【2013年2月20日】

英雄英雄ハーレム出だし

英雄英雄ハーレムのプロローグの一部です。

立ち読みページをもっと作れたら、と思いまして。

明日には全国配本されますので、よろしくお願いいたします。

プロローグ
「裕介様、急いでください」
「わ、わかったって……」
 馬波裕介は苦労して木の股にまたがる。一息つく間もなく、一足早く上っていた少女、ナスカからターゲットを教えられる。
 双眼鏡を取り出し、指さす方を見た。ぐるりと敷地を囲んだ塀の内側には瓦葺きの母屋と平屋の建物があり、二つは渡り廊下で繋がっている。
 平屋の出入り口部分には達筆な筆遣いで『吉法師流剣術道場』と書かれたが札が下がる。ちょうど、そこに女性がいた。
 女性にしては立っ端がある。もしかしたら百七十くらいはあるか。裕介が通う学園の男子制服のジャケットをタンクトップに羽織り、スカートは裾が足首を隠すほどに長い。一昔前の不良という出で立ち。
 黒髪を高く結い上げたポニーテールの女性の目鼻はは客観的に見て整ってはいるものの、その切れ上がった双眸はよく研がれた刃物のようで背筋が寒くなる。
「あれが、吉法師信美様ですね。……そして左肩にいるんですが、見えますか」
 裕介は息を呑んだ。信美の肩にしがみついている黒い影。形状はサルボボに近いかもしれない。しかしその愛嬌のある二頭身ぶりとは裏腹に口ひげを蓄え、猛禽類を思わせる眼光は迫力があった。
 悪態をついた信美は振り返り、道場から転げるように出てくる胴着姿の男たちを見る。彼らは見るからに満身創痍。
「男が揃いも揃って情けない! さあ、立てっ!」
 男たちは「もう勘弁してください」と涙声で土下座する。
「ったく、つまんねえ……なっ!」
 鋭い風の流れが裕介の前髪をそよがせた次の瞬間、身を寄せていた木の幹に木刀が突き刺さっていた。
「気づかれました。逃げましょうっ!」
 呆然として動けない裕介の手を引いたナスカはその細身からは考えられない膂力を発揮して裕介を軽々とお姫様だっこすると樹上より飛び降りた。
「大丈夫ですか」
「た、助かった。……とりあえず、下ろしてくれ」
「気配を消したつもりではいましたが……。なかなか手強そうですね」
 裕介は難しい顔をしているナスカの横顔を盗み見る。
 曇りのない銀食器を思わせる髪をロップイヤーのようなツインテールに結っている彼女の顔はすごく小さい。肌は血管が透けそうなほど白い。鳶色の瞳は二重の円らなアーモンド型。くりくりした形とあいまって、リスのような小動物を思わせる。
 そこまでみると街中ですれ違えば振り返らずにはいられない美少女だ。しかし出で立ちが彼女を周囲の風景から浮かしている。彼女は鎧姿なのだ。それもお腹や太ももを無防備に曝して、ビキニ水着を思わせるデザイン。アニメキャラのコスプレにしか見えなかった。
「ナスカ。あの肩に乗っかってたのが、お前の言ってたヤツか」
「はい」真剣な顔でナスカはうなずいた。
「あれが、織田信長……ほ、本当だったんだ」
「まだ信じてくれてなかったなんですか!」
「え、あ、まあ……あはは」
「ひどいです!」
「けど、もう大丈夫。信じたから」
 子どもっぽく頬を膨らませるナスカに睨まれ、裕介は苦笑する。
「次行きますよっ」
 一人ずんずんと歩き出すナスカのあとを、裕介は追いかけた。

最新記事

月別アーカイブ

  • 2019年11月 (3)
  • 2019年10月 (1)
  • 2019年9月 (1)
  • 2019年8月 (1)
  • 2019年7月 (1)
  • 2019年6月 (1)
  • 2019年5月 (1)
  • 2019年4月 (1)
  • 2019年3月 (6)
  • 2019年2月 (4)
  • 2019年1月 (1)
  • 2018年12月 (2)
  • 2018年11月 (4)
  • 2018年10月 (4)
  • 2018年9月 (3)
  • 2018年8月 (3)
  • 2018年7月 (4)
  • 2018年6月 (6)
  • 2018年5月 (4)
  • 2018年4月 (3)
  • 2018年3月 (3)
  • 2018年2月 (3)
  • 2018年1月 (2)
  • 2017年11月 (1)
  • 2017年9月 (1)
  • 2017年8月 (1)
  • 2017年7月 (1)
  • 2017年6月 (2)
  • 2017年5月 (2)
  • 2017年4月 (2)
  • 2017年3月 (1)
  • 2017年2月 (1)
  • 2017年1月 (1)
  • 2016年12月 (3)
  • 2016年11月 (3)
  • 2016年10月 (2)
  • 2016年9月 (2)
  • 2016年8月 (6)
  • 2016年7月 (1)
  • 2016年6月 (1)
  • 2016年5月 (2)
  • 2016年4月 (1)
  • 2016年3月 (2)
  • 2016年1月 (1)
  • 2015年12月 (4)
  • 2015年11月 (2)
  • 2015年10月 (3)
  • 2015年9月 (2)
  • 2015年8月 (2)
  • 2015年7月 (1)
  • 2015年6月 (2)
  • 2015年5月 (2)
  • 2015年4月 (1)
  • 2015年3月 (2)
  • 2015年2月 (1)
  • 2015年1月 (1)
  • 2014年12月 (3)
  • 2014年11月 (1)
  • 2014年10月 (1)
  • 2014年9月 (3)
  • 2014年8月 (4)
  • 2014年7月 (1)
  • 2014年6月 (2)
  • 2014年5月 (4)
  • 2014年4月 (3)
  • 2014年3月 (3)
  • 2014年2月 (2)
  • 2014年1月 (2)
  • 2013年12月 (3)
  • 2013年11月 (4)
  • 2013年10月 (3)
  • 2013年9月 (1)
  • 2013年8月 (4)
  • 2013年7月 (2)
  • 2013年6月 (4)
  • 2013年5月 (6)
  • 2013年4月 (15)
  • 2013年3月 (21)
  • 2013年2月 (16)
  • 2013年1月 (16)
  • 2012年12月 (18)
  • 2012年11月 (24)
  • 2012年10月 (15)
  • 2012年9月 (16)
  • 2012年8月 (13)
  • 2012年7月 (17)
  • 2012年6月 (20)
  • 2012年5月 (20)
  • 2012年4月 (21)
  • 2012年3月 (34)
  • 2012年2月 (34)
  • 2012年1月 (30)
  • 2011年12月 (25)
  • 2011年11月 (19)
  • 2011年10月 (20)
  • 2011年9月 (15)
  • 2011年8月 (19)
  • 2011年7月 (19)
  • 2011年6月 (35)
  • 2011年5月 (29)
  • 2011年4月 (39)
  • 2011年3月 (21)
  • 2011年2月 (26)
  • 2011年1月 (22)
  • 2010年12月 (28)
  • 2010年11月 (21)
  • 2010年10月 (25)
  • 2010年9月 (19)
  • 2010年8月 (17)
  • 2010年7月 (28)
  • 2010年6月 (22)
  • 2010年5月 (26)
  • 2010年4月 (29)
  • 2010年3月 (31)
  • 2010年2月 (20)
  • 2010年1月 (11)
  • 2009年12月 (18)
  • 2009年11月 (20)
  • 2009年10月 (19)
  • 2009年9月 (28)
  • 2009年8月 (17)
  • 2009年7月 (19)
  • 2009年6月 (19)
  • 2009年5月 (13)
  • 2009年4月 (8)
  • 2009年3月 (10)
  • 2009年2月 (9)
  • 2009年1月 (10)
  • 2008年12月 (17)
  • 2008年11月 (11)
  • 2008年10月 (9)
  • 2008年9月 (13)
  • 2008年8月 (13)
  • 2008年7月 (13)
  • 2008年6月 (11)
  • 2008年5月 (12)
  • 2008年4月 (14)
  • 2008年3月 (13)
  • 2008年2月 (19)
  • 2008年1月 (14)
  • 2007年12月 (18)
  • 2007年11月 (22)
  • 2007年10月 (24)
  • 2007年9月 (17)
  • 2007年8月 (26)
  • 検索