の浮いた太腿といい、アスリートらしい均整の取れた身体つきだ。ウエアはシンプルで健康的なのに、メイドカチューシャとニーソックスをつけているせいで、不健全な印象になっている。はっきり言うなら、無茶苦茶エロい。
 莉緒は首の後ろで手を組むと、その場でゆっくりとしゃがみ、腰を落としたところでキープした。
「ハーフスクワットよりフルスクワットのほうが膝を痛める心配がありません。これがハーフ。これがフルです。足幅は肩幅より広めがいいですね」
 しゃがんだ姿勢なので、胸が強調される。
 ウエアの襟ぐりから、谷間がはっきり覗いている。
 ――だめだ。鼻血、出そう……。
 莉緒は、手本を終えると、バーベルのクリップを外してウエイトを取り、ラックに戻した。バーだけがラックに乗っている様子は間が抜けて見えた。
「四月一日さん、やってみてください」
「これで、ですか?」
「はい」
 ――男としてかっこわるくないか。バーだけのバーベルなんて……。
「重りをつけてやりたいんです」
 ――莉緒さんは八十キロ上げられるのに。
 と言いそうになったが、情けない気がして言葉を呑みこむ。
「四月一日さんはまだ成長期です。高負荷の筋トレは背が伸びなくなります。ウエイトを上げるのはあと半年ぐらい待ちましょう。バーだけで二十キロありますから、男性でも上がらない人が多いですよ」
「じゃあ、僕、四十キロ上げられたから、けっこうすごいんですね」
「はい。四月一日さんはすごいですよ。おひとりでここまでできる人、めったにいません」
 にっこり笑われてどきっとする。僕ってすごいんじゃないかって思ってしまう。もしも莉緒がスポーツジムに就職していたら、人気のトレーナーになっていただろう。
「莉緒さん。褒め上手ですね」
「トレーニング中は羽住コーチって呼んでください」
「羽住コーチ」
 バーの下に立ち、マークの位置より少しだけ内側で持ち、肩に担ぐ。
「あれ、なんか軽い」
「筋力がついていらっしゃるんですよ。自主トレの効果が出ていますね。すばらしいです。1、2、3で腰を落とし、4、5、6で上げましょう」
「お腹をへこませて、上のほうを見て、上半身をまっすぐ立てるんですね」
「1、2、3、はい。4、5、6」
 莉緒が目の前でスクワットしている。
 手本を示すためだろうが、胸が突き出され、ウエアを透かして頭頂部のポッチリがはっきり見えた。手を頭上で組んでいるので、腋の下のヘコミがセクシーだ。
 甘酸っぱい汗の香りがつんと漂う。
「息を止めると血圧が上がりますから、ふーっと吐きながら腰を下ろし、吸いながら腰を上げてくださいね」
 莉緒の吐息が顔にかかった。
 ――やばい。
 下半身にキた。
 膝を落としたときに、バランスを崩した。力が抜けてしまったのだ。
「うわぁああっ」
 そのまま尻餅をつく。
 バーはサイドラックで受け止められたが、情けなさのあまり、立ちあがることができない。
「大丈夫ですか?」
 莉緒が膝をついて前のめりになり、心配そうな表情で顔を覗きこんできた。
 両手をついた腕の間で、胸の谷間が覗いている。
 二の腕に脇乳が押さえられているせいで、ふくらみが強調されて目の毒だ。
「うっ」
 下半身に血が集まる。思わず前屈みになったところ、彼女の手が、冬馬のだの首だのを触ってきた。
「どこかケガをしたのですか!?」
「だ、大丈夫、です」
「あっ。もしかして、私の手、豆だらけだから痛かった、とか? 不格好な手ですよね」
 莉緒は手を引っこめると、擦り合わせるようにして手を隠した。彼女の肘で胸が隠れてほっとする。暴発しそうになっていたのだ。
「綺麗な手です」
 莉緒のがかぁっと赤くなった。
「莉緒さんの手の豆は、トレーナー研修や大学の授業でついたものですよね? 不格好ではありません。莉緒さんががんばってきた証拠です」
 新任メイドのクールな美貌が、へにゃっと崩れる。泣いているような笑っているような表情だ。
「もう、かわいいんだから この人たらしっ!!」
 両腕が伸びて、きゅっと抱きしめられた。
 胸の谷間に顔が埋まる。
「うぷっ」
 Dカップはありそうなマシマロ乳で、息がしにくいほどだ。
 筋肉質で引き締まった体形なのに、胸乳はふわふわなんて反則だ。
「莉緒さん、そ、その……はじめて見たときから、き、綺麗な人だなと思ってましたっ! 大好きですっ。……お、教えてくださいっ」
「筋トレを?」
「その、エッチなことを……」
 莉緒は迷うように息を呑んだ。
 ――なんだ? この間?
「いいわよ」
 莉緒はぱっと笑みを浮かべた。
 莉緒に手を引かれて、ストレッチスペースに向かう。
 マットに膝をついて座ると、莉緒がちゅっとキスをしてきた。ひんやりぷるぷるの唇が押し当てられ、すぐに離れる。恋人のキスというより、母親のキスだ。
「お母さんみたいだ。……あっ。すみませんっ、失礼ですよね。僕、母がいないから……」
 
 胸の奥がきゅうーっと疼いた。母性愛を刺激されてしまったのだ。
 ――かわいい。尊い! 尊いぃっ!!
 きゅっと抱きしめてずりをする。つるつるのに見えたのに、髭剃りあとのざらざらが、冬馬は男だと伝えてくる。
「恋人のキスをしてあげる」
 莉緒は処女だ。ファーストキスで初心者もいいところなのに、偉そうなことを言いながら、唇を重ねる。
 冬馬が顔を振ったが、両手でを押さえてさらにキスを続けていく。
 彼を奥深くまで知りたくて、歯列の間に舌先を差し入れる。
 ちゅっと吸うと、彼もキスに答えてきた。
「んっ、ちゅっ、れろ……ちゅ……ちゅっ」
 ――キス、気持ちいい……っ。キスってこんなにすごいの? 溶けそう。
「はぁっ、はぁはぁ……んっ、んんっ」
 舌を絡め合わせるディープキス。甘くてせつなくて、胸の奥がきゅんと来る。とろとろ溶けてしまいそうだ。
「ちゅっ……れろっ……れろれろっ……ちゅぱっ、んっ、んっ」
 冬馬が唇を放すと、はぁーっと大きく息をした。
 顔が真っ赤になっている。
「すみません。息、止めてました」
「私もよ」
 彼の手を引き、胸に押し当てる。
「ドキドキしてるでしょ?」
 冬馬がそっと乳房を揉んだ。
「んっ……はぁはぁ……んんっ」
「気持ちいいですか?」
 莉緒は頷いた。気持ちよくて声が出なかったからだ。
 代わりに、ウエアをぐっとめくりあげる。真っ白なふくらみがぽろんとこぼれた。
 
「うぅっ」
 冬馬は驚いていた。ウエアの下はノーブラだったのだから。
 女性アスリートはノーブラで競技に出ているのか。
 そっと揉むと、指がふにっと沈んだ。温かくてふわふわで、それでいて弾力がある。まるで温めたミルクを人の形に固めたみたいだ。
 痛いのではないかと遠慮がちに触っていたら、莉緒の手が重ねられ、胸にむぎゅっと押しつけられた。
「もっと力を入れていいのよ」
 手に余るほど大きな乳房を下から持ちあげるようにして揉むと、マシマロのように指が沈む。
「はぁ……あっ、……んっ……んんっ……」
 気持ちいいのか、莉緒は甘い声をあげて悶えている。
 柔らかいのに弾力があって、温かくてふわふわ。ピンクの乳輪の頂点で、乳首がククッと頭をもたげた。
 冬馬は乳首をちゅっと吸った。
「うわぁっ。ぼ、勃起した! チ×ポみたいだっ……あっ、ごめんなさい。失礼ですよね」
「ふふっ、いいのよ」
 莉緒の白い腕が頭部をきゅっと抱きしめる。
 乳房の間に顔が埋まる感触が心地よくて、胸の谷間で顔を振ると、莉緒があははと笑った。
「くすぐったい……」
 イイコイイコするように頭を撫でられて、腰の奥にむずっと来た。
 子供扱いされる心地よさの奥底で、莉緒を組み伏してやりたいという欲望がわき起こる。
「舐めてもいいですか?」
「もちろんよ」
 冬馬は乳首をれろれろと舐め回した。舌先で乳首をツンツンしたあと、舌でべろっと舐め回す。
「んっ、んんっ……んんっ、あぁっ」
 ――莉緒さん。気持ちよさそうだ。
 冬馬は莉緒の乳首を唇に含むと、ちゅーっと音を立てて吸い出した。
 汗の味しかしないのに、擬似的な母乳の味がして混乱する。大きな乳房に、不釣り合いなほどの小さな乳首。吸うと口の中でにゅーっと伸びる。巨乳は母性そのものという感じがする。

「きゃあっ。冬馬くん、だめぇっ。痛いっ」
 莉緒は悲鳴をあげた。
 快感よりも苦痛が勝ってしまったからだ。
「ごめんなさい」
「いいのよ」
 莉緒は自分からストレッチマットに仰向けになり、目を閉じた。
「ううっ、莉緒さんっ、莉緒さんっ!!」
 冬馬が覆い被さってきたが、びくっと震えた。
 股間を押さえて動揺している。
「ごめん、僕……僕……」
 ――え? 何、どうなったの?
 青臭い匂いがした。今まで嗅いだことのないこの香りは、精液ではないのか。
 漏らしてしまったらしい。
「大丈夫よっ!」
 莉緒は上半身を起こすと、冬馬を抱きしめた。彼が泣きそうな顔をしていたからだ。かわいそうでかわいくて、胸の奥がキュンとなった。
「平気よ。自信を持って。冬馬くんはか……最高よ!」
 かわいいと言いそうになって、最高だと言い換える。冬馬はかわいい。清潔で純朴で品がよくて、莉緒を女扱いしてくれる。
「私が全部やってあげる」
 母性愛が処女のためらいを追いやっていく。
 呆然としている彼を仰向けにさせ、精液で濡れているペニスをつかむ。しおしおとうなだれている男根は、かわいらしい形をしていた。
 ――どうしたらいいのかな? 擦ればいいの?
 きゅっと握って前後にこすると、ペニスがむくむくと大きくなった。
 小さいときはかわいかったが、大きくなると不気味になった。むきっと先端の皮がめくれて、赤黒い亀頭が露出した。
「えっ? わぁっ。な、ななな?」
 ――だめだめ。あわてちゃだめ。私はクールな大人の女!
「ううっ、は、恥ずかしいよっ!!」
 彼が恥じらっているところが愛しかった。身体を縮めて隠そうするが、腰を押さえてさらにペニスを擦り続ける。
「だめよ。お姉さんにまかせて」
「お姉さん?」
「そうよ。今はメイドでもトレーナーでもなくお姉さん」
「恋人のほうがいい」
 ――きゃああっ! なんてかわいいことを言ってくれるのっ!? ああああ、かわいいっ、かわいいっ 食べちゃいたいっ!
 莉緒は、肉茎の根本を押さえて上向かせると、先端の肉の実をぺろっと舐めた。精液の苦い味がするが、それさえもおいしく感じる。

「うっ」
 冬馬はあわてた。
 精液で汚れたチ×ポを、莉緒が舐め回している。熱くて柔らかく、唾液が乗ってぬるぬるで、それでいて硬いほどに弾力があり、舌先のつぶつぶした感触がたまらない。
「あああっ。莉緒さんっ。莉緒さぁんっ!! そ、そんな、ことまで……メイドだからって……っ」
「メイドだからじゃないわっ! 冬馬くんがかわいいからよっ!」
 そうだった。この人は猫をくれた人。ザンシン相手に、冬馬への愛情を話していたのを覚えている。
「お願いします」
「まかせて!」
 力強い回答が返り、亀頭があむっとくわえられた。ちゅっちゅっと先端を吸われて、腰が弾んでしまう。
「うっ、うあぁっ、あぁっ」
「ひみょちいい(気持ちいい)?」
「いい、いいよぉっ! 莉緒さぁんっ!!」
「うれひゅい(うれしい)」
 くわえたままで話されると、言葉が振動となって伝わってきて、腰の奥まで痺れてしまう。さっき出したばかりなのに、もう射精しそうになってしまう。
「うぅっ、で」
 出そうだと言いかけたとき、莉緒はぱっと唇を放した。
 興奮がはぐらかされてふっと吐息をついたとき、髪を指先で耳にかけた莉緒が、再び亀頭をくわえてきた。

 莉緒は、ちゅぱちゅぱと音を立ててペニスをしゃぶった。
「んっ、くちゅっ、れろっ……ちゅっ、ちゅぱっ」
 やり方なんてわからないから、舌先で裏筋をなぞったり、モゴモゴちゅぱちゅぱしているだけ。
「うっ、くっ、うぅっ」
 まるで男根に酔ったようにぼうっとして、もっとご奉仕したくなる。
 比べるものがないのでわからないのだが、彼のペニスはかなり大きいのではないか。
「ちゅっ、ちゅちゅ れろっ……ちゅぽっ、ちゅるっ」
 亀頭を吸うとき、彼がうぅっと息を詰まらせることに気がついた。
 ――ああもう、かわいいっ! いっぱい吸ってあげるっ。
 チューチューアイスのように吸っていたら、冬馬がつらそうな声をあげた。
「きつい、莉緒さんっ!」
「きゃあ、ごめんなさいっ」
 あわてて唇を放し、キャンディを舐めるみたいにして、亀頭をれろれろと舐め回す。
「ふうっ」
 冬馬が満足そうなため息をついた。
 ファーストフェラなので、どうしていいかわからなかったが、やり方はこれでいいみたいだ。チューチューアイスではなく、キャンディぺろぺろがいいのだろう。
「なんか出てるね」
 ぬるぬるする透明な液が尿道口から溢れている。莉緒は、液を舐め取るようにして舌を動かした。精液ではないようで、液には味はないが、舐めるたびに溢れるのがおもしろい。
「れろっ、れろれろっ、ちゅばっ」
 ショーツの内側がびしょびしょになっているが、男の子も同じなのだろうか。
 亀頭がぴこぴこ動いてやりにくい。
 莉緒は、ペニスの根元を指先で押さえて固定した。
「れろっ、れろれろ、れろっ」
 仰向けになっている冬馬に覆い被さってしゃぶり続ける。

 ――あれ? 莉緒さん。ガマン汁のこと知らないのかな?
 一瞬疑問がよぎったが、強烈な快感に追いやられ、思考力が消え失せてしまう。莉緒が顔を動かすたびに、ポニーテールの毛先がそけい部のあたりを擦る。
「れろっ、ちゅっ、れろ……はふはふっ、れろっ」
 舌先のつぶつぶが尿道口の周囲を舐め回す感触と相まって、ゾクッと来るほどの心地よさだ。
 ふうっと息を吐くときの、陰毛がそよぐ感触さえも心地よい。
「あぁっ、もう、出そうだよぉっ、莉緒さんっ」
 だが、出ない。
 彼女が肉茎の根本を押さえているせいだ。輸精官が圧迫され、射精したいのに出すことができず、焦れったい。
「莉緒さんっ、莉緒さぁんっ、指、手、は、放してっ」
 莉緒が指を放した瞬間、せき止めていたものがなくなり、いきなり射精がはじまった。
「ううっ」
 ドブッ!
 ドブドブッ!
 ビュルッ!!
「えっ、きゃっ、きゃあぁっ……えっとえっと……あ、そ、そうだわっ」
 莉緒が驚いている。
 ――あれ、やっぱり、莉緒さん、なんか変だ。知らないみたいな……?
 彼女が射精途中の男根をくわえた。
「ちゅっ、ちゅうちゅう ごくっ」
 そして、出すそばから飲んでいく。
 射精の快感は強烈だった。頭の芯がかぁっと熱くなる。
 ごくっと喉を鳴らして呑みこむたび、口腔が狭くなって亀頭が圧迫される。
「ううっ」
 二度目の射精なのにたくさん出る。射精の勢いがようやく弱くなり、やがて止まった。
「ごくっ」
 精液を呑みこんだ莉緒は、疲れ果てたというように、ストレッチマットに仰向けになった。
 ポニーテールに結った黒髪がストレッチマットに流れ、メイドカチューシャのフリルがシャープな美貌を飾っている。
 鼻先に精液がついたままだ。
 ウエアは胸の上まで押しあげられ、乳房もお腹も丸出しで、ショートパンツの裾からはすらっと伸びた太腿が覗いている。太腿の真ん中から膝小僧、足先までをニーソックスが包んでいる。ショートパンツの裾から、白いショーツの奥底がほんの少しだけ覗いていた。
 レアチーズケーキの香りがした。ショートパンツの裾から、蜜液が垂れている。
 ――莉緒さんも、興奮してる?
 そう思うと、またも下半身に力が集まってきた。
「莉緒さん、入れたい」

 ――え? 入れ? って……?
 莉緒はあわてた。キスとフェラチオまでならリードできる。だが、バージンの莉緒に、冬馬を教えてあげられる自信はない。
「えっと、その……」
「だめ?」
 冬馬が泣きそうな顔をして莉緒を見た。
 ――か、かわいい……! 目がうるうるっ。子犬みたいっ!!
 母性愛が刺激されてたまらない。胸と子宮がきゅんきゅんする。なんでもしてあげたくなってしまう。だが、初体験は怖い。痛いとか血が出るとか聞いた。
 女子選手はセックスするとパフォーマンスが落ちるから『恋愛はプラットニックで』と言われている。
 だが、
 ――私はもう競技者じゃないっ! 私はクールメイド! クールな大人の女!
「し、仕方、ないわねっ。そ、そこに、仰向けになりなさいっ」
 ショートパンツとショーツを一緒に脱ぎ、彼にまたがった。
 ――恥ずかしい。いやだ。死にそう。
 羞恥心がMAXになった。彼が莉緒の秘部を下から見上げている。視線がチクチクして痛いほどだ。
 蜜液がパタパタと落ちて、半勃起状態のペニスにかかる。
 えいっとばかりに腰を下ろすが、大陰唇が肉茎を押しただけだ。
「やっ、やだっ、ど、どうしようっ……」
 ――私がはじめてだって、見栄を張っていただけだって、バレちゃうっ。
 おろおろしていたら、彼が莉緒の両手首を持ってぐいっと引いた。冬馬にきゅっと抱きしめられる。
「莉緒さん。はじめてだろ? 一緒にやろう」
「えっ? えええ?」
 ショタキャラだと思っていた。私がリードしなくてはと思っていた。
 なのに、莉緒を抱きしめてくる腕は力強かった。
 冬馬は莉緒を抱きしめたままで、巻きこむようにして転がった。莉緒が下、冬馬が上の正常位になる。
「無理よ。入りっこないっ。だって、私、処女なのよっ」

 ――やっぱり……。
 冬馬は納得していた。莉緒は、無理してる感じがして、違和感を覚えていた。
「見栄を張ってしまったの。ごめんなさいっ!」
「莉緒さんが優しいからだろ。僕、が、がんばるっ、からっ」
 彼女の秘部を指で探り、大陰唇を指で開く。
 膣口があるはずだが、指で触ってもわからない。
「ここで、いい?」
「違うわ。ここよ」
 莉緒の指がラビアを開いた。花びらの内側は、蜜液をいっぱいに溜め、熱くたぎっていた。
「ほんとうだ……」
 スリットに合わせて亀頭を前後させると、肉のヘコミが見つかった。
 先端を当て、ぐっと押すが、ペニスは膣肉に包まれることはなかった。
 秘裂の上をぬるっと滑っただけだ。
 ――入らない……!
 かっとなったが、莉緒が、自分で腰を揺すって位置を合わせてくれた。
「ぐっとやって!」
「ぐっ!」
 彼女の肩をつかんで、力ずくで押しこむと、ぬぷっと音がして、狭い肉の輪にはまりこんだ。
「うわっ、狭い、ってか硬っ、う」
 亀頭のエラを処女膜がきゅうきゅうに締めつけてくる。
 それでもムリヤリに突きこむと、抵抗がふっと緩み、ぬるぬるっと肉壺にはまりこんだ。まったくはじめて体験する感触だった。熱くて狭く、どろどろに滾っているのに、硬くて柔らかい。ペニス全体が締めつけれる。
 亀頭が丸くて硬いものを押す。子宮口だ。
「入った! 入ったぁっ!! すげぇっ」
「くぅっ」
 莉緒が痛そうに眉根をしかめている。
「痛い? 痛いよね? ごめんっ」

 莉緒はふぅっと息をついた。
 ――ああ、かわいい。かわいいなぁ
 胸の奥がきゅんきゅんする。
 冬馬は泣きそうに顔を歪めていたのだ。
 莉緒の苦痛を自分のことのように思ってる彼はかわいくて、よしよしと撫で回してあげたくなる。
「大丈夫よ。痛くないから」
 莉緒は冬馬の頭を両腕で抱くと、イイコイイコした。
「冬馬くんのチ×ポ、大きいから、きついだけ」
 比べるものがないから、サイズなんてわからない。身体の内側が彼の男根でいっぱいにされて、溢れそうな思いを持てあましているだけだ。
「痛くないの? ほんとうに?」
「うん」
 破瓜の瞬間は痛かったが、今は痺れたようになっていて感触がない。圧迫感と膨張感があるだけだ。
「よかった!」
 冬馬が笑った。
 得意そうな表情で、子供みたいな笑顔だ。
 ――ほっぺつやつやで、お目々キラキラで、なんてかわいい。王子様みたい。
「動いていい?」
「いいよ」
 なんのことかわからないまま頷くと、ペニスがずるずると後退した。
 ――よかった。やっと終わった。
 安堵のため息をついた瞬間、ズンッと衝撃が来た。亀頭が子宮を突きあげたのだ。
 子宮が押し出されそうな錯覚に襲われて、喉の奥が痒くなった。同時に強烈な苦痛がやってきた。
「けほっ……ひぁっ……ぐっ」
 破瓜よりも痛い。傷口を限界までこじ開けられて、熱くて太くて硬いもので、擦過されている。
 莉緒は、彼に抱きつく腕に力をこめて耐えた。下肢を冬馬の腰に巻きつける。

「莉緒さん、苦しいの?」
 冬馬は動きを止めた。莉緒の様子が変だった。痛くないと言っていたのに、冬馬に抱きついてぶるぶると震えている。
「うっ、……平気、よ……っ」
「やめるよ」
 こんな中途半端でやめられないが、莉緒が心配だった。
 あとはオナニーすればいい。二度も射精して満足だ。
「やめないで」
 きゅっと抱きつかれてドキドキする。
「冬馬くんが……うぅっ」
「話さなくていいよ」
 ペニスを抜こうとして腰を引いたとき、つぶつぶが一面に生えた膣ヒダがきゅっと締まって、くいっと引っ張りこむような動きをした。
「うぁっ!」
 ドブッ!
 射精した。
 三回目なのに早すぎる。
 肉茎を痛いほどに締めつけてくる複雑なヒダの感触に、絞り取られてしまった。
 ドブドブッ! ビュッ!!
 射精の感触は、こんなのはじめてだと思うほどに気持ちがよかった。
 身体の内側がかぁっと熱くなり、溜まっていた精液が勢いよく噴き出していく。
「うっ、ううっ、くっ」
 莉緒の子宮が精液を受け止めてくれている。
 はっとした。
 ――やばい。抜かないと。莉緒さんに悪い。
 だが、ヒダがきゅうきゅうとくわえこんできて抜くことができない。いや違う。莉緒のせいではない。莉緒の子宮に精液をぶちまけたいという本能的な欲求に負けてしまったのだ。
 射精の勢いが弱まり、噴出が止まった。ペニスを抜き、もぞもぞと服を改める。
 痛そうに顔をしかめている莉緒に向かって頭を下げる。
「ごめんなさいっ!」
 そして、逃げるようにしてトレーニングルームを出た。
 ――どうしよう。とんでもないことをやってしまった……。

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