【2021年7月16日】

異世界(エロ)チート賢者第一章公開!

序章 異世界でのいつもの夜な件
「……っ」
 女の息を呑む音と、衣擦れの音のみが部屋に響いている。
 伊藤雅貴の眼前で、蝋燭の光のみが揺らめく薄暗い部屋で、成熟した美女が一枚ずつ服を脱いでいた。
 マントを取り、その下のノースリーブのシャツを脱ぐと、白い肌が露わになる。下着に包まれたボリュームある胸が揺れた。
 続いてロングスカートに手をかけようとする姿を、雅貴はベッドに腰かけてじっくりと眺めていた。
 前世の女優に勝るとも劣らない美女だ。
 ややダウナーで表情の変化に乏しい彼女だが、だからこそ恥ずかしげな表情は彼の下半身を刺激する。
 こうして彼女を抱くのは初めてのことではない。
 だが、雅貴は一向に飽きるどころか、回数を増すごとに新たな魅力を感じている。
 女にとんと縁がなかったこともあるが、彼女の臍の下に淫靡に瞬く紋様も理由だ。
 ただ。
 それらの理屈は、今この瞬間の雅貴にとってはどうでもいいことだった。
 下着だけを着け、生まれたままの姿になった銀髪の美女が雅貴に近づいてくる。
 その顔はすでに上気しており、彼女が覚えている性的興奮を言葉以上に物語っていた。
「きゃっ!?」
 彼女の手をみ、強引にベッドに押し倒す。
 ベッドに寝かせ、覆いかぶさる。
「あ、うっ」
 手でそっと柔肌に触れるだけで身を捩る。
 大きな反応が返ってくるのか、雅貴が施した紋様のおかげだ。
 この反応が、飽きさせるどころかさらなる深みにはまらせる。
 少し前まで、こんないい思いができるとは思っていなかった。
一章 異世界で女を与えられた件
 気づいたら真っ白な空間に立っていた。
 確かに足元に感触はあるのに、天も地も判別ができない。
 ここがどこなのか。自分は誰なのか。
 それを考える前に。
「伊藤雅貴」
 女性の声で名前を呼ばれた。
 そうだ、俺は伊藤雅貴だ――
 己が何者なのか。名前を呼ばれたことでそのすべてを思い出した。
 これまでの記憶、経験。そして、何があったのか。
「そうか、俺は死んだのか……」
 死に際はあっさりとしたもの。
 いつも通り終電間際まで仕事をして、その帰りに大型トラックに撥ねられた。
 トラックの信号無視のような気もするが確証はない。
 久々の終電帰りだった。それまでは三日間泊まり込みで仕事をしていたからか疲労でふらふらだったので、もしかしたら雅貴の方が信号を無視したかもしれない。だとしたらトラックの運転手には申し訳ないことをしたと思うものの、時すでに遅し。今となっては確かめる術はない。
「そうだ」
 聞き覚えはないが、厳かな声だ。
 思わず背筋がぴんと伸びてしまうような。
 雅貴は三メートルほど離れたところに立つ女性に気がついた。顔はなぜか見えないが、シルエットで女性だと分かる。
「あなたは?」
「我か。我は神だ」
 と、彼女は言う。
「伊藤雅貴。そなたを異世界に転生させる」
 有無を言わさぬ言葉。
 だが、雅貴は落ち着いていた。こういったシチュエーションは昨今流行りのWEB小説などで知っていたからだ。
 仕事に忙殺される日々の数少ない癒しが、異世界チートハーレムと言われるWEB小説の類だった。
「異世界、ですか?」
 自然と敬語で話していた。
 神を自称するなど頭がおかしいのではないかと思うところだが、それを自然と信じてしまうほどの存在感と威圧感。
 理屈ではない。本能のようなものだった。
「そうだ。そなたが好む、剣と魔術の世界だ」
「はあ……」
 よくある導入だった。自分に起きていること、と受け止めるには時間がかかり、生返事しかできない。
 そんな雅貴をよそに、女神はつらつらと言葉を並べたてた。
 雅貴を転移させる目的は、減った魔力を異世界に行き渡らせるため。簡単に死なれては困るので雅貴には特殊能力を与えてもらえるそうだ。
 その力さえあれば、戦争や世界征服くらいはできるだけのポテンシャルがあるとのこと。要は世界を滅ぼしたりしなければ何をしてもいいということだ。
 ブサメン社畜人生に疲れていた雅貴はそれを受け入れた。
 了承したわけではなく、「それはいいなぁ」と夢見心地で考えただけだったが。
 嫁どころか彼女もいない。両親もすでにおらず、天涯孤独の身だ。ずっと社会の歯車としてすり減るよりはよほど魅力的な提案だったのだ。
「そうか、では力を与えよう」
 具体的に返事をしていないが、女神は雅貴が「受ける」と考えたことを読み取ったらしい。
 雅貴に与えられたのは、莫大な魔力とイメージを具現化する想像魔術。
 ようやく雅貴が「現実である」と認識するに至ったのは、四十年コツコツと溜め込んだ老廃物まみれのくたびれた身体が、かつての若々しさを取り戻したことを実感したからだ。
「これでどうだ」
「おお……」
 神が設置した鏡を見ると、雅貴は二十歳前後の姿になっており、不細工だった顔も美形になっていた。
「では、そなたに与えるものについての知識を与える」
 ごう、と頭がぐるぐると勢いよく回り始め、雅貴は思わず膝をついた。
 痛みはない。苦しさもない。気絶することもない。
 ただ、頭に大量の知識が流れ込んで立ち眩みを起こしたのだ。
 これは夢ではない。
 ずっと夢見心地だったものが現実であると、この立ち眩みで思い知った。
 ただ、それでもよい。天涯孤独の身で、死ぬまで誰かの駒として消費させられる人生よりは。
「この力をもって、転生できるのなら……」
 想像魔術。すさまじい能力だった。雅貴次第ではあるものの、これがあればできないことはほぼない、と言えるだろう。
 そして与えられた魔力の量も尋常ではなかったそれこそMAXパワーの出力で二十四時間魔術を使い続けない限りは切れることはない。
 さらに異世界言語翻訳、対病耐性、対毒耐性といった耐性系のスキルまでついており至れり尽くせりである。
 なぜ選ばれたのか自分なのか、といった疑問はあるが、それも今はどうでもいい。
 知らないと困るものでもないからだ。
「では、お別れだ。そなたを召喚せんとする国がある。そなたはその国に行き、自由に生きるがいい」
「ありがとうございます!」
 灰色の過去に比べてバラ色の未来が待っている。
 それを実感したからか、大きな声が出てしまった。
「幸多からん第二の生を」
 女神は雅貴の声に何も言わず、それだけ告げて消えていった。
 すぐに雅貴の視界が光に包まれ始め、まぶしくなって思わず目を閉じようとした、次の瞬間。
「お、おお……」
 雅貴は、石造りの部屋に立っていた。
「成功したな」
 全身を鎧で包んだ者が数名。そしてローブを纏った者が数名。
 それらを左右に従えた、豪奢な衣装を着た青年が一人。
 ここが、女神が言っていた王国なのだろう。
 どこに出るか、どういう経緯で出るかも分かっていたので、雅貴は混乱せずに済んだ。
「ようこそ賢者よ、アルスター王国へ」
 真ん中の豪奢な青年が、威厳のある声でそう言った。
「ここではゆっくりと話すこともできんだろう。部屋を用意してあるゆえ、ついてくるといい」
 青年について歩いていく。
 堅牢な石造りの建物。なんとなく城のような印象を受けた。
 すれ違う者は青年を見つけると廊下の端によって深く頭を下げているあたり、彼の地位はかなり高そうだ。
 メイドや令嬢など様々な人を見かけるが、異世界の住人はみな顔面偏差値のレベルが高い。
 見渡す限り美男美女ばかり。モデルやアイドルクラスがごろごろしている、と言えば分かりやすいだろうか。
 女性はもちろん男性でも、美人を見るのは眼福だなあ、などとぼんやり考えながら、雅貴は青年についていくのだった。


 ところ変わって、王城の応接間。
 雅貴の対面には先ほどの青年。
 豪奢な衣装もさもありなん、彼はこの国の第二王子だという。
 彼の後ろには騎士が二人いるが、護衛であり気にする必要はない、と第二王子は言った。
「改めて自己紹介しよう。俺はアルスター王国第二王子、ライオットだ」
 足を組み、その上で手を組む姿勢がよく似合う。
 改めてみると非常に顔もいい。
「私は……雅貴・伊藤といいます」
「ふむ。承知した、雅貴でよいな」
「問題ございません、殿下」
 雅貴は頭を下げる。
 さすがに王族が目の前にいては、自然と畏まってしまう。これは日本人特有のさがだった。
「我々は、賢者を目的に召喚魔術を行使した。異世界より現れし賢者は、その国に多大なる利益をもたらすと言い伝えられているゆえな」
 ライオットは言う。
「利益とは?」
「異なる世界の知恵には、わが国にはない知啓があるものだろう?」
「なるほど」
 確かに。
 世界が違えば文化が違う。地球でも国が違うだけで文化や風習、常識が違うのだ。これが異世界なのだから……というところだ。
「そして、現れたのが雅貴であった。お前は、賢者か?」
 賢者。賢い者。
 そう問われれば、首を左右に振らざるを得ない。しかし……。
「賢者、なのでしょうね」
「心当たりがあるようだな。いかにして証明する?」
 ライオットは面白そうに腕を組んだ。
「ここで、魔術を使っても?」
 雅貴がそう言うと、騎士たちがにわかに殺気立つ。
 ライオットが右手を挙げてそれを制す。
「控えよ。俺を攻撃するためのものではあるまい」
 ライオットの言葉に雅貴は頷いた。
「許す。やってみせろ」
 王子の許可を得て、雅貴は魔術を行使した。
 想像魔術を使うどころか魔力を操ることも初めてだが、分かる。
 雅貴は魔力を練り上げ、想像魔術を行使した。机に向けてかざした両手の先に、ランプが生み出される。キャンプ用の、ソーラー充電式のランプだった。
「これは、明かりの装置です」
 騎士たちの警戒の視線と、ライオットの興味深げな視線を受けながら、雅貴はランプのスイッチを入れた。
 LEDの輝きが部屋を照らす。
「おお……」
 ライオットは瞠目した。その明るさもさることながら、何より何もないところで魔力がランプを形作り、物が現れたことに。
 騎士たちもただ明るいだけで実害がないことを確認して少し警戒度を下げた。
「これは好きにしてもらって大丈夫です」
 少しだけ手でライオットの方に押しやり、手を放す雅貴。ライオットがベルを鳴らすとローブを羽織った男女が入室し、ランプを手に出ていった。
「そのようなものを作る魔術が使える、ということか?」
「作ることもできる、という魔術です」
「そうか」
 少しの間考えに耽るライオット。雅貴はじっと彼の次の動きを待った。
「よかろう。賢者の価値は今後見極めるとして、お前の身は俺が預かる。そのように手配しろ」
 ライオットは不敵に笑う。
 雅貴の狙い通りだった。彼は非常に頭が切れるという印象に従ったのだが、それは正解だったようだ。
 このあたりは、営業として身を粉にして働いてきた人を見る目が役に立った、というところか。
 ともあれ、雅貴は異世界でひとまずの居場所を得ることに成功したのである。


 それからおおよそ二週間。
 結論から言えば、雅貴の賢者としての地位は、アルスター王国の王宮内で確立することができた。
 想像魔術の力を使えば、なんでも、と言っても差し支えないくらいに様々なことができると分かったからだ。
 女神から与えてもらった力なので雅貴が手に入れたものではないが、元の世界を捨ててまで異世界に来たのだから、遠慮をするのも馬鹿らしいと開き直ることにした。
 まずは実績作りということで、ライオットに上等な剣を一振り用意してもらい、剣の素材を変化させる魔術陣を、想像魔術で一週間かけて作り上げた。
 つまるところ鉄をミスリルに変化させる魔術陣である。
 ミスリルは希少価値が高く魔術との親和性も高い金属だが、その分高価で軍の将校クラスでやっと持てる程度だという。
 そこで雅貴が目をつけたのは、鋼鉄という素材をミスリルに変化させる魔術陣だ。
 そもそも数が少ないミスリルを意図的に手に入れられるということで、ライオットの度肝を抜いた。
 雅貴以外でも金属をミスリルにできる、という点が最大の売りであった。ある程度の魔術の腕がないと使えないとか、ミスリルの価値の暴落とかいろいろあるが、そこは雅貴が関与するところではない。運用する側が考えればいいことだ。
「二週間でこの成果とは驚いたな」
 雅貴の前でワイングラスを回しているライオットは機嫌がよさそうだった。
 一週間前に提出した、金属をミスリルに変える魔術陣は、関係者を大いに驚かせたそうだ。
 それから一週間の検証でその効果が実証されたがゆえの、ライオットの上機嫌さだった。
「満足してもらえたなら、俺も頑張ったかいがあったよ」
 雅貴はワインを手酌で注いで口に含んだ。
 王族が飲むだけあって、飲んだことないような極上の風味が口の中に染みわたる。
 第二王子と酒を飲み、ため口での会話が許されている。
 これがたった一週間の変化だ。
 それだけ認められたのだと同時に、これに胡坐をかくと危ういな、と雅貴は危機感を覚えていた。
 心を許してもらえているのだと素直に受け止めてしまうような年齢はすでに通り過ぎている。
 今はライオットから「敬語を使わなくていい」と言われたのでそうしているだけだった。
「充分だとも。それで、ほかにも何か腹案はあるのだろう?」
「あるにはあるよ。今は仔細を詰めてるところ」
「そうか。それができたらまた俺のところに持ってくるといい」
「できたらな」
「無論それでよい。二週間と考えたら充分すぎる成果だ」
 ライオットからの手放しで褒める言葉。リップサービスが含まれていることを加味しても、悪いものではなかった。
 営業の仕事していたころは、褒められることなどめったになかった。
 なので、お世辞だと分かっていても正面からの賞賛の言葉は心地よかった。
「雅貴よ」
「ん?」
 ふと、ライオットがグラスを置いた。
「お前が今後も成果を出していくのならば、わが国としてはなんとしてもお前をつなぎ止めねばならん」
「ああ……でも報酬はたっぷりもらったぞ?」
 先ほど、ライオットより目録を受け取ったばかりだ。そこには日本円にして三千万、さらにはこの魔術陣を使ってできたミスリルを市場に流した場合には、売却額の五割を支払うと書かれていた。
 そもそも、一日五時間を一週間続けて完成させた魔術なので、時間給換算したら百万近くに達する。たった一週間の労働で破格の報酬だ。
 フルタイムじゃなくたった一週間でこれだけ稼げるのならば充分すぎる。その後は何もしなくてもお金が振り込まれることもあるというのだから至れり尽くせりだ。
 ……なのだが。
「金はもちろんだが、それ以外にもこの国にいたいと思わせる必要があると考えている」
 と、第二王子は言った。
 あけすけのない言葉だった。ライオットのことだから、わざとだろう。
 雅貴は別に察しが悪いわけではない。
 ライオットが何を言っているのか、おおよその予想ができた。
「女か?」
 雅貴は努めて冷静に、内心では脈を早まらせながらそう尋ねてみた。
 自慢ではないが雅貴は童貞だ。前世ではとんと女性には縁がなかった。一生独身で終えると思っていた。
 風俗に行くことを考えたのは一度や二度ではないが、結局踏みきれずに今に至っている。
 ただ、ここは異世界。雅貴は生まれ変わり、容姿から変わった。
 ならば、過去の自分をいっそ手放してもよいと思ったのだ。
 ビビる気持ちは今もある。もしかしたらライオットは、女に不慣れな雅貴を馬鹿にしているのではないか。疑心暗鬼さえ首をもたげる。
 だが、いつまでも縮こまっていたら、この世界でも童貞のままだ。
 それは恐ろしいと思った雅貴の、勇気を振り絞った一言だった。
 そんな雅貴の内心を察したのかは定かではないが、我が意を得たライオットはしっかりと頷く。
 表情や声色から、雅貴が今の「女か?」の一言を発するのに結構な勇気を要したのだとライオットは気づいていた。
 女には縁遠かったか、あるいは少々苦い思い出があるのか。
 女に対して慣れていない男によく見られる反応。ライオットの周囲にはあまりいない珍しいタイプだが、それでもいないわけではないので知っていた。
(珍しいな)
 そういう男に共通するのは、顔の造形に自信がない等の分かりやすいコンプレックスを持っていることが多い。
 しかしライオットから見ても、雅貴の顔の造形はかなり優れている。
 絶世、とまではいかないものの、美男美女揃いの城内においても平均以上に位置しているのは間違いない。
 これほどの男ならば女は黙っていても寄ってくるはずだが……。
(まあ、いい)
 彼の過去に何があったのか。
 それについては興味はあれどどうしても知りたいことではないし、今尋ねることでもない。
 今この瞬間ライオットにとって重要なのは、コンプレックスがあるらしい雅貴が、勇気をもって乗ってきたことだ。
 ならば、ここはあえて話を進めてしまった方がよいだろう。
「話が早いと助かるな。そういうことだ。どうだ、どんな女が好みだ?」
 性癖を話すのには羞恥心もあったが、今さらだろう。彼ならば、知ろうと思えばいくらでも知る手段はあるだろうから。
「そうだなぁ……」
 魔術陣を提出した後は、ある程度の範囲に限って城内を自由に歩いてもいいと許可を与えられた。
 相変わらず移動には必ず護衛という名目の監視が必要だったが、これまでとは格段に行動範囲が広がったことと天秤にかければ、どちらがいいかは言うまでもなかった。
 広がった範囲を探訪するようにぶらぶらと散歩をしていると、様々な美女とすれ違って眼福だった。
 その中でも……。
「ああ、名前どころかしゃべったこともないんだけど、いいなぁ、って思った人はいたな」
「ほう?」
 雅貴の言葉に、ライオットは興味深げだった。
 女を与えるという意味では、当然の興味だろう。
「銀髪の人だな。フードを被っててあんまり見えなかったけど、なんかいいなぁ、って」
 顔を見ることができたのは一瞬だけ。確かに周りと同じくらいに美形ではあったが、とびぬけたものではなかった。
 なので理屈はまったくなく、雅貴がなんとなくそう思っただけ、というもの。
「そうか。ほかに条件などはあるか?」
「条件? そうだなぁ……俺が抱いても問題のない女かなあ。例えば人妻とか婚約者がいる女とかは、こじれるからごめんだ。後は、納得の上で来てくれるとなおいいな」
 不倫や浮気とはならず、無理やりでもない。
 雅貴が出したのはそういう条件だった。
「ふむ……」
 考え込むライオット。
 心当たりがあるのだろうか。ヒントは銀髪のフード、だけだったが。
「分かった、悪くないヒントだった」
「ならいいんだけど」
「ともかく、近いうちお前に女を用意する。たとえ孕ませても問題ない女をな。楽しみにしていろ」
「マジか。楽しみに待ってるとするよ」
「うむ。決して落胆はさせないと約束するとも」
 ライオットは自信満々だった。
 その後は他愛のない話に興じた。
 うまい酒とうまいつまみ。そしてホストとしても優秀なライオット。
 強制的に連れていかれる会社の飲み会とははっきり言って次元が違う。
 人と酒を飲んで楽しいと思ったのは久々の雅貴だった。


「誰かあるか」
 雅貴との晩酌を終えて執務室に戻ったライオットは、椅子に座って鈴を鳴らす。
 すると、天井から黒づくめの男がおりてきた。
 彼はライオット子飼いの諜報の者だ。
「お呼びでしょうか」
「ああ。雅貴が銀髪のフードを被った女に目を惹かれたそうだ。誰だか分かっているか?」
「はっ。把握しております」
「情報は?」
「こちらに」
 詳細に簡潔にまとめられた紙にさっと目を通し、ライオットはそれを引き出しにしまった。
「なるほどな。では、明日の昼にこの者を俺の前に連れてくるよう手配しろ」
「承知いたしました」
「頼んだぞ」
 影の者は短く告げて、さっと消えていった。
 これで、明日には雅貴の目に留まった者がやってくるだろう。
 ひとまず最重要案件は片付いた。
 ライオットは酒精の弱い酒を飲んで喉を潤す。
 雅貴関係のあれこれは現在の王国にとって重要な案件。となれば管轄には大きな権力が必要であり、現時点でもっとも彼と会話しているのはライオットだ。
 数多く言葉を交わし、雅貴の大体の人となりは理解していた。
 雅貴の力は見た。
 想像魔術というのも説明してもらったが、規格外にもほどがあった。イメージしたものを魔力がある限り現実のものとする。
 ライオットも魔術についてはひとかどの自信があるからこそ分かるが、とんでもないものだ。
 魔術陣を作ったり、ランプを作ったりというのが最初だったが、攻撃魔術もできるというので見せてもらった。
 異世界の知識と無限に近い魔力、そして想像魔術の力。
 これが合わさった雅貴の攻撃魔術の威力は、一撃で戦況をひっくり返すほどの威力を持っていた。
「とんでもないな。確かに賢者を要望したが、そう大仰に呼んでまったく格負けせんとは」
 彼の性格と考え方もおおよそ把握できている。
 規格外の力と若い見た目に反して規律と秩序を重視し、保身を第一に考えていると分かる。
 アルスター王国に益をもたらすことで、国が雅貴という一個人を大切に扱い、後ろ盾になってくれるだろうと考えているのではないか。
 現に今、ライオットは雅貴を保護し、王宮で囲うことを真剣に検討している。半ば決定事項であると言ってもいい。
 彼を野放しにするなど考えられないし、放逐して他国に渡すなどもってのほかだ。
 雅貴がアルスター王国にいたいと思わせるには、正当な評価と好待遇。
 そして。
「雅貴が男で助かったな」
 どうやったら彼を縛りつけられるか。
 そう、シンプルなのは女だ。分かりやすく陳腐で、しかし効果的な手。
 雅貴の考え方からすれば、正当な評価と好待遇という二点さえきちんと満たせばアルスター王国にいたいと思わせられるだろう。
 しかし、女で縛りつけられるならば、話は早い。
 仮に百人用意しろと言われて、その通りに労力を払ったとしても、まったく痛くはなかった。
 王国にもたらす益を、未婚の貴族令嬢百人で買えるとするなら、収支は間違いなくプラスだ。
 とまれ、女を与えるとあけすけに話した結果、雅貴も承知して乗ってきた。
 雅貴にアルスター王国を困らせるつもりはなく、ライオットの意図した通りに飼われる気でいるということだ。
「さて……雅貴が気になったという女。果たしてどんな人物か」
 第二王子なのだから、命令で言うことを聞かせるのは楽だ。だが、彼は不和を望んでいない。
 であれば、彼に引き渡す女には納得してもらった方が絶対にいい。雅貴の心証はいいに越したことはなかった。
 ライオットはワインを飲み干すと、寝る準備を始めた。
 明日も午前中から仕事が詰まっているから。
 その翌日、昼。
 ライオットの前で、件の女性がもっとも尊き血筋に対する礼を取っている。
「エレナ・ノーグラインで間違いないな」
「はい、殿下」
「面を上げ、楽にせよ。直答を許す」
「ありがたき幸せ」
 ライオットの許しを得て、エレナは立ち上がった。
 改めてエレナの顔を見たライオット。
「ふむ……」
 確かに美女である。少々ダウナー系で暗めの雰囲気。女の特徴の起伏は目立つものの、線自体が細いからか脆さも感じる。
 王城は他国の賓客を迎えることもあることから、基本的に男女問わず見目麗しい者が働き手として選ばれることが多い。
 そしてそういう者を集めるには、やはり優秀な血を受け継いできた貴族がどうしても多くなる。
 その平均レベルは確実に守っているものの、とびぬけているわけではない。
 さらなる美女に心当たりはあるものの、雅貴が気になったのが彼女というのならば問題はない。
「殿下、私はどのようなご用件で呼び出されたのでしょうか?」
 少しして、エレナからそんな質問が飛び出た。
 もっともな疑問だ。
 呼び出したライオットは、顔をじっと見ていただけなのだから。
「雅貴・伊藤は知っているな?」
「はい、存じています。賢者様よりご提供いただいた魔術陣はすばらしいものでした。非常に丁寧に、しかし無駄を省いて作られておりまして。あれだけのものを作り出すのは、今の魔術研究所ではとても……」
 熱気のこもった表情で饒舌に語るエレナは宮廷魔術師であり、魔術研究部門副部長だ。
 雅貴が作った魔術陣を研究・解析する仕事に関わるのが当然の立場だ。
 彼女の様子から、資料通り魔術バカであると再確認したライオットである。
 王子の視線を受け、エレナははっとした表情で口を閉じ、頭を下げた。
「……失礼いたしました」
「よい。現場からの率直な意見は有意義なものだ」
「寛大なお言葉、感謝に堪えません」
 再びの沈黙。
 そして。
「俺は今、雅貴・伊藤をこの国に縛りつけるための楔を探している」
 ライオットは唐突に、切り出した。
 一見なんの脈絡もないように思えた、その言葉。
「つまり、私に、その楔役が求められているわけですね」
「そうだ。できうる限り最大限の効果を持つ楔が欲しい。そのためにはどうすればよいか、分かるな?」
「……はい」
 エレナはライオットの言葉の意図をくみ取って見せた。
 さすがに王国での有数の学者集団の副部門長。頭の回転も早く理解も正確だ。
 とはいえ、さすがに子どものことだと思い至ったエレナは、返事に一瞬の間を要したが。
 つまるところ、子どもができた場合は産め、と言われているのだからさもありなん。
 その理屈はエレナとしても納得できてしまうものだ。
「無論ただでとは言わぬ。俺の権限で、お前の部署に割り当てられている予算の増額について認めさせてみせよう」
「…………!」
 魔術研究はどの国でも根幹となる基礎研究だ。
 魔術レベルの差がそのまま国力の差、と言っても過言ではないくらいには。
 なので膨大な金額が割り当てられていたが、それをさらに増やしてくれるのだという。
 エレナは非常に熱心な研究者なので、予算は常にカツカツという問題に直面していた。
 予算増額は以前から幾度となく上司に訴えていたものの、取りつく島もなく却下されていた。
 現時点でも莫大な金額を魔術研究部門へ払っているため、さらなる予算増額はよほどの例外がない限りは不可能なのだろう。
 実際、宰相と財務大臣も、魔術研究が重要だと分かっているからこそ国家予算からかなりの額を魔術研究部門に割り当てており、それの増額など簡単には頷けない。
 第二王子ライオットの鶴の一声は、そのよほどの例外、に当てはまるのだ。
「それに、雅貴と話をしてみたいそうだな。俺がヤツとの接触を許しているのは限られた人間のみだが、あてがい女になるのならばその辺は思う存分やってくれて構わんぞ」
 エレナが雅貴に感銘を受けていることはすでに分かっていた。
 ライオットの子飼いの諜報は優秀で、エレナについての情報はほぼすべて網羅していると言っていい。
 ゆえに、彼女が求めるものをピンポイントで提示することができた。
「承知いたしました。お引き受けいたします」
 二つの効果的な餌に釣られることを、逡巡すらせず即答したエレナに、ライオットは満足げに頷いた。


 今日の夜、女が部屋を訪れる――
 ライオットの使いからの伝言を聞いて、雅貴はベッドに座って待っていたわけだが。
 ライオットと晩酌を楽しんだ翌日の夜。二十四時間しか経っていないのにもう女を手配したというのだから驚きだ。
「賢者様。エレナ・ノーグラインと申します。本日より、賢者様の伽を務めさせていただきます」
 部屋を訪れた女を見て、雅貴は改めてライオットが非常に優秀であると実感した。
 深く被っていたフードを取って露わになったのは、銀髪の女性。
 ローブの上からも分かる女性らしい起伏に、やや幼さを感じるものの、前世基準なら女優もかくやという美貌。
 以前雅貴が見かけた「いいな」と思った女性だった。
「どうぞ、思う存分私の身体をお楽しみくださいませ」
 ローブを脱ぎ払って現れたのは、スケスケのドレスだった。
 ドレスの内側の下着が丸見えになっている。
 恥ずかしがっていないところが少々違和感はあるものの、雅貴の視線は男好きする身体に釘付けだった。
(すごいなこれ……しかし)
 ただ伽を担当するだけなら、そういう侍女もいるはずだ。
 だが彼女は侍女の格好はしていなかった。
 つまり雅貴が見かけただけの侍女ではない仕事をしている女性を見つけ、ここによこしたのだろう。
 その表情からは、無理やりやらされている、という悪感情は見受けられない。
 というよりも、少々ダウナーで表情の変化に乏しい、という方が正しいか。
 自己紹介をして「伽をする」と告げた時も、その表情にも声色にも、抑揚らしい抑揚がなかったのだから。
 感情を隠しているわけではなく、もともとそういう性質なのだろう。
 雅貴は特に、彼女の意志を確認するつもりはなかった。
 ライオットが用意した女性なのだから、疑うことに意味はないのだ。
(やっぱりドンピシャだな)
 彼女よりも美人な女性はそれなりにいたが、それでも雅貴が気に入ったのはエレナなのだ。
 せっかく美味しい思いができるのだ。
 思う存分楽しむつもりだった。
 そんなことよりも。
(このために作った魔術だ……早速、使ってみるか?)
 ただ彼女と寝てもきっと充分に満足できるだろう。
 しかし、それではつまらないと思った雅貴は、一計を案じたのだ。
 せっかく持っている想像魔術。有効活用しなければもったいない。
 雅貴が作り出したのは、性病予防魔術、インスタント催淫魔術、精力増強魔術の三種類だ。
 性病予防魔術は自身と相手に使用、インスタント催淫魔術は相手に、精力増強魔術は自分に使うものだ。
 指先でくるりと一度円を描くと、三つの魔術陣が空中に浮かび上がった。
 その様子をエレナが食い気味に見つめているのに気がついたが、まずは魔術を行使するのが先決だ。
 性病予防魔術を、雅貴自身とエレナに。
 精力増強魔術を雅貴に。
 インスタント催淫魔術をエレナに。
 効果を試すのは初めてだが、テストの必要性は感じていない雅貴である。なにせ想像魔術は、自分が思った通りの効果を発揮するのだから。
 ともあれ、性病予防魔術と違い、ほかの二つの魔術はいきなり最大限の効果を発揮するわけではなく、徐々に効果が強くなるようになっている。
 今回は盛り上げるためにそういう風に魔術のパラメータを設定した。細かく変更できるように作ってあるのだ。
「じゃあ、こっちに来て」
 雅貴の魔術に集中していたエレナは、声をかけられてはっとした様子で近づいてきた。
 エレナを呼んだことで、彼女と対面してから初めて声を発したことに気づいた雅貴。
 しかし、今さら自己紹介などするとなんとなく白けると思い、そのまま続けることにする。
「それでは、ご奉仕いたします……」
 表情の乏しい顔で、抑揚のない言葉を吐きながらも。
 ベッドに腰かけた雅貴の正面からしなだれかかるようにしながら腕を首に回すエレナの行動は、なんだか背徳的で妖艶だった。
 エレナはためらいなく顔を雅貴に近づけ、唇を重ねる。
 雅貴にとって、初めてのキスであった。
 エレナから。
 雅貴から。
 エレナから。
 雅貴から。
 お互いに唇を押しつけ合う。
 予想以上に積極的なエレナに押し上げられるように、雅貴もむさぼるように唇を重ねる。
 それからしばらく唇を重ね合い。
 気づけば自然と、舌と舌を絡ませ合っていた。
 なんとも言えない感触に陶酔してしまう。
 唾液が混ざり、ぴちゃぴちゃと水音が部屋に響く。
 いわゆるディープキスというものだ。
 キス自体が初めてなのだから、ディープキスも当然初である。
 エロ漫画などでは、気分を高める導入として、また合体の最中にクライマックスに向けて描かれることが多い。……という印象の行為だ。
 ただ実際に体験してみて、これは想像以上にエロかった。
 気づけばどのくらい、舌と舌をじゃれさせただろうか。
 二人が唇を離すと、つ、と唾液の糸が架かった。
 続いてエレナは雅貴の股の間にしゃがみこむと、ズボンの間から雅貴の一物を取り出した。
 外気に触れた雅貴の一物に、エレナは思わず息を呑む。
 これを口に含むのか。
 ちゃんとできるのか。
 そんな疑問が鎌首をもたげたのだ。
 だが、エレナとしてはここで止まるわけにはいかない。自身の目的のために。
 やり方はきちんと調べてきている。
 エレナは、男根に手を添え、口を近づけた。
 ちゅ、ちゅ、と数度キスをしてから、裏筋に舌を這わせる。
「う……っ」
 雅貴は思わず天を向いた。
 背筋がぞわぞわした。
 知らない快楽だった。
 ぺろぺろと舐められる快楽に痺れながらも見下ろすと、雅貴を見上げていたエレナと目が合った。
 彼女は雅貴の目をじっと見つめながら口を開け、陰茎をゆっくりと口内に含んでいく。
 口の中のぬくもりと、肉棒全体を這うぬめぬめとした感触。
「お……お、おう……」
 思わず声が漏れる。
 耐えられるはずもなかった。
 ……のちに、エレナの口淫は比較的つたなかったのだと気づくことになるが、今の雅貴にそんな余裕はない。
 我慢どころの話ではなかった。
 つたないのも比較的、であって、雅貴にとっては極上の快楽だったのである。
 頭を動かして口の中全体で陰茎を擦り上げるエレナに、雅貴はすでに限界を迎えていた。
「んぶ!?」
 雅貴はエレナの頭をむと、自身の腰に押しつけた。
「うぐ、おああ……!」
 そのまま彼女の喉に向けて、思う存分吐き出す。
 びゅるびゅると精液が陰茎を通過する快感に、雅貴は口を閉じることも忘れて異世界に来て初の射精に酔いしれた。
「んん、んぷぅ……」
 雅貴の射精を喉で受け止めるエレナは、口の中でチ×ポが脈打つのを感じながらも、吐き出される大量の精液で溺れないようにするので精いっぱいである。
 雅貴にとってもエレナにとっても長かった射精が終わると、エレナは陰茎から口を離す。
「ん、くっ。……けほっ、えほ、げほっ……」
 一気に飲み込んでから、エレナは改めてせき込んだ。
 口の中に精液を入れたまませき込めば、吐き出すことになってしまう。
 伽をさせてくれ、と宣言して射精させたのだから、それを吐き出すなどありえないと認識していたからだ。
 射精の快楽に打ち震えていた雅貴と視線が合う。
 肩で息をしながら、エレナは口を開けて自身の口内に何もないことを見せつけた。
 吐き出さずにすべて飲み込んだことを示すために。
 雅貴にとっては初めてのフェラ、初めての口内射精。そしてザーメンを飲ませたことになる。
 その事実に感動と興奮を覚えた雅貴は、エレナをそっと立たせ、自身の股の間に後ろ向きに座らせた。
 彼女の扱いが丁寧だったのは、その感動ゆえ。
 ちょうどバックハグの形である。
 雅貴より頭一つ低いエレナは、ちょうどすっぽりと腕の中に収まった。
 前世に比べて身長も伸びているからだろうか。
 まあ、サイズ感的にちょうどいいので文句などない。
 童貞の雅貴にはあまりに刺激の強い、女の生の匂い。
「あっ」
 衝動に任せて、雅貴はエレナのブラを外す。
 ぶるんと大きな乳房が露わになる。薄い桃色の先端。
 初めて生で見るそれに、一度欲望を吐き出してスッキリしたはずの雅貴のチ×ポは、それを感じさせない勢いで熱を帯び、いきり立った。雅貴自身の興奮もあるが、それ以上に精力増強魔術が作用した証だった。
 エレナの乳首は雅貴のインスタント催淫魔術によってすでに尖っていた。
 そっと触れると、エレナはびくりと身体を跳ねさせ、捩る。
 わずかに漏れた吐息が、雅貴の耳に届いた。
 そのまま、エロ漫画やAVで見た知識を思い出しながら乳首を弄る。
(感じてる……俺の手で、女が感じてる!)
 その感動は、雅貴にとっては筆舌に尽くしがたいものだった。
 バカじゃないのか……笑いたければ笑えばいい。こちとら生まれてこの方女に縁がなかったのだ――そう、頭の中で聞こえた幻聴に反論する。
 これまでは友人らとの酒の席などで、性生活の暴露話になるとどうにも口数が減って居心地が悪かった雅貴。
 だが今は、それらにも参加できる自信がついていた。あいにく、もうその機会は二度と訪れないが。
 これらの思考はすべて、エレナの乳首を愛撫するのに夢中になっている傍ら、思考の隅で行われたことだ。
 頭の中は指先を通して伝わる乳首の触感に支配されている。
 鼻息が荒くなっていることにも気づかず、夢中だった。
 あまりにがっつきすぎてむしろ勢い余っているが、エレナの方もそれを気にする余裕はないようだ。
「はっ。あ……ああっ」
 一方、雅貴に身体をまさぐられたエレナは、ピンク色に染まっているかのような吐息を意図せず漏らしてしまった。
(何、これ……おかしい、こんな……)
 端的に言って未知だった。
 まったく知らない感覚が身体に刻まれている。
 自分で自分の身体に触れたこともある。
 けれども、ここまで感じることはなかった。
 気持ちよくないわけではないが、繰り返したい、と思うような快楽ではなかったのだ。
 だが今は、完全に想定外の快楽に身体の制御が利かない。
 その様子が雅貴の性欲を燃え上がらせ、ついにたまらなくなったらしくベッドに押し倒されて胸にむしゃぶりつかれた。
「ああっ!」
 元中年で同時に童貞だった雅貴は、母性の象徴に我慢できなかったわけだ。
 片方の乳首を吸われ、舐められ。もう片方の乳首は指で転がされたりつままれたり、こね回された。
(……うそっ……!)
 ふと、雅貴とエレナの目が合った。
 雅貴の目に映ったのは、顔を赤くし、快楽に身もだえるエレナの姿。
 エレナの目に映ったのは、乳首をしゃぶって興奮を高めている雅貴の姿。
 視線が合ったのをきっかけに、胸を弄っていた手がショーツの下に潜り込んできた。
 するりと手が滑り込む。ごつごつとした手が陰部の上を這いまわる。
「ん……あ!?」
 下半身が、異性どころか他人に初めて触れられている。
 指の動きに合わせてエレナはぶるぶると身体を震わせてしまう。
「生えてないのか……」
 乳首から口を離した雅貴がそうつぶやいた。
「貴族の女にとっては不浄なものとされているので……剃るものなのです……」
 息を切らし気味にエレナは応じた。
「なるほど、そうなのか」
「はい……」
 そういうしきたりというか習慣というか、そういうものがあるのだ。
 貴族であることを教えたのも今だし、雅貴が知ったのも今だ。
 自己紹介もそこそこに情事が始まってしまった。
「ただ」
「ただ?」
「私は、もともと生えない体質なので……ひうっ!?」
 エレナの言葉を契機に、反対の乳首が強く吸われ、悲鳴のような声が出てしまった。
 エレナの口から漏れる声とパイパンの事実がさらに気分を盛り上がらせ、雅貴はエレナの身体をむさぼる。
 にちゃ、と水音。
 その音で、エレナは自分が濡れていることを自覚した。
 実際に雅貴は、ただ濡れているどころかびしょびしょであると感じていたが。
(こ、こんな……)
 これほど濡れたことなどなかった。自分で触った時は、多少湿った程度だった。
 ここまでで、エレナは自分の身体がおかしいとなんとなく思っていた。なぜおかしいのかは分からなかった。
 手が下着の間で蠢き、割れ目に指が添えられると、ゆっくりと中に差し入れられた。
 初めて異物が入り込む感覚。さすがに自分でも入れたことはなかった。
「あ、あぁ」
 エレナは吐息に似た声を漏らす。
 ぴんと尖った乳首は今も吸われて舐められ、歯で軽くまれては唇で挟まれる。
 秘裂の中に差し込まれて出し入れされている指は軽く曲げられおり、秘肉を撫でている。
「ん、ああ。あっ、あっ……あああ……あっ!」
 どれだけ愛撫されていただろうか。
 エレナは軽く身体を跳ねさせ、震わせた。
 軽いオーガズム、いわゆる甘イキというやつだ。
 身体を上気させてぴくぴくと軽い痙攣をする裸の美女を前にして、雅貴はすでに限界だった。
 コントロールが利かない。
 身体を動かすことができないエレナの下着を脱がしていた。
 雅貴にとっては初めて見る女性の秘部。
 エレナが言った通り、陰毛は生えておらずつるつるだ。
 ぱくぱくと秘唇が動いている。
 雅貴がすでにパンパンに張り詰めた怒張をあてがうのが見えた。
 これから、犯される。
 雅貴に、初めて男に、身体を許すのだ。
 分かっていたことだが、ついにこの瞬間がやってきた。
 あてがわれた熱い杭が、少しずつ割り開いて入ってくるのを感じる。
「――っ!」
 その後は、一瞬だった。
 一気に奥まで貫かれ、一番奥を押しつぶされた。
 処女を失った痛みは確かに感じた。
 そしてその直後、衝撃と共に快楽の波が、エレナの頭を焼く。
「あっ……あぎっ……ああああっ!」
「おっ、おお……?」
 思わず声が漏れたのは、雅貴もエレナも同様だった。
 雅貴は――絡みついて搾り取るように動く秘肉。強い締めつけ。極上のぬくもりに。
 エレナは――大きな一物に貫かれた感覚と痛み、そして硬い肉棒がいろいろなところを抉る感覚に。
 どうやら雅貴はすでに限界だったようで、彼女にのしかかるように激しく腰を打ち下ろし始める。
 ずんずんと叩きつけられるたび、エレナは自分の腰がベッドとの間で跳ねているのと、結合部からぴゅっ、ぴゅっと透明な液が噴き出しているのが見える。
「あっ! あっ! ああっ!」
 勝手に漏れる声。
 自分の身体が見せている反応と強制的に刻み込まれる快感が、エレナ自身が信じられなかった。
 いわゆる種付けプレスだ。
 決してエレナを思いやったピストンではない。ただただ、陰茎をエレナの膣壁に擦りつけ、自身の欲望を解き放つためのもの。
 雅貴は自分本位に身体を動かし、やがて限界に達すると、勢いよく腰を打ち下ろし、エレナをベッドに押しつぶした。
 チ×ポがエレナの中でひときわ肥大するのが分かった。
「うおおっ!」
「あああぁぁんっ!?」
 身体の中で、熱い肉棒が跳ねる。
 腰を密着させ、一番奥までチ×ポで抉ったまま、雅貴はまるで何かをこらえるように、身体をびくびくと痙攣させている。
 そして、奥に密着した先端がどろりとしたものを吐き出しているのが感じられた。
「ひあ、あ……」
「うっ……うっ……」
 身体の痙攣によってエレナが漏らした悲鳴のような嬌声と。
 オナニーでは感じられなかった射精の快楽によって漏れた雅貴の呻き声が重なった。
 雅貴はチ×ポから精液をさらに吐き出させんと、先端を一番奥に押しつけたまま上下左右に、時には円を描くように腰を振った。
「あっは……あっ……」
 膣内をぐいぐいとき混ぜられ、エレナの口から熱い吐息が漏れてしまう。
 カリで膣壁を擦られ、それに合わせてどく、どく、と熱い塊がリズムを刻みながら吐き出されていく。
「はあっ、ぁぁ……」
 雅貴の意識はエレナの胎内に集中しているのだろう。
 大量の精液が、女を妊娠させるための粘液が、エレナの奥で何度も何度も弾けている。
 実際にはそんなに時間は経っていない。
 しかし、その絶頂は数分にも感じられた。
 すでに限界だったエレナは、少しずつ遠くなっていく意識に抗えなかった。ただ、自分が他人の男のものになった、という事実だけが、最後に残った。
 一方、そんなエレナに気づく余裕もない雅貴は本能に任せて腰を動かし続けていた。
 最後の一滴までエレナに注ぎ込むと、雅貴は徐々に硬さを失い始めたチ×ポに合わせて冷静になっていく。
 いわゆる賢者タイムだ。
 それに合わせて結合部を見て……ぎょっとした。
 自分でも信じられない量のザーメンが出たようで、収まりきらなかった白濁液が男根と膣口の隙間から漏れている。
 その白濁に、紅が混じっていたのだ。
「まさか……」
 エレナに挿入する時に、抵抗を感じたのを思い出した。
 そして、彼女が一瞬、悲鳴のような声をあげたことも。
 改めて見下ろすと、エレナはぐったりと横たわっている。気を失っているのか目の焦点は定まっておらず、ぼんやりと肩で息をしている。
「処女だったのか……?」
 エレナの年齢は聞いていないが、顔や体の成熟具合からして間違ってもティーンではない。
 だからこそ、処女ではない、と思っていたのだが、どうやらそれは思い込みだったようだ。
 快楽の限りを味わった陰茎をエレナから引き抜くと、ごぼりと大量の精液があふれた。
 どれだけ注ぎ込んだのか。
 自身も童貞ではあったものの、成人とはいえ処女のエレナに対して遠慮も容赦もないものだ、とあきれるしかない。
 とはいえ、顔も身体も火照らせて上気させ、ぼんやりと快楽に浸って横たわるエレナを見下ろすと、得も言われぬ充足感が雅貴を包んでいることは否定できなかった。
 雅貴はエレナに布団をそっとかけると、魔術で身体を清めてから服を着て部屋を出た。
 なにせ、射精直後は収まっていた性欲が、再び盛り上がってきそうだったから。
 精力増強魔術の効果は強大だった。今のうちに、別の解消方法を見つけておく必要が、あった。

「入っていいぞ」
 くぐもった声が、雅貴の耳に届く。
 自身の護衛として居室の近くに待機していた近衛兵に連れてきてもらったのは、第二王子ライオットの私室。
 扉をノックしようとしたところで、中から声をかけられたのだ。
 どうやら、雅貴が訪ねてきたことをなんらかの方法で事前に知っていたらしい。
 まあ、そういった監視要員がいてもおかしくはないし、なんならそういった仕掛け、仕組みがあっても驚かない。
 ともあれ、入ってもいいのであれば遠慮はしない。
 扉のそばに立っている騎士に目配せし、彼が頷いたのを確認してドアを開けた。
「楽しんだか?」
 ライオットはソファに腰かけ、酒を嗜んでいた。
 顔を見て開口一番、王族らしからぬ少々下品な顔でそう尋ねてきたライオットに対し、雅貴もにやりと笑った。
「おかげさまでな」
 雅貴もまた、品のない答えを返した。
 ライオットの手回しあってのことなので、隠す意味すらないのだが。
「そいつは何よりだ。どうやら無事気に入ったようだな」
「おかげさまでな」
 何を見てそう判断したのか分からないが、ともあれライオットの言葉は正解だ。
 気になった女性が伽をしにやってきて、まさに思う存分楽しんできたところだ。
 なので、あけすけに行ってしまおうと開き直れた。
 童貞丸出しの無様な初体験ではあったが、雅貴の視点では、インスタント催淫魔術によってエレナも快楽に溺れさせることができたように思う。
「エレナ・ノーグラインは、お前が呼び出した時には基本的に応じる契約をしている」
「へえ? そうなのか」
「ああ」
 雅貴がそういう反応をしたことで、エレナとはほとんど言葉を交わさずに情事に及んだことを察するライオット。
「緊急事態を除いて、だがな」
「そりゃそうだよな」
 相手が切羽詰まっている時にまで呼び出そうとは思わない。
「昼間は何してるんだ?」
「ああ。ノーグラインは宮廷魔術師として研究職として働いている」
 なるほど。昼間も働いているのならば、なおのこといつでも呼ぶ、というわけにはいかない。いくら、呼び出したら応じてくれるとはいえ。
「もっとも、妊娠させても問題ないどころか、俺としてはそれを推奨しているくらいだ。物理的に働けなくなることもあろうな」
 そういうこともあろうかと雅貴は予想していた。
 なのでそれ以外の時間についての選択肢を増やしたい、という思いも、雅貴にはあった。
 そういう時のためにここに来たのだ。
「それで、なんの用だ?」
「実は……」
 雅貴にとっては赤裸々なぶっちゃけである。
 だが同時に、今さらな話でもあった。
「なるほどな」
 エレナが一発でダウンしてしまった。しかし精力増強魔術を使った結果収まりがつきそうにない。
 エレナを呼び出せない時のこと、そして緊急時などの事情もあることだし、というわけだ。
 昔の自分だったら、このような願いは口にすることもできなかったが、二度目の人生でまで我慢や遠慮をする必要性を感じない。
「というわけで、どっか娼館なりなんなりの選択肢を知っておきたくてな」
「そういうことか。いいだろう」
 それに、ライオットからすれば、雅貴に是非とも貸しを作りたいところだ。
 あまり要望を言ってこない雅貴だからこそ、その要望を聞くのは、ライオットにとっては実は最優先事項だったりする。
 ライオットはソファから机に移動して、立ったまま手早く羊皮紙に何かを書き記し、それを雅貴に手渡した。
「これを騎士に渡せ。娼館に案内させるよう書いてある。他国の重鎮も使う娼館だから問題はないぞ」
「それは役得だな。……つまらないことで手間をかけさせて悪いな」
「この程度手間ではない。が……そうだな、お前が気にするというなら貸しにしておこう」
「そうしておいてくれ」
 そこまでやりとりして、両者同時に、にやりと笑った。
 飼われるつもりの雅貴は、是非いい餌をくれ、と。
 飼いたいライオットは、餌ならやるから飼われろよ、と。
 両者の思惑と利害は一致しているのだ。
 話が早く、願う通りに操られてくれる雅貴は、ライオットにとっては実に好印象だ。
 雅貴としても、みなまで言わずとも正確に察してくれて茶化すことのないライオットは実にやりやすい。
「じゃあ、せっかくもらったことだし、行ってくるとするよ」
「せいぜいいい夜を過ごしてこい」
「そうさせてもらうよ」
 雅貴はライオットの私室を辞すると、それを待っていた護衛の若い女騎士に手渡した。
 彼女は、羊皮紙を恭しく受け取る。
 ライオットの私室から出てきた時点で、その羊皮紙が誰の手によって書かれたものなのかは考えるまでもなかったからだ。
 それに目を通した女騎士は、場所を理解したのか頷いた。
「畏まりました。案内いたします、賢者様」
「ああ、頼むよ」
 歩き出した彼女を追っていくと、適当なところで侍従を捕まえて何かを告げた。
 侍従は女騎士に敬意を払いながら急ぎ足で去っていった。
 城内は走るところではない。侍従に対して雅貴を先導する女騎士の歩みは比較的ゆっくりである。
 その理由は、裏口に用意された馬車で判明した。
(なるほど、俺たちがゆっくり歩いてる間に、あの侍従が馬車の用意をどこかに知らせたわけか)
 誰に知らせて、誰が馬車を用意したのか。そのことに雅貴は興味はなかった。
 雅貴と女騎士を乗せた馬車は夜の街を走り出し、やがて歓楽街へと入った。
 住宅街や商店街などはどこも静まっていたが、ここは今が稼ぎ時とばかりに煌々と明かりが灯され、そこかしこにいる娼婦が男を誘っていた。
 馬車は一軒の娼館の前で止まる。
 そこは歓楽街の中にあって、雑多な空気が一切ない場所だった。
 一言で言うなら、格式が高い、というところか。
「それでは、私はここでお待ちしております」
 女騎士は毅然とした声で雅貴を送り出した。
 さすが、ライオットが用意した護衛の騎士。
 近衛騎士だけあって実力も国内有数だそうだが、それ以上にこういう場面で自身の感情を一切表に出したりはしない。
 さすがエリート、超がつくほど優秀である。
 それはともかく。
 雅貴はそのまま娼館に向かっていくと、入り口の両側にたたずんでいる体格のいいボディガードが雅貴を恭しく中に案内した。
 一見さんお断りなのだが雅貴が王宮の重鎮が乗る馬車から降りてきたからこそ、彼らは何も言わずに通したのだ。
「ようこそいらっしゃいました、賢者様」
 支配人だという美しい老女に出迎えられた。十年も若ければ雅貴の食指も動いただろうと思わせるくらいには上品である。
 どうやら、先ぶれが出ていたようだと、雅貴は予想した。
 一瞬大げさだろうとも思った雅貴だが、すぐに当然だと思い直した。ライオット紹介の客が訪れるのだから。
 この辺のスピード感や応対の質からして有象無象の娼館とは一味も二味も違う。雅貴は知る由もないが。
「本娼館のナンバーワンをご用意しております。こちらへ……」
 前置きもそこそこに、支配人は雅貴を先導して歩き出す。
 この話の早さは分かっている者の所作だ。
 雅貴がそう感じた通り、この支配人は相手に合わせて長く会話をしたり、すぐに娼婦のところに案内したり切り替える。
 王家からの紹介が来るほどの娼館ゆえに、あまたの貴人や要人と接して培った人を見る目だった。
 その洞察力で雅貴のことも判断したわけだ。
 連れられた先は、豪華な部屋だ。
 さすがに王族の客間ほどではないが、それに近いものはあるだろう。
「こちらでお待ちください。ほどなくして嬢が参りますので。では、よき一夜の夢を……」
 そう言ってさっと身を引く支配人。
 ひとまず部屋の中を一周し、非常にいい部屋だと確認した雅貴は、そのまま部屋の中央にあるテーブルに腰かけて水差しからコップに水を注いで一口。
「うまいな」
 どうやら魔道具のようだ。常温の部屋にそのまま置かれていた水差しだが、ほどよい酸味と甘みの果実水はよく冷えている。
 元の世界の調整された清涼飲料水には及ばないものの、こちらの世界でのこれは天然ものだ。そう考えると圧倒的に身体にいいのはこちらだ。
 それでこの味と考えれば充分すぎた。
 一杯目を勢いのまま飲み干し、二杯目はゆっくりと飲んでそろそろコップが空になろうという頃。
 扉がノックされた。
「どうぞ」
 かちゃりと扉が開き、入室してきたのは。
「猫獣人……」
 雅貴は思わずそうつぶやいた。
 そう、猫の獣人だったのだ。
 この世界の知識を教えてもらった時にそういう種族がいることは知っていたが、城では見なかった。
 実際には城内で獣人やエルフも働いているが、雅貴の行動範囲にはいなかっただけだ。
「ボクはメイサといいます。今宵はボクがあなたに一夜の夢をお見せします」
 青髪の猫獣人はそう言って恭しく頭を下げた。所作も貴族令嬢に遜色ない美麗さだ。
 ティーンと成人の境目あたりの彼女だが、感じる妖艶さは尋常ではない。
 透けていて肌色が見えるドレスの下は下着も来ておらず、一人称のボク、スレンダーなスタイル。
 メイサは楚々と雅貴に近寄ると、そっと手を取る。
 その動きに合わせて立ち上がると、メイサはにこりと笑った。
 そう、すでに硬く屹立している下半身が彼女の目に入ったのだ。
 間違いなく営業スマイルなのだが、そうとは感じられない自然な笑み。
 さすがナンバーワンの娼婦。きっとあまたの強敵を相手に場数を踏んできたからなのだろう。
「ふふ、すぐに」
 強引でもなく、かといってよどみもなく、スムーズな誘導。
 実に手慣れている。
 メイサはその横に座ると、すぐにズボンに手を伸ばし、雅貴の一物を取り出した。まったく慣れていないエレナとは手際がまるで違う。
 ジーパンやスラックスのように、異世界のズボンにも社会の窓が存在するのだ。
「あら、ご立派ですね」
 取り出された一物をそう言って褒めると、メイサはためらいなく口に含んだ。
 一晩でエレナに続きメイサという極上の美女にしゃぶられる。
 これは雅貴の漢としての自尊心を大いに満たした。
「おっほ……」
 その快楽は、一気に下半身から脳髄まで貫いた。
 エレナのそれとは桁が違う。
 雅貴の反応を見て、弱い場所を一瞬で見抜かれた。
 かと思えばそこをずっと責めてくるわけではなく、全体を丁寧にねぶられる。
「おお、お、お」
 快楽を高める責め。
 この時点でイキそうだったが、まだ始まったばかりのフェラチオでイくのは、ちっぽけな男のプライドが許さなかった。
 必死になって耐える。
「おああ……」
 雅貴の変化など手に取るように分かるのだろう。
 メイサの責めが竿から搾り取るように変わった。
 いったいどれだけの男たちから、どれだけの精液を搾り取ってきたと思っているのか――
 それを訴えるかのような舌技。
 耐えるのは不可能だった。
 雅貴は暴発させられた。
 肉棒の律動に合わせて、吸い出される。
 勢いを増して尿道を駆け上がる精液の快楽に酔いしれた。
 にゅるん、とメイサが雅貴から離れ、口の中の大量の白濁をごくりと飲み込む。
「んっ……絡みますね」
 すべて搾り取られたかのような快楽だった。
 雅貴は後ろに手をついて肩で息をしているものの、しかし雅貴の分身はまだまだ元気なままだった。
 メイサも自身の手練手管をもってたっぷりと吐き出させたのだが、それでも元気なことに素直に驚いた。
 彼女のこれまでの経験からすれば、たとえ性豪と言われる男であっても、射精直後はここまで元気ではない。
 雅貴は多少体力が減っているが、それでも性欲はまったく衰えていない。
 これは精力増強魔法の効果だ。
「とても元気ですね。では、どうぞ」
 ベッドに四つん這いになり、尻を雅貴に向けるメイサ。
 雰囲気を重要視し、前戯で気分を高めていくことも大切だ。
 しかしメイサは、雅貴がより求めていることを察した。
 要は男と女か、雄と雌かだ。
 どちらがいい悪いという話ではなく、それが相手によることを、メイサはよく理解していた。
 雅貴に向けた尻はしとどに濡れそぼっており、男を受け入れる準備は万端だった。
 数えきれないほど男の一物を見てきたメイサから見ても、雅貴のものは有数の立派さであり、相手の雄が強ければ濡らすのはたやすいものだ。
 そのくらいできなければナンバーワンとは呼ばれない。
(これはチャンスか)
 ちらりと肩越しに雅貴を流し見るメイサ。
 左側からなので、右手は見えていないだろう。
 雅貴は手早く夜の三点セットの魔術を、一部を入れ替えて行使した。
 一度使ってしまえば、同じ魔術の再現は簡単である。
 それを、メイサに向けて行使した。
 使用したのは性病防止魔術とインスタント催淫魔術、そして精力増強魔術の代わりに避妊魔術を使用した。
 精力増強魔術が強力すぎたから娼館に来たのに、重ね掛けなどしたらどうなってしまうのか分かったものではない。
 この魔術が具体的にどれだけ雅貴を高ぶらせるのか、それを把握する必要もあったのだ。
 改めてメイサを見ると、先ほどよりもよく濡れている。
 どうやらインスタント催淫魔術が効き始めたようだ。
 さすがにインスタントの名に恥じない効果だ。
 雅貴が割れ目に怒張をあてがったのを感じ取ったメイサ。
 彼を根元まで迎え入れるべく下半身を巧みに操った。
 途端に、怒張はするりするりと呑み込まれて、雅貴の腰がメイサの尻に密着した。
「ん……はぁっ!」
 娼婦として、身体は快楽に慣れているし、演技がくさくならないようにコントロールしながら実際に感じるようにもなっている。
 そんなメイサだが、奥まで届いた熱い肉棒の感触に、思わず声が漏れてしまった。
(……これ……)
 ぞわぞわと背中に走る快楽は、メイサが制御したものではない。
 雅貴がメイサの腰をみ、後ろから腰を突き出し始めた。
 ナカをゴリゴリと引っかきながら、ずんずんと奥まで突き込まれる。
「はあ、あっ、ああ……あんっ」
 動きは激しいものではない。
 結合直後の助走のようなものだ。
 なかには最初からスパートをかける男もいるが、たいていはこのくらいのスタートになることが多い。
 ただし、メイサが感じる快楽によって漏れる声は、演技でもなんでもなかった。
「おお……」
 一方の雅貴は、エレナの処女とは違う、無数の男から精液を搾り取ってきた熟練のおま×こに酔いしれる。
 エレナのようにぎゅうぎゅうとした締めつけはないが、優しくやわらかく包み込むような感触は、別ベクトルの気持ちよさだ。
 それに、締めつけがエレナに及ばないからといって、ゆるゆるというわけではない。
 雅貴が腰を動かすたびに、きゅ、きゅ、とリズミカルに締めつけ、ムスコを刺激し続ける。
 それはメイサにとっては呼吸と同じこと。
 娼婦になって五年弱。数えきれないほどの男と寝てきた中で磨かれた、身体に染みついている男をイカせるための基礎技術だった。
「んっ、んっ、んっ、んっ……」
 雅貴の動きが速くなってきた。
 硬くなる肉棒を膣肉で感じ取ったメイサは、彼が絶頂目前であることを正確に読み取った。
 そこで、より強く締めつけてしまうのはメイサの娼婦としての性だ。
 そうすることで自身の快楽がより強くなってしまうのが分かっていても。
 特に今は、ここ最近ではもっとも高まっている。プレイの一環で幾度となく媚薬を盛られてきたメイサをもってして、それらの薬で感じた快楽をも上回るほどに。
 やがて限界を迎えた雅貴がメイサの両手首を握って背中を反らせると、自身の腰を強く打ちつけ始める。
 ゴリゴリと雅貴の肉棒がメイサの中を容赦なく突き上げた。
「~~~~~――――っ!!」
 立派である、と言ったのは社交辞令でもなんでもなく、純然たる事実だった。
 一番奥を力強く抉られたことで、そのことを強く実感することになった。
 それらのすべても、頭が真っ白になってしまったことで霞に溶けて消える。
 メイサの感覚と意識はすべてが胎内に集中しており、どくどくと律動を始めたペニスの感触をはっきりと感じ取っていた。
 同時に、どろりとした熱い粘液がびゅく、びゅくと放たれていることも。
 子宮口にぴったりと密着した男根が、女を身ごもらせるための子種を注ぎ込んでいる。
 メイサのみならず、娼婦にとって、自身を買った男が避妊をしないのは当たり前のことだ。現に、メイサを買う男のフィニッシュは大体が中出しだ。
 身体や顔にかけるのが性癖な男は、中出しに比べれば比率は少ない。
(子ども……できちゃう……)
 この執拗な種付けに、メイサはふとそんなことを思った。
 今日も今日とて、避妊対策は万全に行っているにもかかわらず、だ。
 百戦錬磨のメイサをもってして、それほどに鮮烈な感覚だったということだ。
 もちろん雅貴の魔術によって避妊されているので、万が一にも妊娠してしまうことはない。
 既存の避妊対策よりもより確実なのだが、そんなことはメイサは知る由もないのだから無理もないことだ。
 もっとも、それは雅貴にとってはいくら中に出してもまったく気にする必要がない、ということでもあるのだが。
「ふう……」
 ぐいぐいと腰を押し込み続けていた雅貴が、最奥にかけていた強い圧迫感をようやく弱めた。
 射精が終わったのだ。
 ぽす、とメイサは身体をベッドに沈めた。やわらかい最高級のベッドが、メイサの身体を優しく受け止める。
 だが。
(……はれ? やわらかく、なって、ない?)
 いまだつながったままの怒張は屹立したまま。
 短い時間だったが激しいセックスだった。
 間違いなく、先ほど口で搾った時よりも多い量の射精だった。
 いくらなんでも、短い間に二度も出して。
 それでなお、これだけ硬度を保っている男などこれまでいなかった。
「あー、めっちゃよかった……。さて、二回戦行くか。いや、さっきのフェラがあるから三回戦か?」
 信じられない言葉が、ぼんやりとしたメイサの耳に届いた。
 雅貴はメイサから一物を引き抜くと、今度はあおむけにひっくり返した。
 そして、先ほどまで激しく肉棒をしごいてもらっていた秘裂に、再びあてがう。
 ぬるり、と再び男根がメイサを貫いた。
 激しく擦られたことでこれまでにないほどに濡れている上、中に出された精液によって、スムーズさは格段に上がっていた。そして、感度も。
「あっ! にゃあっ!?」
 もはや演技ではない。
 高められた快楽と興奮は、メイサの口から意図しない本気の嬌声を漏らさせた。
 思わず猫なで声が出てしまったほどだ。
 これでも手練れの娼婦としての余裕や矜持を持っていたメイサだったが、たった一度抱かれただけですべて吹き飛ばされてしまった。
 メイサの声にますます気分が高まった雅貴は、腰の動きをさらに速くする。巨乳ではないものの形のいい乳房をわしづかみにされた。
 それから数時間にわたって、メイサの若くみずみずしい身体は、雅貴によって好き放題むさぼられるのだった。

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