【2021年6月16日】

殺したいランキング1位の帰国子女クラスメイトが嫁になりました わかつきひかる 第一章

プロローグ
 夜崎景生は、プリントにシャープペンを走らせていた。
 ――うるさい。うるさい。みんな死ね!!  自習時間だってのに。
 いつものことながら、程度の低い話題で騒ぐ女子たちに苛立ってしまう。殺せるものなら殺したい。
 アイドル歌手にアニメの話題、恋バナにコスメにコンビニスイーツ。先生とクラスメイトの噂話。幼稚すぎてあきれてしまう。
「レイラ、今日もかわいいねー。お人形さんみたい」
「背が高くていいなぁ。モデルになればいいのに」
「金髪に青い目って綺麗。宝石みたい」
 とくにむかつくのは須藤レイラ。殺したいランキング一位。
 レイラがちやほやされて喜んでいるあいだ、景生は帰国子女の彼女のために、漢字にふりがなを打たなくてはならない。これがまた手間なのだ。
 女はずるい。か弱さの仮面をかぶって媚びを売るのだから。不出来な部分を武器にして、人の時間を奪うことに長けた女なんて死にやがれ!
 心の中で毒を吐きながら、機械的にルビを打っていく。
「肌が真っ白ね。まつげまで金色なんだ」
「髪がさらさら。うわぁ。細くて綺麗。めっかわ。絹糸みたい」
 レイラは髪を触る松田の手をそっとふりほどいた。松田は殺したいランキング二位の女子で、GAL系の女だ。めっかわとはめちゃくちゃかわいいを意味するGAL語だ。
 ――日本語ぐらいちゃんと話せ!
「ブラックヘア、ブラウンアイ、綺麗です。みんなかわいい。うらまましい」
「あはは。レイラかわいい。間違えてるよ。『うらやましい』だよ。繰り返してね。『うらやましい』」
「うらやましい」
 声に苛立ちが滲んでいた。
 レイラの青い瞳が細められ、氷のように鋭くなっている。
 ――あれ? レイラ、喜んでないぞ。嫌がってる? 怒ってる? ていうか、うんざりしてる? わかるよ。あいつらしつこいもんな。
「須藤さんなんて普通だろ。同じ人間なんだから」
 景生はぼそりと言った。
「オー。普通です。グレイト」
 帰国子女の顔がぱっと明るくなった。まるで花が開いたようだ。
 見とれるほどの美少女だから、そんな顔をして笑っていると確かにかわいい。
「普通なんて失礼よね。レイラは特別なんだから」
「気にしないで」
「そうそう、かまわないほうがいいよ。夜崎景生なんて、名前からして暗いよね」
 殺したいランキング三位と四位が口々に言った。
「ヨルサキカゲーオ。名前、暗い、意味です?」
「夜に崎で、景色に生まれるだから、夜に生まれるって意味かな? らしい名前だよね」
「こいつさ、真面目すぎて引くんだよね」
 ――ああ、そうだよ。俺はおまえらと違って真面目だよ!
 とは景生は言わない。言ったところで通じない。人種が違うのではないかと思うレベルで話ができない。心の中で死ねと呪詛を吐き、カッターナイフで腹を割く様子をイメージするだけだ。
「なんかキモいつーか、小汚いんだよね。夜崎って」
 声をひそめた悪口が、ぐさぐさと突き刺さる。
 ――聞こえてるぞ! 
 景生は声が高い。しかもちょっと太り気味だ。不衛生に見えるという。だが、声や外見なんて変えられない。
 ちゃんと風呂に入り洗濯済みのシャツを着ている。自炊してるし、野菜も取るようにしている。肥満というわけではない。
「書けたぞ」
 景生はレイラにプリントを差し出した。
「ありがとう。カゲオ、いつも早いです。私、がんばるです」
 ようやく自分の勉強ができる。景生はプリントの数式を解きはじめた。
 チャイムが鳴り、うるさかった自習が終わり、さらに騒がしくなった。
 机の上のプリントを集めて職員室に持っていかなくてはならない。これはクラス委員である景生の役割だ。
 ――めんどくさい。みんな死ね。
 委員長に美化委員に体育祭実行委員。陰キャは役職を押しつけられる。陽キャがカラオケだフェミレスだと楽しく過ごしている時間に、景生は掃除と雑用をしている。
 生来の真面目さが悪いほうへ働いて、呪詛を紡ぎながらも、サボることができないでいる。
 ――死ね。みんな死ね。早く死ね。
 景生の前を、殺したいランキング一位から五位が歩いている。女子トイレに入った五人はすぐに出て、階段を降りはじめた。
「レイラ、早く早く。一階のトイレなら空いてるはずだよ」
 混んでいたらしい。階段の下から松田と藤川、山村、五十崎がレイラを手招きしている。
 ――くだらねぇ。トイレぐらい一人で行けよな。幼稚なんだよ。おまえら。
 景生の目の前でレイラの金髪が揺れている。窓から差しこむ秋の光に照らされて、金細工のように光っていた。確かに触りたくなる綺麗さだ。
「きゃっ」
 レイラが足を踏み外した。
「あぶないっ」
 景生はレイラを背中から抱きしめ、ぐいっと背後に引いた。そのまま後ろに倒れてしまい、階段をゴロゴロと滑り降りていく。
 まるで橇スキーのようだった。もちろん景生が橇で、乗っているのがレイラだ。
「うあぁああっ」
 はっと気づくと、景生はレイラの背中を抱きしめたまま、階段の踊り場に仰向けに倒れていた。
「カゲオ、カゲオ、大丈夫ですっ!?」
 尻が痛い。背中が痛い。肩が痛い。それよりレイラが上に乗っていることが怖い。
 痴漢と言われる。レイプしたと言われる。性獣だと言われる。学校に来れなくなる。警察に捕まる。人生が終わってしまう。
「どいてくれ……」
 レイラはぱっと飛び退くと、散乱したプリントを拾い集めた。
 景生は立ち上がろうとしたが、ひどい痛みが身体に走り、うつぶせになってうめく。
「痛ぇ……」
「保健室、病院! 救急車っ」
「須藤さんは無事か?」
「はいですっ。カゲオ、階段、ぽんぽん、私、元気! 無事です」
 レイラはガッツポーズをした。
「小デブで悪かったな……」
 景生は目を閉じた。


 景生は自分のベッドでうつぶせになっていた。
 ブザーが鳴ってる。宅配便だろうか。
 ベッドから降りたくない。身体を動かすと痛いからだ。
 帰ってくれないかなと思っていたが、ベルは鳴り止む気配がない。
「ったく」
 ――死ね。みんな死ね。
 ぶつぶつ言いながら、痛い身体を引きずるようにして階段を降りた。
 モニターフォンに向かうと、液晶画面にレイラの顔が写っていた。
「たのもう」
 苦笑した。
 ――武士かよ。
 だれかがおかしな日本語を教えたらしい。
「プリント持ってきたです。ノートのコピーです」
「ありがとう」
 鍵を開け、玄関先でプリントとコピーを受け取る。ひらがなだらけのつたない文字だが、一生懸命に書いてくれたことがわかる。
 レイラはブレザーの制服姿だが、景生はパジャマ姿で恥ずかしい。
「カゲオ、元気です? 服部先生、大丈夫言う。バット、カゲオ、お父さん、お母さんいないです。カゲオひとり、心配です」
 担任の服部先生に車で送ってもらって整形外科病院に行った。レントゲンを撮られ、どこも折れてないし、打ち身だけだと言われ、シップをもらって帰ってきた。
「大丈夫だよ。確かに俺はひとりだけど、近所に叔母がいるから。それにケガもしてないし」
 小学校六年のときに巻きこまれた交通事故で両親が早世し、景生も長期に渡り入院した。母の妹である叔母さんが後見人になってくれていて、三者面談など、保護者が必要な用事は叔母がする。
 生活費は、両親の遺産を管理している弁護士が、毎月六万円ずつ振りこんでくれる。
「ケガしてないです?」
「どこも骨折とかしてないし。脂肪が守ってくれたのかもな」
「ノープロブレム? よかった! うれしいっ」
 レイラが抱きついてきた。
 その場にぺたっと尻餅をつく。レイラに押し倒された感じになった。
「つっ」
「ごめんなさい!」
 レイラの顔が近づいてきた。
「ちょっ、近い! 近いんだけどっ! 俺、パーソナルスペース広いほうなんだけどっ」
「私、日本語、わかりませんです」
 唇を重ねられた。
 果汁グミのような、ぷるぷるひんやりした唇の感触にドキドキする。
「ええええーっ!?」
「カゲオ、好きです」
「なんでいきなり?」
「きなり? なんですか」
「吊り橋理論って本当だったんだ」
 ぐらぐらする吊り橋で出会った男女は恋に落ちやすいという心理学。吊り橋のドキドキを、恋のときめきと勘違いするからだと聞いた。
「私むずかしい日本語わかりませんです、……私、カゲオ、一緒、好きです」
 うるうるする瞳が景生を見つめてくる。澄みきった湖水のような青い瞳。
 何が一緒だと言うのだろう。
 さながらラッキースケベのように、レイラの内腿が、景生の腰を挟んでいる。
「わかった! ドッキリカメラだろ」
「?」
「仕込みだろ? カメラを回しているんだろ? 『美少女に迫られた陰キャ、学園のアイドル相手にその気になる。身の程知らずにも、美少女を押し倒す』、なんてタイトルで、俺がおろおろしているところ、動画サイトにアップして笑いものにするんだろ?」
「???」
 レイラはきょとんとしている。
 その表情が、全力でしらばっくれているように思えて、かぁっとなった。
「だったらよ。フェラできるかよ?」
「フェラです?」
「舐めたり吸ったりするんだよ、チ×ポをっ」
「吸うです? チ×ポ? なんです?」
「ペニスだよ! できないだろ。好きなんて嘘なんだろ?」
「嘘、違う! 好き!! 本当! フェラするです!!」
 レイラはパジャマのズボンのゴムに手をかけると、トランクスごとずるんと下ろした。
「ええええーっ」
 展開の早さについていけない。
 これがもしもアニメなら、一週飛ばしたのかと心配するほどだ。
「ひゃあっ」
 レイラは自分でめくったくせに、ペニスを見て目を丸くしている。
 景生は勃起していた。
 ――なんで勃起するんだよーっ。俺っ!?
 恥ずかしくて情けなくて、どうしていいかわからない。
「舐める、ですか?」
「いいっ」
 NOの意味で言ったのにYESだと受け取ったようで、レイラはごくんと喉を鳴らした。
「舐めるいい、するです」
 先端をちろっと舐められてうめいてしまう。熱くてぬるぬる。柔らかいのに硬くて、舌先がつぶつぶしている。
「うーっ」
「うぇっ」
 景生とレイラが同時にうめいた。
「マズイです」
 顔をしかめている。
「いいっ、いいからっ」
「はいです。いいするですっ」
 レイラが亀頭をぱくんとくわえた。そうだった。レイラは日本語があやしい。はっきり言うならヘタクソだ。日本語のあいまい表現をわかっていない。
「ノ……ちょっ、ちょっ、わぁあぁああっ」
 NOだと言おうとしたのだが、亀頭がとろとろの口腔に包まれて、思考力が飛んでしまった。
 男にしては背が低く、おまけに小太り。運動は苦手。自分にウリがあるとしたら頭のよさだけなのに、何も考えられなくなる。
「わぁあっ。須藤さんっ、す、須藤さんっ!! ストップ!」
「カゲーオ、ノープロブレム。吸うですっ」
 先端をちゅーちゅーと吸われて、射精欲求が急速に兆した。
 ――なんだよっ。この状況はっ!?
 玄関先で、殺したいランキング一位の女子に押し倒されペニスを吸われている。恐ろしい。ひどい目に遭うに決まっているのだから、今すぐ逃げなくてはならないのに、いい気持ちになっているなんてどうかしている。
「うっ、須藤さんっ、ヤバイんだけどっ」
「やばい、いいです」
 くわえたままで話すものだから、肉茎に歯が当たり、チリッと熱くなった。
「痛ぇっ!」
 レイラは肉茎を吐き出した。
「大丈夫です?」
「いいからっ」
「はい、いいです!」
 レイラが再びペニスをくわえた。
 ――俺はいったい、同じことを何回繰り返すんだよっ!
 今度は吸わず、口腔で亀頭をモゴモゴさせている。信じられないぐらいに気持ちがよかった。レイラの舌は表面がざらざらしていて、上顎の内側と舌で挟まれると、お腹の奥にむずっとくるような快感が走る。
 感触を楽しめるのは、余裕ができたから。思考力が戻っていた。
 ――須藤さんって、ビッチなのか? 
 ――まさか。こんなに清純そうなのに。
 ――帰国子女だから考え方が日本人と違っていて、フェラが挨拶代わり、とか。
 ――それもないよな。挨拶でフェラしているアメリカ映画なんて観たことないぞ。
「なんでこんな……?」
 フェラが中断された。青い瞳が、まっすぐに景生を見つめてくる。
「好きです。カゲーオ!」
「だからそれは吊り橋だって。勘違いなんだよ」
「カゲオ、リピートうらさい(うるさい)!! 好きほんと!! 信じるです!」
 レイラはムッとした顔をした。なまじ綺麗な子だから、怒ると迫力があり、圧倒されてしまう。
 きゅっと唇を噛むと、クの形にした人差し指で、金髪を耳にかけた。
 そして小首を傾げると、フェラの続きをはじめた。
「ちゅっ、れろれろっ、……ちゅぱっ、モゴモゴ、……れろっ」
 さながら景生の分身と会話をするように、反応を見ながら丁寧に舌を使っている。
「うわっ、うっ、うううっ」
 体調の悪さと意外な成り行きのせいで、今にも射精してしまいそうだ。景生はあわてた。
 口の中で射精なんてしたら、何を言われるかわからない。
「須藤さんっ、そ、そのそのっ、えっと」
 景生の様子が変わったことを感じ取ったのだろう。レイラが上目使いに景生をちらっと見た。そして、意を決したというふうにふうっと深呼吸をすると、亀頭を吸った。
「ちゅーちゅーっ、ちゅちゅちゅっ、ちゅーっ」
「あああっ、で、出るっ」
 ドバッ!
 ついに射精が始まった。
 ――やばいっ! どうしようっ。
 あわてているにもかかわらず、気持ちがよかった。恐ろしいほどの快感だった。精液を受け止めてくれる人がいるというのは、これほどまでに気持ちがいいのか。
「げほっ」
 レイラはペニスを吐き出すと、ごほごほと咳きこみはじめた。
 真っ赤になった顔に、白濁液が降り注ぐ。
「ごめんっ!」
 たとえ殺したいランキング一位でも、顔を汚すなんて失礼すぎる。
 顎を滴って落ちる精液が、制服の胸元を汚していく。
「ごめんっ、ごめんっ、許してくれっ」
 恐縮した。だが、射精は止まらない。
 ポケットに入っていたハンカチをペニスにかぶせ、精液をハンカチで受け止めた。
 レイラはきょとんとした顔をしていたが頬についた精液を指で拭ってしげしげと見て、泣きそうな顔をした。
「えぐっ」
 レイラは両手で顔を覆うと、よろめくようにして玄関を出ていった。
 追いかけたくても射精は収まらないし、身体が痛くて立ち上がることができない。
 ようやく精液の噴出が止まった。
「は……」
 景生は力なく仰向けになった。
 背中が痛んだが、背中よりも心が痛い。
 レイラに失礼なことをしてしまった。
 好意を示してくれたのに。
 たとえ、それが、手のこんだいやがらせであったとしても。


第一章
 朝日が目に染みる。
 景生は、重い足を引きずるようにして通学路を歩いていた。
 階段から落ちたあと、二日休んだ。身体が痛いし、熱が出た。なのに怖くて眠れなかった。レイラを押し倒したとかレイプしたとか噂になっているのではないか。
 いじめられているわけではないが友達のいない景生には、学校の様子を聞く手段はない。
 ――あれ? なんか、普通だな。
 誰も注目しないのは、景生のステルス性能が高いからだが、『痴漢男を殺せ』みたいな張り紙もない。ヤンキーがやってきて脅してくることもない。
 景生に向けられる視線は悪意もなければ好意もなかった。見慣れた木々や備品に向けられる視線と同じだ。
 教室に入ると、松田や五十崎と会話していたレイラがぱっと振り向いた。
 金髪が輝きながら揺れ、光の粉をふりまく。青い瞳が温かい色に染まっていた。
「カゲーオ! 元気です? よかった!!」
 彼女の笑顔を正視できない。
 ――おとつい、須藤さんは俺のチ×ポを……。
 舌の感触は、まだペニスに残っている。ムズッと来た。大きく深呼吸して、欲望を身体から追い出す。詰め襟の裾を引っ張ってしまう。
「須藤さん。コピーありがとう」
 レイラは景生が休んでいるあいだ、ノートのコピーとプリントを届けてくれていた。景生は会わず、ポストに入れてくれるように頼んだ。
 気まずくて、おもはゆくて、どんな顔をしたらいいのかわからなかったからだ。
「ノープロブレム、イッツオッケー。カゲオ、背中、大丈夫です?」
「ああ、もう大丈夫」
「あれっ。夜崎、いたんだ」
「ほんとだ。夜崎って影が薄いからわからなかった。レイラがすごく心配してたんだよ」
 殺したいランキング二位と四位に言われてどきまぎする。
「階段から落ちそうになったレイラを助けて、あんたが落ちたんでしょ?」
「見てたよ。いい男だね」
「あんたのよさは頭がいいところなんだから、頭打たないようにしたほうがいいよ」
 三位と五位が言い、ぽんっと背中を叩いた。痛くて飛び上がりそうになったが我慢する。
「山村さん、触るだめ! カゲオ、恋人、私です!」
「あはは。レイラかわいい。夜崎が好きなんだね」
「ラブラブじゃん」
 心配していた? いい男? 恋人? ラブラブ? 
 身体がかっと熱くなった。みんなで芝居をしているに違いない。俺を陥れようとしているんだ。
「し」
 信じないぞ、と言おうとした言葉は、チャイムにかき消された。
 担任の服部先生がえんま帳を持って教壇に立った。
「おっ。夜崎、もう大丈夫なのか?」
「はい」
「前に出てくれ。体育祭実行委員だろ? 体育祭のエントリー、決めにゃならん」
 一限目はホームルーム。景生はため息をつきながら前に出て、体育祭の出し物の希望者を募っていく。
「ミックスリレーに出たい人、手を挙げてください。……はい。樋川さん。池井さん、……あと五人です」
「あっ。俺やるっ、俺っ!」
「障害物競走に出たい人」
 陽キャが多いクラスだから出たがりが多くて、バシバシと決まっていく。
 希望者が多すぎてじゃんけんをするほどだ。
 体育祭はリア充どものイベントだ。景生のような陰キャが、陽キャの楽しみを支える。世の中は格差社会だ。
 ――死ね。みんな死ね。リア充なんてみんなまとめて爆発しろ。
「二人三脚があと一組決まってません」
「三つ以上は出られないんだよね?」
「そうです。ひとり一種目以上三種目以内です」
 うーん、というような声が響いた。
「私するです。私、借り物競争だけです。誰か、一緒、するです」
 レイラが手を挙げた。
「はい」「はい」「俺する俺」「僕がする」「はーいっ」
 男どもが一斉に手を挙げた。
「やらしーっ。最低っ。レイラに触りたいだけだよね」
「女子二人でもいいです。松田さんどうですか? 松田さん二種目だけですよね」
「えー。やだっ」
 不満げな声に面食らう。
 ――友達なのに?
「レイラ足長いからなー。顔も小さいし。背は同じぐらいなんだけど」
 ――ああ、そうか。横に立って比べられるのが嫌なんだな。レイラと並ぶと、スタイルの違いが一目瞭然だもんな。
「夜崎、何にも出てないじゃん」
「俺は実行委員だから、体育祭は忙しくて」
「カゲーオ! 一緒します!! 私、カゲオ、恋人ですっ」
 みんなが沈黙した。
「恋人……」
 繰り返す声が聞こえてきた。
 信じられないのだろう。
 当然だ。景生も信じられない。
「夜崎、階段で、落ちそうになったレイラを助けたんだよ」
「そんで、夜崎が落ちて、レイラは無傷なんだ」
「ああ、聞いた。大騒ぎになってたな」
「夜崎が休んでたの、それでか」
「へえ。すごいな。僕にゃできねぇ」
 尊敬と感心の気配が、怒濤のごとくやってきて、圧力となって襲いかかってきた。晴れがましいより恐ろしい。
「つ……」
 ――吊り橋効果だから、すぐに冷めるよ。
 と言おうとした声は一斉に湧き起こった拍手にかき消された。
 

「カゲーオ! 二人三脚、練習するです!!」
 放課後のベルが鳴るなり、レイラに明るく言われてどぎまぎする。
「ゴミを捨てなきゃいけないんだ」
「カゲオ、日直?」
「美化委員」
 景生は掃除用具入れからゴミ袋を出して広げると、教室のゴミ箱をひっくり返してゴミ袋に入れる。
 教室を回り、それを繰り返していると、レイラがちょこちょことついてきた。
「ゴミ、日直、捨てるです。美化委員、捨てるです?」
「美化委員は、週に一度、各教室を周って、ゴミ箱をチェックして歩くんだ」
「美化委員、カゲオだけです?」
「一学期は委員全員でやってたんだけど、だんだん人が減ってきて。今は俺だけ」
 どの教室もゴミが溜まっていて、ゴミ箱から溢れそうになっている。ゴミ捨ては日直の役割なのだが、彼らがサボっているせいだ。
 ――死ね。みんな死ね。ゴミぐらい自分で捨てろ!
 心の中で毒を吐いていたら、レイラがゴミ袋を掴み、ひらひらさせながら階段を駆け下りた。
「私、美化委員、なるです。一階行くです!」
「もう美化委員決まってるし」
「美化委員スペシャルです!」
「わかったわかった。コケるなよーっ」
「はいですっ」
 階下から声が聞こえてきた。
「あれ。レイラ、ゴミ捨ててるの? 手伝うよ」
「ありがとうです」
 ――さすが。人徳。
 景生はゴミを捨てていても誰にも注目されないのに、レイラには人が寄ってくる。
 ――陽キャってやっぱりすごいんだな。
「二階終わった。手伝おうか?」
 階段の上から声をかけると、ぱんぱんにふくらんだゴミ袋を持ったレイラが「早っ」と声をあげた。
「カゲオ、ひとり、しました。私、松田さん、五十崎さん、山村さんしました。カゲオ早いです、どうして?」
「慣れてるからな」
 ゴミを捨て、トイレで念入りに手を洗ってから教室に戻ると、レイラがわくわくした表情で言った。
「二人三脚、するです」
「二人三脚って何かわかってる?」
「ノープロブレム! ネット、調べた。イッツオーケー」
 レイラはリボンタイをほどき、しゅるんと音を立てて引き抜いた。
「足、結ぶ! ワンツーワンツー、ジュニアハイ、しました」
 アメリカの中学でも二人三脚をやった、ということか。
「どこでする?」
 レイラは廊下を指差した。
「廊下かよ……」
 リア充たちがまだ帰りたくないとばかりにたむろしている中を、レイラと二人三脚で進む? 
 悪目立ちする。ひやかされる。調子に乗ってると言われる。いびられる。いじめられる。嫌だ。やめたい。
「はじめて、外、転ぶ。痛い、嫌です」
 顔がかっと赤くなった。
 はじめてで痛いの嫌だの、エッチなほうに聞こえてしまう。
 ――昨日、レイラがフェラを……。
 股間にムズッと来た。感触が蘇ったのだ。
 彼女のエッチな表情を思い出してしまい、鼻血がでそうだ。
 ――考えちゃだめだっ。
「廊下するです」
「わかった」
 レイラに押しきられてしまった。
 妄想をふりほどいて、廊下に出る。
 レイラが足首にスカーフを巻きつけた。景生の足とレイラの足が密着する。
 ――うぁっ。近いっ、近すぎるっ。
「カゲーオ、離れる、だめ、寄るですっ」
 脇腹に手を回された。
 景生も仕方なくレイラの肩に腕を置く。
 彼女の髪が頬をくすぐってきてたまらない。
 いい匂いがするし、柔らかいし温かいし、正気でいられるわけがない。
 ――無になるんだ。俺っ。無だ。無の境地だ!
「じゃあ、いくよ。いちで真ん中、にで外側の足を出す」
「いちに、いちに」
 ――お、いい感じ。
 意外にもリズムが合う。陽キャと陰キャ、人気者と日陰者、極南と極北に位置するはずなのに、歩幅が同じだ。
 ――なんで? どうして?
 ――身長が同じだ!
 意外だった。レイラは景生よりも背が高いと思っていたのだ。顔が小さく足が長いせいで、すらっとして見えるのだろう。
 景生とレイラは、真逆の存在だと思っていた。だが。
 ――俺たちって、近いのかも?
「あれ、二年二組の須藤レイラだろ? 帰国子女の」
「相手だれだ? あんなのうちの学校にいたっけか?」
「えらく地味な男だな。小デブだし」
「暗そうね。陰キャそのものって感じ」
「レイラには似合わないよね」
 悪口が聞こえてきて、弾んでいた気持ちが一気に萎えた。
 その通りだ。レイラに景生は似合わない。
 彼女は明るくてかわいくて素直だ。景生みたいに呪詛を繰り返したりしない。自分に自信があり、皆がレイラをかまってくる。
 レイラの人生は、彼女の髪のように光り輝いているのだろう。
 ――俺が触っていい人じゃない……。
「きゃあっ」
「うあ」
 足がもつれて転んでしまった。幸い、下になった景生の上にレイラが乗った形だ。
 背中におっぱいがぷにっと当たってどきっとする。ほっそりしているのに、巨乳なんて反則だ。
 まるで抱き合っているようで、ドキドキする。
「カゲーオ、だいじょぶですか?」
「ああ、だ、大丈夫だ」
「練習、必要です。もう一回やるです」
 立ち上がり、もう一度二人三脚をはじめる。
 だが、ひとたび腰が引けてしまうと、合わせることはできなかった。
「きゃ」
「ごめんっ」
 転んでばかりだ。階段から落ちたときの痛みがまだ残っていて、身体がつらい。
「ごめんなさいです。私、運動苦手です」
「ええーっ?」
 スタイルがよくていかにも運動神経がよさそうなのに、意外すぎる。
「ボール、投げる、あさっての方向? いくです。みんな笑うです」
 体育は男女別だからわからなかった。
「別にボール投げがだめでもいいと思うけど」
「カゲオ好きですっ!」
 じっと見つめてくる大きな瞳にひるんでしまう。
「……やっぱやめよう。無理だ。辞退届け出すよ」
 景生は足首を結んでいたスカーフをほどいた。
「じたいとどけ?」
「エントリーをやめるってこと」
「やめるだめ、無理違う! 私、カゲオ、同じ!! カゲオ言った。私、普通! 私、がんばるですっ!!」
 けっこう廊下を進んだらしく、特別教室のほうまで来ていた。
 家政科室でミシンを使っていた女子生徒たちが景生たちをちらちら見ている。手芸部の活動らしい。
「だって須藤さんは俺とは違うだろ」
「違う? 何違う?」
 レイラは陽キャだから、自分に自信があるから。リア充だから。俺はステルス性能が高いから。小デブだし、声が甲高くてキモイから。学年ひとつダブッているから。
 だが言えない。口にするのは卑屈すぎる。それに、彼女の語学力では、言ったところで伝わらない。
「美人だし、目とか髪とか綺麗だし。特別だし」
 レイラの全身に緊張が走った。びりっと電気が走ったようだった。柳眉を逆立てて景生を睨む。瞳が凍っていた。
 ――怒ってる。どうして?
 ――俺、なんかヤバイこと言ったか?
 レイラは家政科室に入ると、裁ち鋏をつかんだ。
「レイラ、そ、その」
「みんな特別言う! ゴールドヘア、ブルーアイ言う! 私、犬猫ハムスター違う!!  シット! 私普通! 私人間! ボール落とす、みんな笑う!! かわいい? 違うっ。ペット違うっ!」
 レイラの左手が髪を掴み、右手の鋏が髪をバサリと切り落とす。
「きゃあっ」
 手芸部の女子たちが悲鳴をあげた。
 あまりのことに声も出ない。
 女の子が髪を切ることの重大さは、景生だってわかっている。
 そうだった。レイラは、女子たちに髪だの瞳だのを褒められるたびに、嫌そうな顔をしていた。女子たちは、猫の頭を撫でるようにレイラの髪を触った。
 さっきレイラは、球技が苦手で、みんなが笑うんだと言っていた。
「同じ人間、カゲオ言った! カゲオ好き、みんな嫌いっ!」
 そうだった。
 ――須藤さんなんて普通だろ。同じ人間なんだから。
 景生がそう言ったとき、レイラは喜んでいた。
 ――オー。普通です。グレイト。
 シット。くそったれ。みんな嫌い。
 景生が声に出さずに死ねと呟いていたように、レイラも嫌な気持ちをもてあましていたのだろうか。見た目は明るいが、中身はけっこうキツイようだ。
 レイラは切った髪をつかんだままではぁはぁしていた。
「もったいない」
「カゲオ、みんなと同じ!?」
「俺はさ、成績がよくて真面目なんだ。小デブだし、声は甲高くてキモイけどよ」
「はい?」
「レイラは明るくて綺麗だ。綺麗な人がいる。運動ができる人がいる。頭のいい人がいる。それはすごくいいことだと思うんだ。俺は成績がいいねって言われたら、ああそうだよ、って言うよ。真面目だねと言われたら、俺はああって言うよ。俺は真面目なことを誇ってるし、レイラも綺麗なことを誇ればいい」
 ――偉そうなことを言っているな。俺。
 成績のよい真面目男なんて、クラスの皆にうまく使われるだけ。みんな死ねと呪詛を吐きながら、手早く用事を終わらせていた。
「ほこ? ほこれ?」
 景生はスマホを取り出して、翻訳サイトにアクセスする。誇るの意味を表示してレイラに見せる。レイラは大きな目を見開くと、しっかりと頷いた。
 肩の上で揺れる髪が痛々しい。
「私、綺麗、ほこるです!! ああ言うです」
 そうだ。誇ろう。真面目で頭がいいことは、悪いことではない。
「ありがとうって笑っておく程度がいいかな。あと、嫌なことは嫌だと言おう」
「ありがとう、言うです。触る、嫌です、言うです」
 松田たちは言葉が通じない。レイラが嫌がっていてもわからない。
「はっきりしっかりきっぱり言ったほうがいいかもな」
「嫌です。はっきりしっかりきっぱり言うです」
「あ、髪、捨てないで。掃除が大変だから」
「これあげる」
 手芸部の女子がリボンの切れ端と、セロファンの袋を差し出してくれた。
 レイラが切り落とした髪の束を、リボンできゅっと結んで袋に入れる。
「美容室行こう」
「日本、美容室、閉まる早い」
「おばさんがやってるから、頼めば切ってくれるよ」


「カゲーオ、どうです?」
 レイラが不安そうな表情で聞いた。
 金髪のロングヘアも綺麗だったが、ボブヘアもかわいい。
「うん。いいよ。似合ってるよ。須藤さん」
「景生の恋人?」
 鋏をシザーケースに直しながら、叔母が聞いた。
「クラスメイトってか、友達」
「恋人です!」
 レイラが胸を張って答える。
「まあいいや。楽しくやりな。カット代はまけてやるよ」
「無料は悪いよ。閉店間際に押しかけたんだ。ちゃんと払うよ」
「真面目か」
「真面目だよ。おばさん」
「おばさん言うなって言ってるだろ。二千万円でいいよ。毛先を揃えただけだからな」
「あはは。二千円だな。ありがとう。亜希子さん」
 景生は財布から千円札を出す。
「景生、髪切ってやろうか?」
「大丈夫だよ。千円カットの店で切ってるし」
「その髪型似合ってないんだがな」
「俺なんか髪型変えても一緒だよ」
「まあいいけど、俺なんか、って言うのやめろよ。姉さんが草葉の陰で泣いてるぞ。……須藤さん。髪はヘアドネーションに寄付するからね」
 景生はヘアドネーションをネット検索し、さらに英語変換してレイラに見せた。
 寄せられた髪で医療用かつらを作って、病気で髪を失った人にプレゼントするボランティア活動。
「グレイト! ありがとうですっ」
 叔母の美容室を出たら、すっかり夜になっていた。胃がぐうと音を立てたが、今から家に帰って自炊するのは面倒だ。
「カゲオ、食べるです?」
 レイラはハンバーガーショップを指差した。
「ああ、そうだな」
「お金、私、出すです。おたがいさま、です」
「難しい日本語知ってるんだな。ありがとう。おごられとく」
 五百円のセットを頼んだところ、レイラも同じ物を買い、テイクアウトにした。
 当然のように景生の家に向かって歩いていく。
 レイラが手を繋いできた。ふりほどくのもよくないような気がして、そのままで歩く。
 ――もしかして、家に来る流れかな? 当然、やるよな? 
「レイラ、ここでお別れしよう」
 景生は家の前で言った。
「嫌です!」
 レイラが握る手に力をこめた。
「吊り橋だし、すぐ冷めるし、やらないほうがいいと思うけど……。髪はいずれ伸びるけど、その……やってしまうと……こ、後悔すると思うんだ」
「つりばし? 日本語むずかしい。景生、漢字、ひらがな、助けるしたです。プリント、ノート、全部、助けるしたです。ずっと助けるしたです。うれしい。感謝。好きです」
 景生は照れて頭を掻いた。
 死ねと呪詛を吐きながらやっていた雑用を、喜んでくれてる人がいる。
 胸の奥が熱くなるほどうれしい。
「私、名前、一緒」
 レイラはスマホに指を滑らせると、液晶画面を見せた。
 名前の意味を書いた英語のサイトだった。日本語翻訳を押して、日本語訳を表示する。レイラという名前は、夜に生まれるという意味があると書いてある。
「景生、夜生まれる、名前、同じです」
 青い瞳がまっすぐに見つめてくる。
 ――俺の名前は夜に生まれるって意味じゃなくて、歴史オタクの父さんが長尾景虎(上杉謙信)にあやかってつけただけで、景には日光とか仰ぐとか偉大なとかって意味があるんだけど……。
 とは景生は言わない。
 レイラは景生にずっと好意を寄せてくれていたのだ。階段落ちをきっかけに、好きな気持ちが溢れ出して、行動に移した。
 胸が熱くなってくる。
「いいよ。入ってくれ」
 景生は家に招き入れた。
「どうぞ」
「仏壇あるです」
「両親なんだ」
 景生が仏壇の前で膝をつき、リンを鳴らして合掌すると、レイラも景生に倣い、手を合わせる。
「写真、カゲオパパ、似てるです」
「俺が子どものとき、事故で死んだんだ。俺も長期入院してさ。一年ダブッてるんだ」
 見慣れた自分の家に、金髪碧眼のクラスメイトが正座しているのは、どこか不思議な光景だった。生活感に溢れた家なのに、彼女の周囲だけ光輝いているようだ。
「その、さっきは特別だとか言ってごめん」
 景生は立ち上がっておじぎをした。
「なぜ特別言うですか?」
「その、あいつら……松田さんとか、五十崎さんとか、GALてか、派手な人たちいるだろ? 言葉が通じないっていうか、なんか違うっていうか」
「日本語です。言葉通じるです」
「そうだよな。……レイラは特別綺麗って言いたかったんだよ」
「ふふふん。私、特別綺麗です! 景生、大好き」
 レイラがきゅっと抱きついてきた。巨乳がむにゅっと押しつけられる。
 レイラが目を閉じる。キスして、というように。
 半開きになったピンクの唇が、景生を誘っていた。甘い体臭にドキドキする。
「ハンバーガー食べないの?」
「あとです。キスするです」
 ちゅっとキスをする。唇の先だけを合わせる軽いキス。
「大好き。ハッピーです」
 レイラは笑み崩れた。
 ――ああ、ちくしょう。尊い。かわいい。
 彼女の背中に両手を回し、ぐいと抱き寄せると、再度キスをした。
 レイラのまつげが震えている。まつげも眉毛も、うぶ毛までも金髪だ。
 彼女の肌は柔らかい陶器のようにすべすべだ。輝くように白くて、ゆで卵のようにつるんとしている。
「ん……」
 もっと知りたい。彼女のことを。
 歯列をねぶると、噛み合わせていた歯が緩んだ。そっと舌先を差し入れる。唇の表面はひんやりぷるぷるしていているのに、口腔は熱く滾っている。
 まるで彼女そのものだ。外見は明るくて元気な帰国子女。中身は鬱屈して、けっこう気が強い。
「くちゅっ、ちゅっ、れろっ……ちゅっ、ちゅちゅっ」
 猫のようにざらざらしている舌先を吸い、絡め合わせ、唾液をやりとりする。
 ――キスってこんなに気持ちがいいのか。
 レモンの味のキスだ。
 レイラがごくっと喉を鳴らして、交換した唾液を飲み下した。
「キス、すごい。気持ちいいです」
 唇を離すと、遺影の母と目が合った。
「こっちきて」
 仏壇の前でするわけにはいかない。
 景生はレイラの手を引いて、二階の自分の部屋に案内した。
「散らかってて悪いんだけど」
 グラビアモデルの水着ポスターを見た彼女は目を見張った。
「乳でかいです、乳好きです?」
「そ、そりゃ、男だし」
 きゃー、いやらしい、最低、と言われることを覚悟して、おどおどと言ったところ、レイラはふふんと笑った。
 いつもの無邪気な笑みではない。勝ち誇ったような笑いかただ。
「でかい乳! カゲーオ、私の乳、好きです!」
 スカーフをしゅるんとほどくと、襟ボタンを外し、ぐいっと開く。
 そして胸をぐいと突き出した。
 私のほうが胸が大きいと言いたいらしい。
「うっ」
 ――でかい。マジででかい。すっげぇでかい。
 ブラジャーのカップに収まりきらず、ふわふわのふくらみがカップの上に盛り上がっている。
「その、前んとき、襟とか胸元とか汚れただろ? 大丈夫だった?」
「ノープロブレム! 洗う、平気」
「よかった。失礼なことをしたって心配してたんだ」
「しつれ? ソーリーです?」
「うん」
「アイムソーリー・ヒゲソーリー」
 噴き出しそうになったが、こらえた。
 松田か藤川あたりが犯人だろう。オウムに言葉を教えるように、レイラにおかしな日本語を教えこみ、おもしろがっているらしい。私はペットじゃないと彼女が怒る気持ちがわかる。
 レイラの細い指が、自分の胸の谷間を探っている。だが、フロントホックを外す勇気はないようで、迷うように動いていた指の動きが止まり、目を伏せた。
「インバアラストゥ(恥ずかしい)……」
 知らない単語だったが、恥じらっていることがわかった。その様子が未熟なセクシーさを醸し出してかわいらしい。
「須藤さんも恥ずかしがるんだ……」
「私、普通です。恥ずかしいです……」
「そうだよな。ごめん。俺、はじめてだから、リードできないんだ」
 真面目か!? と自分で自分にツッコミを入れる。
「私もです。バージンです」
 えっと声をあげそうになったが、言葉を呑みこむ。
 いきなりフェラしてきたので、レイラは体験者だと思っていた。
 好きな気持ちが暴走したあげくだとわかると、けなげさに胸が熱くなってくる。なんて尊い。なんてかわいい。
「一緒、がんばるです」
「俺もその、がんばってみる」
「二人三脚です!」
 彼女がベッドに乗って仰向けになり、来てとばかりに両腕を伸ばした。
 開いた襟から胸乳が覗いている。
 景生はブレザーだけを脱ぎ、彼女に覆い被さった。服越しに抱きしめて、額や唇にキスの雨を降らせる。頬をスリスリするとレイラが笑った。
「ふふっ、ちくちく、こそばいい」
 髭剃りあとがこそばゆいと言っているらしい。
 顎を擦りつけるようにして首から鎖骨、胸の谷間へとキスを移動させていく。甘酸っぱい体臭と石鹸の香りがする。
「はぁっ……あっ、あぁっ……んんっ……」
 胸乳にタッチしてふんわりした感触を楽しみながらそっと揉む。ハーフカップのブラジャーの奥で、乳首がぷくっとふくれたのが感触でわかった。
「あっ、ぁああっ……んっ、んんっ」
 フロントホックを外そうとして胸の中央を探ったが、カッチリはまっていて外せない。
 カップの中に手を入れて、ふんわりふわふわの乳房を引っ張り出す。
「でかい……」
 下乳をブラジャーで押さえられているので、胸がいっそう大きく見える。下から持ち上げるようにして揉むと指を弾き返すような弾力がある。
 乳輪も乳首も淡いピンクで、つんと尖ってるところがかわいらしい。乳首をちゅっと吸うと、レイラの身体がぴくんと跳ねた。
「あっ、いいっ、いいですっ!」
 片方の胸乳を揉みながら、もう片方の乳首を舐め回す。
 乳首がどんどん硬くなる様子は、まるで女のペニスのようだ。
「ちゅっ、れろっ……ちゅぱちゅぱっ」
 果汁グミの弾力と、マシマロの柔らかさを持った大きなふくらみ。みっしりと実っていて、むちむちとした感触だ。揉むと指が弾き返される。よくもまあこのサイズが、制服に収まっていたものだ。
「ちゅっ、ちゅぱっ……れろれろっ……ちゅっ」
 乳首を吸っても味はほとんどしないのだが、乳首がコリコリに硬くなっていくのがダイレクトに伝わってきて興奮する。
「ひゃっ、あぁっ、はっ……はぁっ……」
 背筋が浮き、腕が頭に回された。
 もっと舐めてとばかりに頭を抱かれ、下肢が景生の腰に回される。
「うぷっ」
 顔に乳房が押しつけられ、息が止まりそうになった。
 顔をぷるぷる左右に振ると、レイラがひゃんっと声をあげ、腕の力を緩めてくれた。
「くすすったいです」
 くすぐったいと言われてしまった。感じさせてやりたくなる。
 乳首をちゅっちゅっと吸って、レイラに嬌声をあげさせる。
「ひゃっ、あっ、あんっ、だ、だめ……ああーっ」
 さすが帰国子女というべきか、反応が派手だ。
 ――俺ってすごくね?
 童貞なのに、レイラを感じさせている。自信が身体の奥から漲ってくる。
「好きだよ」
「ふふふんっ。当然です」
 さすが陽キャ。好かれて当然だと思っている。この自信は陰キャにはない。
「須藤さんらしい」
「レイラ呼ぶです」
 んっ? となったが、苗字で呼ぶな、名前で呼べということらしい。
「レイラ。愛してる」
 耳元で名前で呼ぶと、距離が近くなった気がした。
「カゲーオ、大好きです」
 レイラの腕が、景生の頭を抱いてきた。
 顔が乳房の谷間に埋まるが、顎を擦りつけるようにして彼女に嬌声をあげさせる。
 綺麗に手入れされた脇の下にキスしたり、耳に息を吹きかけたりして愛撫する。
「ああっ、はっ、はぁ……んん……」
 レモンヨーグルトのような、レアチーズケーキのような匂いがしている。
 ――レイラ、発情してる?
 思わず乳首を強く吸うと、乳首がにゅーっと伸びて、レイラがガクガクと震え出した。
「ああぁーっ」
 ひくっと喉を鳴らして硬直する。
 景生のつたないペッティングに、感じてくれるレイラが愛しい。
 制服のスカートがめくり上がり、ショーツの奥底が覗いていた。
 スカートの中に手を入れ、ヒップの脇を探る。ショーツのゴムに手をかけ、ずるっと引き下ろす。
 レイラがぱちっと目を開けた。
「恥ずかしです」
 見てはいけない気がして横を向いていたが、恥ずかしがって太腿を擦り合わせるため、脱がせるのが難しい。
 景生はあきらめて股間を見た。ヘアが金髪なので、スリットが透けて見える。
 大陰唇はぷくっとして、まるで楕円のゴムマリを押しつけて、真ん中にスジを通したみたいだった。
「……っ」
 うなり声を押し殺しながら、ショーツを太腿、膝小僧、ふくらはぎと下ろしていき、つま先から抜く。
 景生は、足首を持ち、彼女の膝が乳房につくまで曲げ、左右に開いた。
「やっ、やだっ、恥ずかしですっ!! あぁっ、あっ、あぁっ、……見る、だめですっ」
 恥ずかしがって腰をもじつかせる。スリットがくぱあと開き、杯状の花びらから、透明な蜜液がとぷっと落ちた。
 ラビアを引っ張ると、みっしりとヒダを合わせてすぼまっている膣口と尿道口、それにフードに隠れて先端だけを覗かせているクリトリスが見えた。
 ――エッチだけど、かわいい形……。
 陰核を指でつつくと、ぷくっとふくらんで、フードが根本に丸まった。
「ひゃっ、痛いですっ」
「ごめん」
 クリトリスは痛いらしい。膣口にそっと指を入れた。指一本入るのがやっとというような狭さに驚く。膣の浅いところにあるドーナツ状の粘膜の輪が、侵入を阻んでいる。
 ――これ、処女膜だ! バージンって本当だったんだ!!
 身体が熱くなった。
「んっ」
 痛くはないみたいが、違和感があるようで、レイラが身じろいだ
 景生は指を抜くと、彼女の秘部にキスをした。
「ひゃあっ」
 れろっと蜜液を舐め取った。
 香りはベイクドチーズケーキなのに、味はほとんどなかった。だが、舐め取るたびにとぷっと湧き出すのが楽しい。
 レイラが景生を好いていてくれている証拠のようだ。

「あぁっ、あっ、んんっ……はぁはぁっ……あぁっ、カゲオ、カゲーオ!! そこ、だめですっ」
 レイラは甘い声をあげて悶えた。
 恥ずかしくて死にそうだ。なのに気持ちがいい。
「んんっ、んっ、……はぁはぁ……んんっ、んん……あ、ぁあっ」
 思わず下肢を閉じてしまったところ、彼の側頭部を太腿で挟んでしまった。悪いような気がして足を開くと、まるでもっと舐めてねだっているみたいになる。どうしていいかわからない。
「気持ちいいですぅっ」
 レイラは下肢をM字に開き、両手を彼の後頭部に当てて悶えた。
「ぴちゃっ、れろっ、ちゅっ」
 スリットを舐め取るように動いていた彼の舌が、クリトリスに触れた。
「ひゃあっ。な、何? なんですこれぇっ!?」
 指で触られると痛いのに、舐められると気持ちがいい。これはいったいなんだろう。
 舌の表面のざらざらが、レイラでさえよくわかってない尖った部分を弾くように動かすと、子宮がきゅんきゅん疼き出す。
「あぁっ、はっ、はぁっ、あぁあ……」
 あとからあとから蜜液が溢れる。溶けて崩れて流れてしまいそうだ。
 彼の顎がラビアの上に当たるのも、むず痒い快感を作り出す。
「よかった」 
 彼がふっと息をつくとき、ヘアがそよぐ感触さえも心地よい。
「だ、だめ、です! あぁっ、カゲオ! あぁっ、あっ、あぁっ」
 蜜液がとぷっと落ちた。下腹がきゅんと疼く。クンニリングスだけではいやだ。カゲオのペニスを身体の奥で受け止めたい。
「カゲオ、早く、くださいですっ」

 景生は、ズボンのファスナーを下ろして、ペニスを取り出す。もうぱんぱんに勃起していた。
 ――できるのか。俺に? 処女と童貞なのに。
 肉茎に手を添えて、秘裂に亀頭を押し当てる。
 ――大丈夫だ。膣口の位置は確認した。思いきってやればいい。
 緊張が募ったが、レイラの腰を持ってぐぐっと押す。
 だが、入らない。
 亀頭は大陰唇の上を滑っただけだ。
 あわてて再度試みたが、やはり入らない。
「くっ」
 泣きそうにおろおろしていたら、レイラがきゅっと抱きついてきた。
「ノープロブレム。落ち着くアルヨー」
「ぶわっはははっ。な、なんだよ。レイラ、謎の中国人かっ!?」
 爆笑した。
「ナゾノチュ? 私、日本語、わかりません。カゲオはじめて。私はじめて。ベテラン違う。下手ですよろし」
「そうだよな」
 レイラが自分から腰を揺すって位置を合わせてきた。亀頭が肉のヘコミを捉えている。
 角度を合わせてぐぐっと押しこむと、ぬぷっと先端が沈んだ。笑ったことで、緊張がいい具合にほどけたらしい。
「入った!」
 きついとか狭いとかいうより、熱くて硬い感触だ。
「痛いっ」
 レイラの綺麗な顔がつらそうに歪んだ。身体も緊張して、顔は冷や汗にまみれている。
「あっ。ご、ごめん」
 迷ったが、ぐぐっと力をこめて押し入れると、ドーナツ状の肉の輪がぷちっと音を立ててちぎれ、肉茎がずぶずぶっと沈んだ。亀頭が硬いボール状の子宮口を押し上げる。

 レイラは悲鳴をあげ、彼にしがみついた。
「……っ!!」
「大丈夫?」
「ノープロブレム。問題ない」
 ロストバージンは痛いというけど、それほどの苦痛はなかった。満足感と充足感がすごい。大好きなカゲオを、身体の奥深くで感じていられる。
「動くよ」
 彼が腰をスライドさせた。
 亀頭のエラが、ヒダのつぶつぶと処女膜の残骸を引っかけながら後退していく。鋭い痛みが走った。傷跡を押し広げられて擦過されるのだから、破瓜の瞬間より痛い。
「いやっ、痛い! いやですっ。ストップです」
 レイラは、彼の顎に手のひらを当てるとぐいっと押し上げた。
「えっ? わかった。ごめん。やめるよ」
 ペニスが抜けそうになると、とたんに寂しくなった。幸せな一体感が消えてしまう。続けてほしい気持ちが痛みを上回った。
「やめるだめよろし」
「あははっ」
「むうっ!! 何がおかしいですか!?」
「うわっ、し、締まった。痛ぇっ」
「続けるよろし!」
「サーイエッサー」

「あはは。教官、社長、先生、違うです。くすくす」
 レイラが盛大に噴き出した。そうだった。イエッサーは軍隊や学校で、目上の人を敬うときに使われているのだった。
 笑いの発作が収まらないらしい彼女の膣を、自分のペニスで掻き混ぜていると、レイラの顔が甘くとろけた。
「二人、一緒です。幸せです」
 景生は笑った。
「うん。俺もだ」
 一緒という言葉に、身体を繫いでいる事実を再確認して、きゅんときた。
 レイラはにこにこ笑っている。もう痛くないみたいだ。
 感じてもらうことはできないかもしれないが、はじめてとしては上出来だ。早く射精して終わらせよう。そう思いながら腰を動かす。
「あっ、はぁ。カゲオ、好きですっ、……んっ、んんっ……はぁっ」
 レイラの膣は熱くてとろとろで、それでいて硬くて、なんとも不思議な感触だ。
 つぶつぶプチプチしたでっぱりが一面に生えていて、抜き差しするたび粒々が肉茎を擦ってくる。
 さっき指を入れたときは、処女膜のすべすべしか感じなかったので、こんなにも複雑な形状をした肉穴だったのかと驚いてしまう。
「うっ、ううっ。すっげぇ! ヌプヌプだっ」
 動きがどんどん速くなる。
 男根を押し上げるたびに、乳房がゆさゆさ前後に揺れる。
 乳首にちゅっとキスをするとレイラがひくっと喉を鳴らし、唇を震わせた。
「感じる、ですっ!! あぁあっ」
「うれしいよ」
 喜んでくれるとほっとする。
 痛がる相手をムリヤリになんて嫌だ。
 好き合っている女の子なのだから、二人とも気持ちよくなるほうがいい。

「あぁっ、あっ、カゲオ……いい、いいですっ! あっ、んっ、んんっ」
 彼の亀頭が、レイラの膣奥を抉った瞬間、子宮頚管粘液がドブッと出て、子宮のきゅんきゅんが激しくなった。
「うぉっ、な、んか出た!」
 奥に入れられるときがたまらなかった。
 亀頭が子宮口を押し、身体の内側が彼でいっぱいにされる。
 しかも、前戯でさんざん舐められたクリトリスを、彼の下腹部が押してくる。クリが陰毛に擦られて、身体に痺れてしまいそうなほど気持ちがいい。
「だめっ、だめですっ……あぁっ」
「俺はすっごく気持ちいいっ!
「私もですっ!」
 レイラは腰をぐっと上げた。
 奥が感じることはわかっていたので、もっと奥に入れてほしくて、腰が上がってしまったのだ。
「うわっ。抜けそうだっ」
 彼は中腰になり、レイラの太腿を肩の上に乗せると、上から押しこむようにして律動した。足のつま先が頭上のシーツにつき、結合部を起点に身体を二つ折りにした屈強位だ。
 苦しい姿勢だが、奥が亀頭でゴリゴリ押される。
 目の裏がちかっとした。
 小さな爆発が脳裏で起こり、爆風に行かされそうになる。
「あぁっ、イきそうですっ、カゲオ!」
「えっ? えええ? はじめてなのに?」
「はじめての、気持ちよさですっ」
 こんな快感、信じられない。
 気持ちよすぎておかしくなる。

「ううっ」
 カゲオは興奮した。
 ヒダはきゅーきゅーっと締まるし、子宮頚管粘液はドブッと出る。
 レイラが喜んでくれていることがうれしい。
 満足感と征服感と充足感で、身体の奥がかぁっと熱くなる。
 もう射精寸前だ。
「もうすぐ出るよっ」
「はいですっ!」
「わははっ」
 レイラがかわいくて胸の奥がきゅーっとなる。
 彼女の子宮に精液をぶちまけたい。本能的な欲求と、抜かなくてはという理性が綱引きする。
 欲望がMAXになった。精液が出口を求めて荒れ狂っている。
「出るっ!」
 どびゅっ!
 どぶどぶっ、どりゅっ!!
 びゅくっ!!
 精液が噴き出した。
「あぐっ。熱いっ、あぁぁっ! イくですっ!」
 レイラがガクンガクンと震えた。
 腰がカクカクと小刻みに揺れる。
 腰がさらに高く上がり、ペニスがぬぷっと音を立てて外れた。
 ――やばっ。
 あわてて入れようとしたが、腰がぱすんとベッドに落ちた。
 残念なような、ほっとしたような気分だた。結果的に膣外射精になって、むしろよかったのかもしれない。
 景生は自分で擦って射精を助け、彼女の恥丘に精液を吐き出した。
 金髪のヘアで飾られたヴィーナスの丘や太腿に、白濁液が落ちていく。
 レイラは失神しているのか、目を閉じてぐったりしている。
 すべて射精し終わって、ウエットティッシュで肉茎を拭く。
 レイラが上半身を起こした。
「どうぞ」
「ありがとです」
 ウエットティッシュのボトルを受け取った彼女は、だるそうな様子で下腹部についた精液を拭き取り、身だしなみを整えた。
 部屋着に着替えていたら、レイラが悲鳴をあげた。
「バック! 青です」
「ん?」
 青いカバンなんて家にあったけ? と思ってきょろきょろするが、彼女の視線は景生の背中に当たっていた。
 背中の青あざを見て驚いているらしい。
「ああ、これ、大丈夫だよ。もう痛くないし。ハンバーガー食べようか?」
「いらないです。お腹いっぱい。……帰るです」
「送るよ」
「ノープロブレム」
「ちょっ、レイラ。ハンバーガー、君の分持って帰って」
 ナイロンの袋に入ったハンバーガーを渡す。
「カゲーオ、身体ごめんです。ごめんくださいです」
 レイラは戸口で不器用におじぎをすると、しおしおとうなだれた様子で歩いていく。肩の上でボブヘアが鋭角的に揺れている。
 さっきまで甘い時間を過ごしていたから、態度の豹変にとまどってしまう。
 不安がズンッとやってきた。
 レイラの気持ちがわからない。無邪気で陽気な帰国子女。景生を好きだと言って身を任せてくれた。
 なのにいきなりの塩対応。
 ――好きなんて嘘で、全部仕込みで、俺をからかっていた、とか……。
 明日学校に行くと、景生の裸の写真が張り出され、性獣だとかレイプ男だとか書かれているのではないか。
 それはない。レイラの言葉に嘘はなかった。
 ――……と思いたいけど……。
 ――ええい、考えるのはやめだ!
 冬馬はうがいをして顔を洗ってから、ハンバーガーを食べた。
 冷えたハンバーガーは硬くなっていて、モソモソしておいしくなかった。

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